各金融企業はこれまでも各社でサステナビリティ指標を設けてきたが、特に中堅・中小企業や非上場企業が取り組む際には整備・開示すべきデータ項目の指標がないことが企業の負担となってきた。足並みをそろえて標準化することで、情報開示の浸透を促す。詳細の設計はこれからで、理事会や各部会での議論を経て24年1月にガイドラインを公表する予定だ。
同機構はスタートアップのサステナブル・ラボが立案し取りまとめている。設立の経緯について、同機構代表理事に就任した平瀬錬司サステナブル・ラボCEOは「日本はサステナビリティの取り組みが遅れていると言われるがそうではない。多くの企業が人的資本経営を行い、環境技術や脱炭素技術において日本は世界のトップの一つ。だが、サステナビリティの取り組みが可視化されていないことで機会損失をしている。中堅・中小企業の“良い部分”をESGの文脈に載せることができれば日本に明るい未来がある」と語る。
8月21日の記者会見では、金融庁に加え、理事を務めるみずほ、三菱UFJ、りそな、SBI新生、みずほ第一フィナンシャルテクノロジーの担当者が登壇し、連携を強調した。金融庁の池田賢志国際室長チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサーは「金融庁が行なっている企業のサステナブル情報開示も基本、上場企業が対象だった。非上場企業が開示に取り組むことが彼らの競争力を高めるためにも重要だ」とコメントしている。
各社の発言で共通したのが、中小企業・非上場企業が情報開示する難しさ、意義・目的の重要性だ。みずほフィナンシャルグループ兼みずほ銀行の末吉光太郎サステナブルビジネス部副部長は、「日本のサステナビリティの実現には、産業構造の9割以上を占める中小企業の参加が不可欠。すでに実施していることを開示していただき加速したい。参加する人のメリットが重要だ」と話し、「グローバルに見ても中小企業に向けた情報開示の仕組みはないから世界的に見ても新規性がある」と続けた。
三菱UFJ銀行の太田悟史サステナブルビジネス部業務推進グループ次長は「大企業に始まった情報開示の波は、中小へと押し寄せてくる。“やらなければならない”ではなく、開示する以上はリアリティを持って企業のパーパスを考える機会とし中小の潜在力をステークホルダーへアピールするものへとしたい」とコメント。地方銀行と連動するSBI新生銀行の長澤祐子・執行役員サステナブルインパクト推進部長は、「開示しなくてはならないという義務感だけで人を動かすのは難しい。社会課題をサポートしてゆくための、あくまでツールとしてスタンダードを開示することが望ましい」と話している。
金融各社はここ数年、各社ごとにサステナビリティ情報開示の議論を進めてきた。吉本圭吾りそなホールディングス グループ戦略部サステナビリティ推進室長は「銀行各社がベストなサステナビリティ情報開示を突き詰めると、聞かれる側である企業にすれば大きな負担。平瀬さんの言葉を借りれば“みなでやれば遠くに行ける”と考える」と連携の背景を話している。
◾︎一般会員
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◾︎賛助会員・オブザーバー
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