毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2023年8月28日号からの抜粋です)
村上:2024年春夏メンズコレは、LVMHの勢いが印象的でした。ファレル・ウィリアムスによる「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の大きな話題性はもちろん、「ディオール(DIOR)」も「フェンディ(FENDI)」もそれぞれあっと言わせるショー演出で、圧巻でした。対するケリングは、「グッチ(GUCCI)」は“小休止”だし、「サンローラン(SAINT LAURENT)」のショーはベルリンだし、「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」や「アレキサンダー マックイーン(ALEXANDER MCQUEEN)」はメンズのショーをしていません。一部では“LVMHウイーク”と言われたほど。成長し続けるLVMHへの一般の関心度も高まっているのを感じ、その強さを考える特集を企画しました。
井口:米「WWD」の記事や決算書を見ていますが、企業として見た時に、全方位的でスキがない。成功の方程式を横展開できていますし、何事にも長期的目線。そして儲からない事業も継続できる潤沢な資金力があります。改めて「すごい!」と実感しました。
村上:特に印象的だったのは?
井口:ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長兼CEOは2回結婚していて、1回目の時に長女のデルフィーヌと長男のアントワン、2回目の時に次男のアレクサンドル、三男のフレデリック、四男のジャンが生まれています。上の2人と下の3人は世代が違い、多分上の2人のどちらかが跡を継ぐのではないかと。下の3人はグループ内で好きなことをやらせてもらっている印象を受けました。
村上:フレデリックは控えめで少しマニアック気質があるのか「タグ・ホイヤー(TAG HEUER)」がピッタリ!と思いました。本人たちも優秀だと思うのですが、周りにいる優秀な幹部は「ご子息の汚点になってはいけない」というプレッシャーも感じているよう。それも成長のエンジンです(笑)。
井口:村上さんはいかがでしたか?
村上:「ルイ・ヴィトン」と「ディオール」のPRからは、毎日何かニュースが届きます。何かをニュースに仕上げてメディアに知らせる。PRとしてやるべきことを着実に行っています。こういう地道な仕事も秀でているんですよね。LVMHジャパンのノルベール・ルレ社長は、「憧れを創出するために、イベントは完璧でなければいけない。しかも数多くやりたい」と語っていて、実現しています。それぞれの高いプロ意識を感じました。あと、規模が大きいゆえに、取り巻きというか、あらゆるところにステークホルダーがいる強みと気配りも印象的でした。