「無印良品」を運営する良品計画は、グランフロント大阪店(大阪・梅田)を9月8日に改装オープンした。これまでは4階の1フロアだったが、2階と3階にも増床し、関西最大規模の店舗となった。売り場面積は改装前の約2倍の5207平方メートル。来店客数も約2倍を見込む。
コンセプトは“みんなのライフパーク”とし、住宅から日々の暮らしに必要な日用品まで暮らしの全てがそろう店を目指す。テーマパークのように「体感、体験できる」のが特徴だ。
改装のポイントは3つある。1つ目は鉛筆から家まで販売している良品計画グループの全体が見える形で提供すること。2つ目は住空間や家具の販売に加え、古いモノの再利用も含めた住空間、空間設計事業を強化すること。3つ目は「カフェ&ミールMUJI」をリニューアルし、取り扱う食材を地産地消にシフトすること。「カフェ&ミールMUJI」はこれまではセルフサービスのデリカテッセン業態だったが、フルサービスのレストラン業態に業態転換した。顧客と生産者をつなぐため、新しいメニューの7割に地元食材を使い、地域の活性化に貢献する。
10のモデルルームを設ける
堂前宣夫社長は改装の狙いを次のように説明する。「第2創業期のいま、当社ではあらゆる人の日常生活の基本を支える商品とサービスの提供と、地域への土着化をミッションに掲げている。そのためコミュニティセンターの機能を持つ600坪(1980平方メートル)超の店舗を年間100店舗を目標に生活圏に出店中だ。同時に都心では、『無印良品』の全体感を伝えるために今秋、リニューアルを進めている。グランフロント大阪に続き、銀座と新宿の2店舗も役割と内容を変える」。
特にグランフロント大阪店では、地域の活性化と生活の基本を支える店づくりを掲げ、住空間と空間設計を大幅に強化した。
注目したいのは、暮らしをイメージしやすいように10のモデルルームを設けたことだ。4階「家具・リフォーム」コーナーには、居住スタイルに応じた4テーマ8部屋のモデルルームが並ぶ。「モノから暮らしを見るのではなくて、暮らしからモノを見てほしいという思いでモデルルームを作った。今までは家具をたくさん展示していたが、暮らしからモノを見れば、新たに買わなくても今あるものでも感じ良い暮らしができるということに気づける。何かを発見できるようにリアルな体験の場を設けた」と、同店の坂本克也店長は話す。
店内に設計事務所 リフォーム相談に対応
無印良品が提案するマンションの性能向上リノベーション「MUJI INFILL0(インフィル・ゼロ)」のモデルルームと、都市再生機構とMUJI HOUSEが進める「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」のモデルルームも店内に設置した。関西で初めて住宅リノベーションの相談が可能になった。実際の団地の住戸から敷居や鴨居、柱、玄関扉などを移設して作り直したモデルルームは、本物の古い団地の部材を使用。シンプルナチュラルな無印良品の家具とも相性がよく、レトロモダンな団地の間取りや暮らしを体感できる。
これまで空間設計事業は、東京・有明店の店舗内に事務所を設置し、店舗とオンラインで相談を受けていたが、グランフロント大阪店の改装を機に、西日本初の空間設計事務所を開設した。インテリアコーディネーターや建築士、宅地建物取引士、マンション管理士など住まいの専門家が在籍し、住居用品や空間設計に関するさまざまな相談に対応する。
「これからの時代、店舗では人が主役になっていくと思う。ここには専門資格を持つ専門家が15人いるので、気軽に入れるけど相談にはしっかり対応できるという環境にしている」(坂本店長)。
法人や自治体向けに空間設計を提案するゾーンでは「キッズスペース」や新サービスの「コワーキングスペース」など「無印良品」が設計デザインする空間を設け、実際に体感、利用できるスペースを増やした。他には店内で自家焙煎したコーヒーをその場で飲んだり、購入したりできる初の「MUJI コーヒー」、ラジオ局のような「配信スタジオ」からのコミュニケーション、「Open Muji」で開催されるイベントも見逃せない。
宣伝販促室で約6年間マネージャーを務めた坂本店長は、リニューアルにあたり「店舗を最大のメディアとする旗艦店」として、発見と体感と体験できる“集える場所”づくりを目指した。「大阪ではこれから万博も開催されるので国内外から人が大勢集まってくる。大阪の中心地である梅田の旗艦店は、メディア化するには最適の店舗だと思った。これまでは無印良品の全体感が見えないためにお客さまに伝わっていないことも多かったが、『無印良品』の全てをそろえることで今と最新をきちんと伝えていきたい」と話す。