リュウ・イカ/写真家 プロフィール
1993年、中国内モンゴル生まれ。中国の大学でグラフィックデザインを学ぶも、1年で中退。日本のテレビ番組に携わることを夢見て20歳で日本に渡り、2016年に武蔵野美術大学映像学科に入学。在学中に写真に出合い、国内外で撮影を始める。19年に「1_wall」グランプリを受賞。翌年大学を卒業し、初の個展「The Second Seeing」を開催。同年、同名の写真集を赤赤舎から出版。22年、「ロエベ」が「グレイト」と協業した2022年秋冬シーズンのキャンペーンビジュアルの撮影を担当
2022年に話題を集めたビジュアルの一つといえば、「ロエベ(LOEWE)」が「グレイト(GR8)」をパートナーに迎えて制作した秋冬コレクションのキャンペーンだろう。北野武や柄本時生、村上虹郎を起用し、フラッシュで彼らの個性に肉薄したような写真は、強烈なインパクトだった。撮影したのは1993年生まれの写真家リュウ・イカだ。(この記事は「WWDJAPAN」2023年7月17日号からの抜粋です)
日本のテレビに憧れて渡日
孤独を救った写真との出会い
リュウは中国内モンゴル自治区に生まれた。日本に興味を持ったきっかけはテレビ番組で、「新堂本兄弟」「うたばん」「ロンドンハーツ」が好きだった。「日本には面白い人がたくさんいる。自分も大好きなテレビ番組の制作に携わりたい」。テレビに携わる方法をネットで調べ、「美大の映像学科に入るのが近道」だと知り、2016年に留学生枠で武蔵野美術大学映像学科に入った。
憧れの日本に来たリュウは、がくぜんとした。授業中の発言は少なく、空気を読む生徒が目立った。満員電車に乗れば、会話する人はおろか、ファッションさえも画一的だった。「モニター越しに見た、面白い日本人はいない」。「ムサビ 退学 ビザ どうなる?」―検索履歴にはネガティブな言葉ばかり残った。
契機はふいに訪れた。入学から1年ほどがたち、写真を専門とする暗室の授業が始まった。それまでは人との共作がメインで、1人で制作に打ち込む授業は初めて。「暗室なら何をしてもよかった」。教授からもらった森山大道、内藤正敏、志賀理江子の写真集にはテキストがほとんどなかったものの、色と形だけで雄弁に物語っていた。「これだ。これがコミュニケーションだ」。
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