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TSIで進化する「エトレ トウキョウ」 大手アパレルとD2Cの新しい互恵関係

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TSIホールディングス子会社のHYBESが運営し、インフルエンサーのJunnaがディレクターを務めるD2Cブランド「エトレ トウキョウ」が順調に成長している。グループの生産・物流の活用が成長につながる一方、D2Cブランドの運営ノウハウがグループ内に好影響をもたらしている。(この記事は「WWDJAPAN」2023年10月2日号からの抜粋です)

TSIグループは20年8月に動画ECの3ミニッツ(現在はグリーライフスタイルが事業を承継)から「エトレ トウキョウ」の事業を譲受。昨年4月にグループを事業領域ごと4つの組織に再編した。「デジタルジェネレーション領域」では25年2月期にD2Cブランドの売上高合計を35億円とする目標を掲げる。HYBESでは現在、「エトレ トウキョウ」のほか「メクル」「シャロル」の3つのD2Cブランドを育てている。

けん引役となる「エトレ トウキョウ」はすでにTSIグループに加わったことによるシナジーが生まれている。モノ作りでは大手アパレルならではの生産背景を享受し、クオリティーが全体的に向上した。グループの信用力で、生地商社との取引条件が改善したことが大きく寄与している。利益面では物流費の抑制が貢献する。商品の仕入れは量が多い月と、そうでない月でバラつきがある。ここでもグループの物流会社との信頼関係で、使用できる倉庫のキャパシティーを時期ごとに柔軟に変動できるようにした。デジタルジェネレーション領域を統括する中村晋ディビジョン長によれば、これによりブランドの営業利益率が2〜3%改善した。

デジタルジェネレーション領域には、「ジル バイ ジルスチュアート」「ローズバッド」といった若い女性に支持が厚いブランドも所属。「エトレ トウキョウ」のノウハウを生かしながらファンコミュニティーの形成を進める。「エトレ トウキョウ」は新商品を週に5つ投入するなど、一般的なアパレルブランドよりも短サイクルでMDを回す。直営店舗は新宿ルミネ2の1店舗のみで、商品の魅力を伝える場は主にEC。「(『エトレ トウキョウ』のチームには)商品を作りっぱなしにせず、それらの魅力をいかに伝え、売り切るかを考えるマインドがある」と中村ディビジョン長。「例えば今日投入した商品は、1カ月後の売れ行きを欠かさずモニタリングする。売れ行きが芳しくなければ、SNS発信に手を尽くす。ヒット商品や足りないMDは、速やかに増産や追加企画で対応する。他のブランドが学ぶべき点は多い」と話す。

後続のブランドも育つ

「エトレ トウキョウ」のSNSでユーザーと密につながる運営も、他ブランドの見本だ。「ジル バイ ジルスチュアート」は新作商品のカラー展開を、インスタで人気投票を募って決める取り組みを始めた。ユーザーを巻き込んだ企画が奏功し、事前予約段階でも好調という。他のブランドの担当者が「エトレ トウキョウ」のチームにSNS投稿のアドバイスを求める光景も増えた。デジタル施策の成功事例をブランド間で共有する会議も、週次で実施するようにした。

「エトレ トウキョウ」に続くD2Cブランドの芽も育つ。個人資本で立ち上げた D2Cブランドは体力的に弱く、失敗が命取りになるケースもある。小規模ブランドをじっくり育てられる資金や環境があるのも大手の強みだ。「メクル」 は15万フォロワーのインフルエンサーMAIをディレクターに据えて21年秋にスタートした。滑り出しはやや鈍かったが、ディレクターが好む「エレガント×マニッシュ」のテイストに、TSIのリアルトレンドの知見を注入し、商品テイストを軌道修正している。卸売りでも展開しており、取引先も徐々に広がっている。22年秋冬にスタートしたインフルエンサーHINANOの「シャロル」は、今年3月からルミネ新宿2の2階で期間限定店を展開してきたが、好評を受けて半年間の延長が決定。他のデベロッパーからも出店の打診が舞い込んでいるという。

エディターズ・チェック

D2CブランドはSNSなどを通じてユーザーと密につながり、吸い上げた意見・感想を商品企画に反映させる点が、これまでのアパレルブランドとの大きな違い。個人などの小規模事業者が運営するケースでは、資本力や生産力がウィークポイントになる。その点、「エトレ トウキョウ」はTSI傘下に加わってからモノ作りのレベルが底上げされ、デジタルのノウハウや知見を共有することで「ジル バイ ジルスチュアート」「ローズバッド」といった既存ブランドにも前向きな影響をもたらしている。これまで「古い/新しい」という文脈で語られがちだった大手アパレルとD2Cブランドだが、実は好相性にも思えてくる。今後のさらなるシナジーに期待したい。

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