ファッション

「ここのがっこう」が10代向けにサマースクール開講 「ファッションの深さを伝えたい」

ファッションスクール「ここのがっこう」を主宰する山縣良和デザイナーは8月29日、自身がディレクターを務める10代に向けたクリエイティブ教育のためのスペース「GAKU」で、「ここのがっこう」のサマースクールを開催した。

「ここのがっこう」は、毎年入門編としてのサマースクールを実施する。今回は、中高校生ら10代を中心に13人が参加。最年少は10歳の小学生だった。前半はファッションの概念を学ぶ講義を行い、後半は“変身”をテーマに、着なくなった服や資材を持ち寄って作品を製作するワークショップを実施した。「変身するなら風になりたいと思った」とオーガンジーでドレスを製作した人や、「変身と聞くと変わらなきゃいけない気がしたけど、自分をさらけ出すことも解釈の1つ」と透明なビニールでドレスを製作した人など、山縣デザイナーの講義からヒントを得た多様なクリエーションが発表された。

講義最後に山縣デザイナーから、「これからの時代にファッションができることは何か?」と問いかけられると、参加者からは「ファッションは、自分の意思表示をする手段だと思う。服を選ぶという自己決定の習慣は、政治や環境活動など他の場でも応用できるようになるのではないか」といった意見が出るなど、ファッションと自分、社会の関係性を考える議論が活発に行われた。講義を終えた山縣デザイナーに話を聞いた。

「ファッションは楽しくもあり、深さもある」

WWD:前半の講義では、山縣さんからの「ファッションとは何か?」という投げかけから始まり、「自分とは?」といった議題に発展した。10代には難しいのではと思われる哲学的な投げかけにも、熱心に回答する参加者の様子が印象的だった。

山縣良和デザイナー(以下、山縣):僕自身も参加者の熱量に驚いた。専門的な教育を受けないかぎり10代でファッションの概念を学べる場はほとんどないからなのか、サマースクールには毎年とてもモチベーションが高い子たちが集まる。

WWD:講義の後半は、「変身」をテーマにワークショップを行ったが、なぜそのテーマに?

山縣:変われる、という体験をしてもらいたかった。何かに悩んだときに、その価値観自体が変幻自在であると理解してもらうために有効だと思った。

WWD:今後、業界全体でサステナビリティを推進していくためにもファッション教育が要になる。「ここのがっこう」では、サステナビリティの概念をどう伝えている?

山縣:以前の方が、「サステナビリティ」という言葉をよく使っていたが、今は少し減ったように思う。今日の講義でも最後に「プラネタリーヘルス」(地球の健康と人間の健康が相互依存的に関係しているという概念)の考え方を紹介したが、自分と社会、環境のつながりを意識してもう少し自発的な問題意識の立ち上がりを大事にしている。

WWD:今回の講義を通して特に持ち帰って欲しかったメッセージは?

山縣:ファッションは楽しくもあり、深さもあるということ。僕の10代は、カッコいいものを探して着飾ることに夢中だった。気候変動しかり、さまざまな社会問題に向き合わざるを得ない時代を生きている世代だからこそ、ファッションの深みに気付くことは重要だと思う。「ここのがっこう」でも、「装いとは何か?」といった概念から講義をする。僕がやるべきことは、本質を理解する手助けをすることで、間口を広げること。あえてファッション表現はこれだと言い切らないことを大事にしている。ファッションを学んで最終的には、それぞれがやりたいことを実現してほしい。

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