自然をテーマに
宝石で描くポエトリー
自然がハイジュエリーのテーマになることは多いが、今年は、花々や植物といったボタニカルなモチーフを筆頭に、海や山などの風景の美しさを捉えた作品が豊富に出そろった。卓越したクラフツマンシップを駆使して花や植物の繊細な表情を描いたり、さまざまな宝石の輝きや色のグラデーションを通して自然の現象を映し出したり、その表現方法もさまざま。豊富な宝石のバリエーションと緻密な職人技の融合で生み出された見事な作品ばかりだ。(この記事は「WWDJAPAN」2023年7月24日号からの抜粋です)
「カルティエ(CARTIER)」
紅に染まる夕焼けを叙情的に表現
“ル ヴォヤージュ ルコマンセ”コレクションの、イタリア語で夕焼けを意味する“ヴェスプロ”という名前のネックレスでは、紅に染まる空の色をルビーやガーネット、スピネルのグラデーションで表現。ぎっしりと敷き詰め幾何学状に配した宝石がリズミカルな動きを描き、所々に添えたブルーのターコイズが色調にアクセントを加えている。
「ハリー・ウィンストン(HARRY WINSTON)」
ニューヨークの壮大な情景へのオマージュ
“マンハッタンヘンジ”とは、朝日や夕日の動きが米ニューヨーク・マンハッタンの東西方向の通りに重なり空全体がオレンジ色に輝く天文現象のことだ。1年に2度しか見ることのできない特別な瞬間にオマージュをささげた。スペサタイトでオレンジの色合いを、ダイヤモンドでまばゆい光を華麗に表現している。
「ショーメ(CHAUMET)」
さまざまな角度から観察し描写する植物の美
庭園がテーマの“ル ダルジャン ドゥ ショーメ”。森と下草から畑、庭園、花束へと続く4つの章を通して、植物の高貴な姿をハイジュエリーに昇華した。そのモチーフは樹皮や麦といった素朴なものから、アイリスやパンジーなどの花々までさまざま。生き生きとした植物の姿をあらゆる角度から観察し、繊細かつポエティックに描いている。
「グッチ(GUCCI)」
四季折々の風景をイメージさせる色石が主役
新作ハイジュエリー“グッチ アレゴリア”では、季節ごとに自然が見せる変化や美しさを表現している。春夏秋冬の自然の風景を想起させるような色石を主役にした大胆なデザインが特徴。庭園への門扉をイメージさせるブレスレットは“フローラ”プリントのようにカラフルな色合いの宝石を用い、春の軽やかな雰囲気を描き出した。
「ディオール ファイン ジュエリー(DIOR HAUTE JOAILLERIE)」
色とりどりに彩られた花壇のようなジュエリー
クリスチャン・ディオールの絶え間ないインスピレーション源だったジャルダン(庭園)。それとメゾンのシンボルともいえるクチュールを融合したコレクションが“レ ジャルダン ドゥ ラ クチュール”だ。ピンクやオレンジといった色とりどりの花々を連ねたジュエリーは、まるできらめく花壇のよう。ターコイズやグリーンラッカーがかれんなアクセントに。
「タサキ アトリエ(TASAKI ATELIER)」
造形美で表現する熱帯雨林の蛇行する水流
“ネーチャースペクタクル”をテーマに水の滴が流れ落ちる様子を表現したのが“カスケード”ネックレス。立体的で流麗なラインにさまざまなカッティングを施したパライバトルマリンを施し熱帯雨林のオアシスを、グラデーション状に連ねたパールで蛇行する水流を描いた。爽やかなカラーと造形美が浮き彫りにする自然の美しさが印象的。
「ミキモト(MIKIMOTO)」
ブランドの原点である海への賛美
「ミキモト」は今年ブランド設立130周年を迎えた。それを記念し、ブランドの原点である真珠を育む海への賛美を新作で表現。大海原を回遊する魚の群れやサンゴなどの海洋生物から海の色やきらめきまで、繊細なデザインと確かなクラフツマンシップで表情豊かに描いている。テングガイのブローチは、ダイヤモンドとカラーストーンのコントラストがインパクトたっぷりだ。
「ティファニー(TIFFANY & CO.)」
シュランバージェが描いた海の世界を再解釈
“ブルー ブック 2023:アウト オブ ザ ブルー”は、伝説的なデザイナーであるジャン・シュランバージェに敬意を表し、彼が描いた海の生物を再解釈したコレクションだ。“シェル”や“コーラル”“スターフィッシュ”などのテーマで構成。“ジェリーフィッシュ”のブローチはクラゲをモチーフに幻想的なイメージで仕上げている。
「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」
色調の違うルベライトとコーラルで描く首飾り
テーマは18〜19世紀の貴族の若者の通過儀礼的な旅行である“グランドツアー”で、仏パリや伊フィレンツェなどの文化遺産を再解釈しきらびやかに表現。伊ヘルクラネウムにある遺跡のモザイク画に見られる花冠を描いたのが“ニンフェ”ネックレスだ。色調の違うルベライトを主役に、“エンジェルスキン”と呼ばれるレッドとピンクのコーラルの葉を施した華麗な作品。
「ピアジェ(PIAGET)」
ブルーのグラデーションで描く山河の急流
山河の急流をハイジュエリーへと昇華させたのが“ミネラリス”だ。大胆な曲線を描くイヤカフは、サファイアのグラデーションとダイヤモンドで水の流れを描いた作品。耳のカーブを山にある沢に見立てたようなデザインで、急流のダイナミックなしぶきを繊細に描き出した。水の冷たさまでも感じさせる涼やかな仕上がり。
建築やアートを
ジュエリーに昇華
ハイジュエリーは、ファッションにおけるオートクチュールのようなもの。クリエイションにおけるラボラトリーの役目を果たす。建築やアートなどのモダンなモチーフをジュエリーで表現する際に問われるのが、従来とは異なるアプローチだ。モチーフのデザインへの落とし込み、効果的にテーマを具現化する素材の選定、そして、クラフツマンシップの限界への挑戦。無機質になりがちなテーマを、どれだけ魅力的に表現できるかがジュエラーの腕の見せどころといえる。
「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」
クラフツマンシップが描きだす光の波
“ディープ タイム”は、地球の誕生から生命の登場という深遠な旅を表現したコレクションだ。地質や天空をイメージさせる有機的で精巧な作品をそろえた。“ミリアド”ネックレスは、ピアノの鍵盤のようなピンの先にダイヤモンドをセットし、らせん状に施すことで光の波を描いている。緻密な職人技が反映された超モダンな逸品だ。
「シャネル(CHANEL)」
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