オンワード樫山の「23区」は3日、ブランド設立から30年を迎え初のランウエイショーを都内で実施した。顧客やメディア、関係者など計500人を招待し、2023年秋冬の新作を発表した。ショーの終了後には展示受注会も行った。
ベーシックに一歩先の提案
顧客目線のリアルクローズ
ブランドらしい“上質”“ベーシック”を軸に、一歩先の提案に挑戦した。ショーは人気スタイリストの濱本愛弓が監修し、披露したルックは全42体。30個のランプシェードを灯した白基調の空間で、得意とするウールコート、ジャケットのシルエットを際立たせた。グレー、オフホワイト、ネイビーといった大人しめのカラーパレットに、ペールトーンの緑を差し込んだり、Vネックやスリーブレスジャケットで肌見せしたりして、ほんのり抜け感を加える。「ニット×ニット」「シャツ×シャツ」といった同素材のレイヤードスタイルも、商品のシンプルな面構えに奥行きを与えていた。
思わず目を奪われるような派手さや意外性はなかった。だが初めてファッションショーを目にしたような顧客も「着てみたい」「これなら挑戦できそう」と思ったことだろう。リアルクローズを作る「23区」らしい、顧客目線でよく練られたショーだった。ショーを開催した背景について佐野康博「23区」ディビジョン長は「一番に伝えたかったのは、30年間ブランドを愛してくれたお客さまへの感謝。そしてコロナが明けた今だからこそ、着ることの楽しさを届けたかった」と話す。
顧客が全国から
ショーの余韻のまま受注会
ショーの後に行われた新作の展示受注会は、多くの顧客でにぎわった。首都圏だけでなく、九州など遠方から足を運んだ人もいた。ブランドの10年来のファンという新宿区の女性は、「すてきなショーだった。感動した」と興奮気味に話した。オーダーシートには、ショーでモデルが着ていた商品など、すでに10点近くが記入されている。自宅のクローゼットも「23区」の服が多い。「着心地もシルエットもお気に入り」というシンプルなウールセーターは、5年以上大切に着ている。
「トレンチコートやシャツなど、定番と言われるものにこそ差が出る」と徳増陽宣チーフデザイナー。「これまで30年、常にお客さまの方を見てきた。デザインはシンプルでも、カッティングやサイジング、レングス感を時代に合わせて変えている。ブランドを長く着てくださっているお客さまに、しっかり届くものを作り続けていきたい」と背筋を伸ばす。
外出ムードの高まりの中、ブランドの業績(23年2月期)は前期比23.4%増と復調傾向にある。足元でも、「秋色で夏素材」のボトムスや今すぐ着られる盛夏向けニットがよく売れている。今秋冬はベーシックという軸足をぶらさず、これまでにない提案で新客の獲得につなげる。10月発売のカシミヤ100%セーターは赤、マスタードなどのビビッドカラーを導入。デニム素材のセットアップなど、カジュアルテイストでの訴求も強化する。