シンガポール発ファッションブランド「チャールズ&キース(CHARLES & KEITH)」が、2017年の日本再上陸以来、順調に事業を拡大している。ECから再スタートし、翌年、名古屋・栄に1号店を開業したのを皮切りに、渋谷、新宿、原宿、心斎橋など都心に出店。直近では7月7日オープンの神戸店に続き、9日には京都に四条河原町店をオープンして国内17店舗となった。17年度に2億5000万円だった売上高は、23年度60億円になる見通しだ。
初上陸のときは、オンワードホールディングスとの合弁により、14年からの3年間で14店舗まで拡大。しかし黒字化のめどが立たず、合弁を解消して全店を閉めた。17年1月、新たにシンガポール本社100%子会社の日本法人を設立。直営展開に切り替えたうえで、同年4月、EC販売をスタートした。
「本来は都市型ブランドだが、以前は40歳前後のニューファミリーをターゲットとする郊外モールへの出店が多く、ブランドが強みとするターゲットとはズレていた」と、チャールズ&キース ジャパンの青木洋明ゼネラルマネージャーは話す。
再上陸にあたって戦略を見直し
再上陸にあたっては、ターゲットを明確にし、出店戦略から商品展開まで見直した。メインターゲットは、20代から30代前半の都市生活者に設定。シンガポールをはじめとする海外の店舗と同様に、日本国内でも主要都市の中心地に出店した。
MDも以前はベーシック中心に価格勝負の戦略をとっていたが、再上陸以降はトレンドデザインをブランドアイデンティティーとして打ち出している。同時に、ブランド価値を高めるために、商品のクオリティを徐々に上げていった。「例えば、靴のクッション性は5年前に比べてかなり良くなっている。また、日本で人気のあるデザインや改良してほしい点を随時本社に伝え、日本市場に合う商品を強化してきた」(同)。
ちなみに、アイテム別の売り上げ比率はシューズ45%、バッグ55%。価格帯は靴が8000~1万円台、バッグ1万円台。最近は、厚底シューズやきれいめのパンプスなどが売れている。厚底シューズは20代に人気で、すぐに品薄、サイズ切れになるほどという。
戦略を見直した結果、再上陸後は着実に日本市場に浸透した。コロナ禍でも同ブランドはECだけでなく、リアル店舗でも売り上げを伸ばした。20年度の売上高はリアル店舗とECを合わせて21億円、21年度は同37億円、22年度は同47億円と2ケタ増が続く。そのうちECの比率は約半数を占める。
「リテールがあってこそ、EC売り上げも伸びたといえる。コロナ禍はある意味、うちにとってはチャンスだった」と、青木氏は振り返る。
その理由は3つある。一つ目は好条件の出店地がリーズナブルに確保できたこと。二つ目は優秀な人材が確保でき離職率が低いこと。三つ目はSNSが広まり、ブランド認知が高まったことだという。もともと商品のデザインとクオリティーに加え、上質な店舗空間と価格訴求力を武器に幅広い年代から支持を得ていたが、コロナ禍を機に成長が加速した印象だ。
京都の四条河原町店はアジアの旗艦店
9日にオープンした京都の四条河原町店は四条通沿いにあり、売り場面積は2層で256㎡。同ブランドで売り上げ上位のルミネエスト新宿店(165㎡)や心斎橋筋店(130㎡)よりも広く、世界的な建築家デイビッド・チッパーフィールド アーキテクツが手がけたコンセプトストアの1号店となる。和を基調とした素材を使った店舗デザインが特徴だ。初年度売上高は、心斎橋筋店と同規模の約3億円をめざす。
商品は1階にバッグとアイウエア、アクセサリー、2階にカジュアルシューズからエレガントなハイヒールまでそろえる。売り場中央には大きなソファが置かれ、ゆったりした空間のなかでフィッティングできる。
チャールズ&キースは現在、アジア・太平洋地域を中心に北米、欧州など世界35カ国で553店舗を運営する。売上高は全世界で800億円を超える。中国が売上高の半分を占め、アジアでは韓国、香港、マカオ、台湾にも直営店を構える。その中で京都の四条河原町店はアジアの旗艦店の役割を担うという。
コロナ明けの京都では、中国を除くインバウンドが回復し、欧米人の観光客も多い。「アメリカ、ヨーロッパではECだけの展開でリアル店舗はまだない。欧米人が多く訪れる京都で認知度を高めることで、グローバルのブランディングに寄与していきたい」と青木氏は意欲を見せる。
今後の出店は10月~11月に原宿店を移転オープンするほか、渋谷店も今冬に移転を計画。3~5年後をめどに国内で22~25店舗まで増やし、EC化率50%を維持する予定だ。