ランウエイには両サイドに加えて中央にもソファを敷き、モデルがU字にぐるりと歩く新しいスタイルを採用。ファーストルックは、真っ赤なリボン・ボウのシルクブラウスに股上の深いワイドスラックス。中性的な顔立ちのモデルを見れば、キャスティングを変更した理由も明確になった。続いて登場したウィメンズのルックは、サルトリア仕立てのセットアップ。ジェンダーレスの考え方について、共通の洋服を着せて男女の性差を取り払った「プラダ」に対し、「グッチ」は男性と女性の装いを完全に“あべこべ”にして提案した。アプリコットカラーやジオメトリック模様といった、トレンディーな70'sレトロ・ビンテージのムードも兼ね備えている。秋冬らしくないふんわり軽いシフォンシャツやドレープの利いたスラックスでフェミニニティを際立たせたメンズに対し、ウィメンズに着せたのはショルダーラインを水平に描いたジャケットやオフィサーコート。どちらも、柔らかさの中に芯のあるしなやかな強さを漂わせる。フリーダが好んだこれまでのロックな強さも影を潜めてしまった。
何より「変わった」と思わせたのは足元。アレッサンドロは、アイコンのホースビットローファーのかかとを取り、あふれるほどファーを敷き詰めたことによって、フェミニンな装いを際立たせるミュールにアレンジ。同じくアイコンの花柄「フローラ」も、大きなリボンのシルクシャツに優しく飾られた。フィナーレにはアレッサンドロをはじめデザインチームが勢揃いし、会場は拍手喝采。その拍手は、次世代に向けこれまでのメゾンの概念を覆す新たなチャレンジに挑んだクリエイティブ・チームの勇気もさることながら、それを認めた経営陣の英断にも送られたことだろう。後任デザイナーは、このあとのパリメンズ期間中に発表されるようだ。