東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出計画をめぐり、中国をはじめ近隣国が反発を強めている。日本政府は、科学的根拠に基づく安全性、高い透明性をもって「国内外に丁寧に説明・発信」していく方針を示しており、実際に国際原子力機関(IAEA)が、海洋放出は「国際的な安全基準に合致する」と報告書を公表。人や環境への放射線の影響は「無視できるほどごくわずか」と評価しているが、いまだ海外では懸念が広がっている。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の佐藤和佳子シニアアナリストによると、6月12日に海洋放出設備の試運転を始めたことから、中国のSNSでは日本の化粧品の安全性に懸念があると炎上したという。「類似の騒ぎは過去にもあり、当初は問題ないと私も見ていたが、その後中国政府が公式に指摘し問題が拡大している。中国の売り上げが大きい日本の化粧品企業は楽観できる状況ではないだろう」と指摘する。そこで化粧品国内大手の花王、資生堂、「SK-II」に中国への対応策を聞いた。
花王は、「中国において花王(中国)グループ傘下の各社が正規ルートで販売しているものは、全て中国の国家基準を満たしており、正式な通関検査に合格したものを皆さまへ届けている」という。日本では、各自治体で大気および上水中の放射線量を(福島第一原子力発電所)事故発生以降、定期的に測定を継続している。
花王グループの商品を製造している工場は日本各地に複数あるが、「全ての工場内の環境および生産する商品についての安全性に問題はない。また、越境ECを含む日本から正規ルートで輸出している花王グループの商品に関しても放射線量の検査を実施し、問題がないことを確認している」と、安全性を伝える。
資生堂は、中国の消費者に向けた声明を出さない予定ではあるが、「全世界のお客さまに安全で高品質な商品を提供するため、極めて厳格な法規や指針に従って商品を製造している。当社の商品は、販売する国の法律と規制を遵守しており、安心してご使用いただける」と説明する。
「SK-II」は、「安全で高品質な商品を届けること」がブランドとしての最優先事項であるという。「全ての商品、または原材料については、出荷前に高い品質基準に則り品質検査を行っている。『SK-II』を販売する国それぞれの法令に従い、各国の規制当局の定める商品の品質安全基準を遵守している」と述べる。
中国で販売する商品に関しても「中国政府の定める検査機関で、非常に高い中国の安全品質基準にのっとっているか検査を行った上で販売している」とコメント。「全ての商品がお客さまに安心して使用いただける安全な商品だ」と表明する。
これら安全性を伝えている「SK-II」だが、中国メディアでは事実と全く異なる報道がされた。「すでに誤った記事については、各メディアで削除されている。滋賀県に、放射能リスクがあるという事実はない。弊社の滋賀工場では、原材料や製造した商品について高い品質安全基準を設け、その基準を満たすもののみをお届けしている。安心していただきたい」と毅然とした態度を示す。