1984年に米国で誕生した「テバ(TEVA)」は、スポーツサンダルの元祖と言われている。同社のサンダルは、約40年前のグランドキャニオンの岸辺で誕生した。ビーチサンダルが水辺でも脱げないようにとストラップを付けたことでスポーツサンダルとなり、現在はアウトドアから日常生活、音楽フェスまで幅広いシーンで着用されている。コロナで一時は売り上げが低迷したものの、アウトドアの価値が世界中で見直されたことで復調し、2023年3月期の売上高は前期比12.5%増の1億8310万ドルだった。アウトドアブランドが数多くある中、支持される理由は何か。親会社デッカーズブランズのアンダース・バーグストローム(Anders Bergstrom)=バイスプレジデント兼グローバルゼネラルマネージャーに聞く。
WWD:好調なマーケットは?
アンダース・バーグストローム=デッカーズブランズ バイスプレジデント兼グローバルゼネラルマネージャー(以下、バーグストロム):拠点である北米、アジアパシフィック、ヨーロッパ、中東、アフリカと全地域で伸びている。
WWD:好調なチャネルは?
バーグストロム:ホールセールのニーズが高い。「テバ」は“モダンアウトドア”という独自のポジションを確立しており、アウトドアショップからファッション、ライフスタイルまで幅広いリテーラーと関係性を強めている。
WWD:“モダンアウトドア”の定義とは?
バーグストローム:まずは機能性だ。アウトドアフィールドで確かなパフォーマンスを発揮するために、履き心地や防滑性、通気性といった機能を担保しなくてはならない。加えて、日常に取り入れやすいデザインを組み込むこと。日本は同じポジションに「スノーピーク(SNOW PEAK)」や「ナンガ(NANGA)」がある。両ブランド共にファッション性が高く、顧客の感度も高い。過去にコラボも行っており、われわれも大いに刺激を受けている。
バーグストローム:すごく活動的で、ファッションとアウトドアを高次元に融合したユーザーだ。晴れていても、雨が降っていても、外に出てさまざまなアクティビティーを楽しむ。日本では当たり前かもしれないが、海外では悪天候だと家にこもりっきりなことも少なくない。環境変化が激しい国だからこそ、常に活動を楽しむマインドが根付いているのだと思う。そもそも“モダンアウトドア”というコンセプトも、アウトドアを日常の延長に据える、日本ユーザーのライフスタイルに大きなインスピレーションを受けている。だからこそ、日本で支持されることは、他のマーケットにはない価値がある。
WWD:若い世代の取り込みにも成功している印象だ。
バーグストローム:若年層の獲得はグローバルのミッションであり、日本は特に成果が出ている。ハイキングやラフティングといった特定のアウトドアシーンではなく、ショッピング、キャンプ、音楽フェス、友人とのハングアウトまで、あらゆる屋外での活動で着用してもらっている。ホールセールではユーザーの年齢までは追えないものの、ウェブへのアクセスは若年層がかなり多い。
WWD:若年層獲得のために行っていることは?
バーグストローム:サステナビリティーの活動が追い風になっている。アウトドアユーザーは環境意識の高い人が多く、特に若者は関心がある。「テバ」は3年前に、ウェビングベルトに使う素材を100%再生ポリエステルに切り替えた。埋め立て予定のペットボトルを再利用し、サンダル1足あたり6本のペットボトルを使う。これまで7000万本を再利用してきた。環境負荷を軽減する施策が、結果として顧客ニーズにも応えてくれている。
WWD:その他に行っている、環境に配慮した取り組みは?
バーグストローム:“テバ フォーエバー”というリサイクルプログラムだ。お客さまが使ったサンダルを回収し、連携するリサイクル会社に提供して新しい製品に活用する。2年前にアメリカでスタートし、日本では昨年導入した。「テバ」のオープントゥのサンダルが対象で、関心の高いユーザーから好評だ。
バーグストローム:40年前にスポーツサンダルというプロダクトが誕生し、人々の生活を変化させた。そのオリジンを大事にしながら、冒険的な生活を刺激する施策を積極化させたい。コロナで低迷したからこそ、自然の価値が見直された。心をリフレッシュさせ、心身ともにヘルシーなコンディションを維持するためには、アウトドアが欠かせないことに気づいた。人間は、一度感じた価値をそう簡単には手放さない。アウトドアの楽しみをさらに広げるため、顧客を刺激し続けたい。