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連載 沖縄ビューティNEWS 第1回

2022年優良県産品に認定された野草界のスーパーフード「さし草」

世界で100歳以上の人が多く暮らす地域を“ブルーゾーン”と呼ぶ。国際的な自然科学誌「ナショナル・ジオグラフィック」の『長寿の秘密』という特集記事において発表されており、世界に5カ所ほど存在する。その5大地域のうち、アジアからは唯一、日本の沖縄が選ばれているのをご存じだろうか。

この長寿地域は食生活はもちろん、趣味嗜好などのライフスタイル、人生に対する考え方など、さまざまな要素を考慮して選ばれており、健康のヒントが詰まっている。ただ、沖縄はここ数年、ファストフードなどが好まれるようになった食文化の変化や運動不足から、特に男性の肥満が懸念されるようにはなってしまっている。それでも、ミネラルを多く含む大地や新鮮な魚介類、味噌や豆腐よう、泡盛など発酵食品も豊富にそろう沖縄は“長寿食の宝庫”といえる地域であることに間違いない。

道端に生えている“雑草”に、実はポリフェノールなどの栄養素が!

そんな沖縄で、去年、沖縄県から優良県産品として認定された注目の“野草”がある。それが、沖縄で新たなスーパーフードと評されている「さし草」だ。

「さし草」とは、世界中の温暖な地域に分布するセンダングサ属で、道端に普通にある雑草。沖縄でもあちこちに生えていて、あっという間に生え広がるため、地元民には“厄介者”扱いされている存在だ。そんな厄介者がなぜスーパーフードと目されるようになったのか。

取材したのは「さし草」の栄養価を検証し、商品化を実現した南城市・さし草屋の與儀喜美江・代表だ。

「そもそも、さし草と巡り合ったのは草木染をしようと思ったのがきっかけでした。草木染の素材としてアカバナやフクギを考えていましたが、それぞれ素材を確保するのが難しく、さし草ならいたるところにたわわに生えている(笑)。そこで、私のカフェでさし草で染めた手ぬぐいなどを販売しはじめ、さらにさし草をスコーンなどに混ぜたスイーツを発売していました」。ただ、その時は、さし草に高い栄養価が含まれているとは露程にも思っていなかった。

「友人がさし草をヒラヤーチー(沖縄風お好み焼き)や、生サラダのなかに添えていて。え? そのまま食べられるの?と思ったのが食用として認識したきっかけでした。さらに、さし草にはさまざまな薬効があり、昔から食していた、とカフェのお客様から話を聞いたこともあって、これは手ぬぐいを販売しているどころじゃない(笑)と思いまして。本格的にさし草の薬効を検証することにしました」。

そして、與儀さんは栄養価を調べるために、さし草を食品分析試験に出した。すると、「ポリフェノールやタンパク質、亜鉛やベータカロテン、ケイ素など、さまざまな栄養素が豊富に入っていて、本当に衝撃を受けました。この分析結果を得られたことから、さし草を粉末にして販売しようと思い立ち、いまの主力商品である“さし草粉”を開発したのです」。

さし草粉を開発した当初は「雑草を食べるのか」といった風評も少なくなかったというが、與儀さんが主宰するカフェ「さし草屋joy工房&茶屋」のフードメニューとして、さし草を取り入れたトーストやご飯を提供していたところ、その風味や栄養価に興味をもった客がさし草粉を購入するようになり、次第に嬉しい報告を受けるようになったという。「購入した方から便秘が解消した、マスクによる肌あれが改善したとか、さまざまな健康効果をいただくようになりました。なかには、精神が安定したと、涙ながらに感謝を述べられたかたもいらして。私たちもさし草の効果に驚きを隠せませんでした」。その噂は次第に県内にも広がり、道の駅やファーマーズマーケット、オーガニックカフェやレストランなどから多くの引き合いを受けるようになった。

マクロビ食堂では“さし草麺”が人気

沖縄市でマクロビ食堂「キッチン のぎ」を主宰する中筋由貴枝さんは「私たちの食堂ではさし草を使った冷やしつけ麺を提供しています。かんすいを使っていないのに、麺にはしっかりコシがあり、おいしい。特にビーガンのお客さまから好評です」と話す。「さし草は野草の中でも栄養価が極めて高い。長命草も栄養は豊富ですが、栽培が大変ですし、長命草には含まれていないケイ素がさし草には含まれている。野菜が苦手な方なら、こちらのさし草粉を摂っていれば健康でいられると思えるほどです」と笑う。

そして、2023年には、晴れて沖縄県優良県産品として、さし草屋の「さし草粉茶」が認定された。與儀さんは「さし草は沖縄で新たな産業になるのでは」と期待を寄せる。

「さし草なら手入れも少なく、勝手に生えてくれる(笑)。放棄地でも栽培できますし、高齢者もラクに収穫ができます。また、福祉作業所のかたも、草にさわることで精神的に安定したり、草のエネルギーで癒されることもあります。『さし草粉茶』が優良県産品になったことで、さし草の認知が広がれば、さまざまな取り組みができるようになる。今後は、福祉作業所はシルバー人材の方々ともお取組みすることで、より多くの人たちが健康を維持できるような商品を開発したいと考えています」。

道端に生えている“雑草”が、まさかスーパーフードに大化けするとは。化粧品業界でも、沖縄の天然成分は美容効果が高いと言われているが、このさし草のように、さまざまな健康成分が含まれている素材は意外に身近な場所に隠されているのかもしれない。

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