ビンテージ「エルメス(HERMES)」、中でもアクセサリーの高騰が止まらない。「そんなこと知ってるよ」というファッション好きも、ではどのモデルに熱視線が集まり、どれくらい値上がりしているのか?について即答できる人は少ないかもしれない。そこで、「日本一の品ぞろえ」という渋谷パルコ4階の予約制ショップ「VCM COLLECTION STORE」にお邪魔し、十倍(とべ)直昭オーナーにビギナーにも分かりやすく解説してもらった。
人気はいつから?きっかけは?
WWD:ビンテージ「エルメス」アクセの人気に火が付いたのはいつ?
十倍直昭「VCM COLLECTION STORE」オーナー(以下、十倍):ここ2〜3年で爆発しました。ビンテージショップの店主などが付け出し、それがエンドユーザーにも広まった形です。需要が高まり、新品でも“シェーヌダンクル”のブレスレットなどは1〜1年半待ち状態に。それでも予約はできたんですが、現在はそれも受け付けなくなりました。店舗を巡って、運良く在庫があれば買えるという状況です。こうして1次流通の購入希望者もビンテージ市場に流入し、ますます争奪戦が激化という構図です。
ビンテージ「エルメス」アクセブーム前夜、男性が付けるアクセサリーは「クロムハーツ(CHROME HEARTS)」か「ゴローズ(GORO'S)」の主に2択でした。それぞれ“主張する”アクセサリーですね。これに対して、シンプルで付けやすいのが「エルメス」の特徴です。
WWD:男性からの支持が厚い?
十倍:はい。VCM COLLECTION STOREの場合、男女比は8:2ほどです。カテゴリー別で見ると、ブレスレット需要が過半数以上でリング、ネックレスと続きます。
WWD:男性ファンからの熱烈なラブコールを受けて、価格も高騰している?
十倍:この2〜3年で、価格が3倍になったモデルもあります。そういえば、ブーム前の2020年には「WWDJAPAN」でメンズジュエリーを特集されていましたね。さすがです(笑)。
WWD:ウエアは人気がない?
十倍:そんなことはありませんが、アクセサリーのように突出したアイコンモデルがなく、それゆえそこまで値上がりしていません。
まず知っておくべきモデル3選
ビンテージ「エルメス」アクセの人気が高止まりしている現状は分かった。では、次は“何を選ぶか?”だ。ここでは、まずは知っておくべき3モデルについて聞く。
“シェーヌダンクル”のブレスレット
「エルメス」で最も有名なアクセサリーです。“名前くらいは聞いたことがある”という方も多いのではないでしょうか。フランス語で“錨(いかり)の鎖(くさり)”を意味して、その名の通り、船の錨を結ぶチェーンを模したデザインです。リングやネックレス、ピアスもありますが、ブレスレットの人気が圧倒しています。状態にもよりますが、価格はGMで20万円台後半です。
「エルメス」のアクセサリーを語る上で覚えておいてほしいのが、サイズ表記です。PM(プチモデル)、MM(モワヤンモデル)、GM(グランモデル)は、なじみのある言い方に変換するとS、M、Lです。さらにSSのTPM、LLのTGMもあります。女性の方がGMなど大きめを選ぶ傾向で、モードな装いにプラスしています。男性は時計との重ね付けを好むので、小さめをセレクトすることが多いです。
“シェーヌダンクル”は1938年に作られた、「エルメス」初のオールシルバーアクセです。“初期こま”と呼ばれる角張ったパーツを用いたモデルが希少価値が高いです。こまはその後、時代が下るごとに丸くなっていきます。
60年代くらいのシルバー800を使ったモデルも人気です。現行のシルバー925に比べて銀と他の金属の含有比率が異なるので、色や風合いが違うんですよね。
“ブックルセリエ”のブレスレット
“ブックルセリエ”は馬具をモチーフとしたもので、馬具メーカーとして創業した「エルメス」らしい商品と言えます。46年に誕生し、今では“シェーヌダンクル”と双璧をなす人気シリーズです。多く流通しているのは80〜90年代のものですね。価格はブレスレット(MM)が40万円前後。
発売時の定価が高く、これからの値上がりも見込める商品です。男女共に人気なんですが、女性がTGMを選択するケースがよく見られます。
“オスモズ”のリング
リングの一番人気は“オスモズ”です。「エルメス」の頭文字“H”を表したデザインで、PM、GMの2サイズがあります。メンズも付けられるGMは流通数が少なく、価格は10万円台後半〜20万円。入門編としてお買い求めいただくケースもありますし、上級者がブレスレットやバングルと一緒に付けることもあります。
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“アクロバット”のブレスレット
こまが外せてサイズ調整できる、適度なボリュームのブレスレットです。ブレスレットは“シェーヌダンクル”が定番なのですが、「T字の留め金が邪魔……」というユーザーも多く、“アクロバット”の人気が高まっていると感じます。価格は、2〜3年前に比べて3倍になっています。
その後VIP向けに受注生産したものの、2006年秋冬シーズンにだけ作られたモデルで“玉数”が少ないんです。販売した国も、母国フランスなど欧州の一部に限定されていました。
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“グレンデシャン”の18金ブレスレット
“グレンデシャン”は穀物の種という意味で、一つ一つのパーツは種子をモチーフにしています。1988年に発売されたモデルで、シルバー製でも日本に数本あるかどうかの大変貴重な商品なのですが、こちらは18金製。ブレスレットの中で“一等賞”と言えるかと。
“ペールメール”のネックレス
モデル名は、フランス語で“ごちゃまぜ”を指します。“シェーヌダンクル”“ブックルセリエ”“ホースビット”(馬の口にくわえさせる金具)“クレッシェンド”(モチーフが小から大へグラデーション)の人気の4モチーフをミックスしたオールスター的な逸品です。長さが50cmなので男性も付けられます。僕自身、これともう1本しか見たことがないレア中のレアモデルです。
ポイントは“ずっと付けられるか?”
WWD:圧巻のラインアップだった!
十倍:良いタイミングで来てもらえました。人気商品は入荷しても即売れてしまうので。
WWD:VCM COLLECTION STOREには、何点ほどのビンテージ「エルメス」アクセがある?
十倍:約200点です。希少性の高いアイテムをこれだけ網羅できているのは、今日の時点では日本一かもしれません(笑)。
WWD:供給元は?
十倍:国内外の個人オーナーが主で、アクセサリー専門店の「ムード トーキョー ヴィンテージ」などとも提携しています。
WWD:VCM COLLECTION STOREへの入店方法は?
十倍:専用フォームから希望の開放日を入力ください。1時間に1組(最大2人)のみ受け付けていて、必ず僕が接客します。
WWD:最後に、この記事を見て、初めてビンテージ「エルメス」アクセを購入する人にアドバイスを。
十倍:ビンテージ「エルメス」アクセの特徴はシンプルさなので、“ずっと(毎日)付けられるか?”を基準にするのがオススメです。エントリーモデルでもブレスレットで20万〜30万円と決して安くはありませんが、ここ5年は値下がりを見ておらず、この流れは今後もしばらく続くでしょうから“今が一番安い”とも言えます。つまり投資価値もあるのかと。ビンテージを購入しても、「エルメス」の店舗に持ち込めば磨いてくれて、一生の“相棒”にできるはずです!
PHOTOS : SHIMPEI SUZUKI