「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を運営するZOZOが、「プロジェクトセカイ」「チェンソーマン」「ホロライブ」などの超人気アニメコンテンツとのコラボレーションを加速している。ファッションECでは圧倒的な認知度とパワーを持つ「ゾゾタウン」だが、ピンポイントに人気のコンテンツを掘り当て、商品化する手腕は高い。その裏側を、担当するイケメンZOZO社員、柴崎一樹さんに直撃した。
柴崎一樹/ZOZOブランド営業本部 生産企画部・企画営業
(しばざき・かずき)1996年生まれ。2019年にZOZOに中途入社。好きなブランドは「フラグメント」「ステューシー」「グッチ」、デザイナーだとアケクサンドロ・ミケーレなど。服を買いすぎて貯金ができないのが悩み。年100万円以上は「ゾゾタウン」に使い込んでいる PHOTO:ZOZO
「チェンソーマン」「ホロライブ」「プロジェクトセカイ」、超人気IPとコラボ連発
WWD:なぜアニメコラボを?
柴崎一樹ZOZOブランド営業本部 生産企画部・企画営業(以下、柴崎):もともとアニメやマンガが好きで、ZOZOでなにかできないかと思っていて、数年前にコラボ企画を立ち上げました。ZOZOがコラボする企画の大半に関わっています。今は複数のIP(=知的財産、キャラクター)に強い広告代理店の担当者と、定期的にミーティングで情報交換や新しいキャラクターの情報を仕入れたり、企画を練っていて、水面下では常に複数の企画が動いているような状態です。
WWD:「プロジェクトセカイ」「ホロライブ」「チェンソーマン」など超人気アニメやマンガの版権元はどうやって口説き落としている?
柴崎:先ほども言ったように、常に複数の代理店と情報交換を行っており、これぞというものはIPホルダーにコンタクトします。返事をいただければ、それが一番ですが、当然返事がないことの方が多い。こういったときにはあらゆる伝手を辿って、担当者に連絡を取り続けます。
WWD:あまりしつこいと逆に怒られたりしませんか?
柴崎:自分で言うのもなんですが、私はかなりしつこいんですよ。粘り強いとも言えますが(笑)。ただ、これまでの経験上、返事がないときは先方の担当者が忙しすぎて返事ができなかったり、メールを見落としていた、みたいなことが大半です。「関心はあるけど、メールだと細かいニュアンスが伝わらず、なんて返事をすればいいのか」みたいなことが多いんですよ。なので電話がつながると、意外に「じゃあ検討しますね」、みたいな感じで次のステップに進めることが多いですね。
ただ、重要なポイントは次のステップです。フェイス・トゥー・フェイスを、かなり意識しています。お互いの顔が見えた瞬間に、企画がワンステップ上がるのを感じます。先方の温度感もそうですし、こちらの熱意もしっかりと伝えられる。なので、企画書を送った後は、できるだけ会って話すよう、ひたすら連絡を取り続けます。
ヒットの理由は「綿密な設計&仕掛け」にあり
WWD:うまくハマると、「ゾゾタウン」の売れ筋ランキングを独占するほどの大ヒットも。ヒットのコツは?
柴崎:これまでいろいろなコラボ企画を行ってきましたが、大ヒットになる場合は仕込みがハマったときです。コラボ企画をスタートしたばかりのころは、どちらかと言うと自分の熱意や気持ちで突っ走ってきたところもありますし、幸い有力なキャラクターとのコラボも多く、よく売れました。ただ、キャラが有名だから、それだけで売れるってことはほとんどないですし、逆に超有名じゃなくても、熱狂的なファンが多くて、仕掛けがハマればそれこそ過去最大の大ヒットになることも。要は仕掛けが大事ということです。
柴崎:だから仕込みの時間は、どんどん長くなっています。それだけ商品設計、販売設計の重要度が高くなっているからです。どのキャラクターを、どういった商品に落とし込み、どのタイミングでSNSで告知し、そして販売するか。この数年に限っても、商品のサイクルがどんどん短くなっているのも実感しています。話題があるから、人気があるから、というだけの表層的なコラボは本当に難しいですね。
WWD:有名キャラクターのコラボは、ラフォーレ原宿やパルコといったファッションビルもフェアやキャンペーンの一環として仕掛けることも多いが、それは基本的にはテナントも巻き込んだもの。つまり集客イベントであると同時に、テナント支援のための販促キャンペーンでもある。「ゾゾタウン」の場合は、テナントを絡めない単独型も多く、最悪売れたとしても、テナントであるブランドと競合することも。ブランドを絡めない理由は?
柴崎:それはとても耳が痛い話です。ただ、数は少ないですが、テナント様とのコラボも行っています。少ない理由は、単に私の力不足の部分が大きいです。先ほども話した通り、アニメコラボは事前の周到な準備が必要で、精度を高めるためにどんどん工数が増えています。そこにテナントの方々も巻き込んで多彩なアイテムを展開するとなると、難易度はさらに高くなる。キャラクターによって、売れるアイテムやブランドとの相性もあります。基本的にはどのプロジェクトでも出発点は、キャラクターの版権を所有するIPホルダー、テナントであるブランドの方々、そして消費者――この3者全員がウィン-ウィンになるべく、企画を考えているのですが、結果的にIP×当社という形になることも少なくないのはご指摘のとおりです。それは単に難易度が高く、そこまできちんとプロジェクトを落とし込めていないからなんです。
ただすでに60〜70ほどのコラボ企画を担当してきて、ノウハウを蓄積しつつあり、企画力や実行力は以前とは比べ物にならないくらいに上がっていますし、IPホルダーさんからの信頼も徐々に積み上げられている自負もあります。今後は僕らが仕掛けるアニメコラボ、異業種コラボも、「ゾゾタウン」のテナントさんとタッグを組んで展開することも増やしていける思っています。