伊勢丹新宿本店は、革新を重ねることで百貨店のトップランナーの座を守ってきた。華やかな売り場に目を奪われがちだが、強さの土台にあるのは、顧客を知り尽くす緻密な分析力である。その分析力は「マスから個へ」というスローガンのもと、新しい仕組みとなって組織に根付く。最新の事例を追った。(この記事は「WWDJAPAN」2023年10月2日号からの抜粋です)
CASE 1
外商員とバイヤーのチームプレー
高級ブランドの「ペット用品」がヒット
今年2月24日の外商顧客向けイベント「丹青会」。ラグジュアリーブランドが軒を連ねる本館4階の一角に、この日限定のペット用品売り場が設けられた。並ぶのはそうそうたるハイブランドのドッグアイテムで、首輪であれば5万〜10万円。中でも10万円の中綿ジャケット、50万〜60万円のドッグバッグなどが好評で、当初計画を上回る売り上げを達成した。
外商員とバイヤーが綿密に連携する新体制から生まれた企画だった。外商顧客のライフスタイルや好みを熟知する外商員が、国内外の商品に精通したバイヤーと組み、実在の顧客を想定したMDやサービスメニューを開発する。2021年に就任した細谷敏幸社長が掲げる百貨店改革の目玉である。
ターゲットは4種の小型犬
外商員が外商顧客の自宅を訪ねると、ペットの犬を見かけることが増えた。都内であれば、犬種はトイプードル、チワワ、ミニチュアダックスフント、ミニチュアシュナウザーの4種の小型犬にほぼ集約されることが分かった。伊勢丹らしい切り口の商品をそろえれば潜在需要は大きいと外商員は考えた。バイヤーに相談したところ、ふだん百貨店内のブランドショップでは取り扱いがあまりない小型犬向けのペット服を集めることができた。MDを担当する大嶋一秀マネージャーは「(顧客から)『伊勢丹ではペットの相談もできるのね』とおっしゃっていただき、うれしかった」と話す。外商部門と連携したからこそ発見できたニーズだった。
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