生身の人間ではないような血色のないメイクのモデルたち。バックステージでマークが、「パウダリーで、コスメティックな感じにしたかった」と話すように、ルックのカラーは、パウダリーでスモーキーなグレーやベージュ、ピンク、オフホワイトなどのカラーを使用し、それらのカラーをそれぞれのアイテムにミックスしたレイヤードスタイルを提案している。裾が広がったオフホワイトのパンツに、有機的な曲線を描いたマーブル模様のトップス、スモーキーカラーをミックスしたスニーカーを合わせるといった具合だ。グレイッシュなピンクからベージュへ移行するグラデーションのファーコートは、ため息の出るような美しさ。袖や身幅が大きく、全体的にコロコロとした丸いフォルムは、淡いトーンと相まって、より異次元のような雰囲気を醸し出している。
「一つの仕事に集中することで、よりシンプルでクリアーにコレクションを制作することができた」とショー後に話していたマーク。「ルイ・ヴィトン」のアーティスティック・ディレクターを退任し、「マーク ジェイコブス」に専念することで、どんなクリエイションになるのか注目が集まったシーズンだったが、何かをそぎ落として辿り着いた境地なのか。純化した結晶のような、ピュアネスを感じるコレクションだ。夜通しでショーの直前までフィッティングに集中していたマークのクリエイションへの前向きで純粋な姿勢とリンクするようだ。