セリーヌ・ルー/「ジョー マローン ロンドン」フレグランス開発責任者 プロフィール
フレグランスとビューティ業界で長年キャリアを積む。クリエイティブスタジオのリーダーとして、専門知識や芸術的な感性、と科学的な知識を組み合わせて唯一無二のブランドを体現する香りをつくり続けている
「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON以下、ジョー マローン)」のアイコニックな香りである“イングリッシュ ペアー&フリージア(以下、ペアー&フリージア)”が生まれ変わった。洋梨のジュースの製造過程で廃棄される水分から抽出された天然原料の洋梨のエッセンスを使用し、独自の製法で作られるようになったのだ。また、新たに“イングリッシ ペアー&スイート ピー(以下、ペアー&スイート ピー)”が登場。来日したセリーヌ・ルー「ジョー マローン」フレグランス開発責任者にイングリッシュ ペアーや新たな香りなどについて聞いた。
WWD:今回の来日の目的は?
セリーヌ・ルー=「ジョー マローン」フレグランス開発責任者:来日するのはロックダウン後初めて。日本にはたくさんインスピレーション源がある。今回は、イングリッシュ ペアーについて紹介するために来日した。
WWD:ペアーを天然香料にした理由と目的は?
ルー:“ペアー&フリージア”のインスピレーションは果樹園。イギリスで梨の木は日本における桜のようなもので、身近で象徴的な存在。ペアーに天然香料はなく、それがフラストレーションでもあった。天然の果物をフレグランスに使いたいと思ったから、それに挑戦するべきだと思った。この天然香料は、「ジョー マローン」のエクスクルーシブだ。
WWD:洋梨の廃棄物のアップサイクルはどのように行うか?
ルー:ジュースメーカーがジュースを製造する際に廃棄する水分を生かしている。その水分に熱を加えて水蒸気にすると、それに梨の成分が濃縮されている。それを香料として使用する。フレグランス1本につき、約1個の梨の抽出物を使用している。
廃棄物のアップサイクルだけでなく、生産者サポートも
WWD:「ジョー マローン」で使用している天然香料の割合は?
ルー:フレグランスごとに違う。天然のものがあればそれを使うのがルールだ。例えば、ジャスミンやローズには天然香料があるがスイート ピーにはないので、アコードをつくった。また、バランスを考えて天然香料を使うようにしている。
WWD:廃棄物をアップサイクルした香料を使用することにより、どのような効果がどのくらい見込めるか?
ルー:今後、もっと廃棄物をアップサイクルした素材を使っていきたい。自然環境に目を向けて、廃棄物の削減をすることで生産者の支援ができる。廃棄物の利用だけでなく、水の使用量を減らすこともできる。バニラの原料は、マダガスカルの生産者から長年調達している。同じ生産者から調達することで、現地の生産コミュニティーをサポートすることができる。
WWD:“ペアー&スイート ピー”を開発した理由は?
ルー:天然香料のペアーを他のフレグランスに使ってみたいと思ったから。パステルカラーのスイート ピーの花の色を香りで表現した。花のイメージ同様、甘美でロマンティックな香りになっている。“ペアー&フリージア”とレイヤードして楽しむこともできる。
WWD:「ジョー マローン」が他のフレグランスブランドと違う点は?
ルー:英国がインスピレーション源でフレグランスの名前が原材料名であること。また、意外性がある自然な香りで、まといやすい。フレグランスのストーリーには感情的なコネクションが感じられ、香りと共に旅路を歩むような親しみやすい存在であること。
WWD:フレグランス開発におけるこだわりは?
ルー:時間をかけて、自分の直感を信じる。誰にでもアピールする香りだと個性がなくなるから、直感を信じて判断する。
WWD:自分自身にとってフレグランスとは?
ルー:笑顔になるもの。ムードによりフレグランスは変わるが、心地よさや喜びを与えてくれる存在だ。