ファッション

「イザベル マラン」が明かす日本上陸の裏側 青山の新店と日本法人設立への思い

イザベル・マラン/「イザベル マラン」デザイナー

1967年生まれ、フランス・パリ出身。85年にスタジオ・ベルソーを卒業し、ミッシェル・クランやマーク・アルコーリの元で経験を積む。88年に独立してニットとジュエリーのブランドを設立し、94年に「イザベル マラン」に改名。日本での販売も開始した。2000年以降はセカンドラインやキッズウエアもスタートし、ビジネス規模を徐々に拡大。2012年にはトゥモローランドとフランチャイズのパートナーシップ契約を締結し、東京・表参道に日本第1号店となる通称“イエローハウス”をオープンした。18年春夏シーズンにはメンズも立ち上げている

イザベル マラン(ISABEL MARANT)」は、東京・南青山に新旗艦店「イザベル マラン 青山店」を今夏オープンした。店舗面積200平方メートルの店内には、ウィメンズおよびメンズコレクションとセカンドライン「マラン エトワール(MARANT ETOILE)」に加え、シューズやバッグ、アクセサリーなどをフルラインアップする。

同ブランドは、新店舗オープンに合わせてイザベル マラン ジャパンを設立した。「イザベル マラン」の日本事業はこれまでトゥモローランドが約20年間にわたって担ってきたが、日本法人を立ち上げて運営やプロモーションを本国主導で強化し、日本におけるさらなる認知拡大を目指す。2024年春夏シーズンのパリ・ファッション・ウイークで現地時間9月28日に披露したランウエイショーのフィナーレには、イザベル・マラン=デザイナーと共に、21年に就任したキム・ベッカー(Kim Bekker)=アーティスティック・ディレクターも登場。ブランドの新章を予感させた。日本を「特別な国」と語る創業者のマラン=デザイナーに、新店に込めた思いや今後について聞いた。

イエローにこだわる理由

WWD:旗艦店を表参道から青山に移した理由は?

イザベル・マラン(以下、マラン):表参道のショップは大好きな日本式の木造建築で、フランス人の私にとってすごく特別な場所だった。だからとても愛着はあったのだけど、青山の方がファッションのフィールドとして合う気がしたから、新しく店を構えることにしたの。

WWD:新店は表参道時代よりもイエローを強調したデザインだ。イエローにこだわる背景は?

マラン:元々イエローにするつもりはなかったの。でも表参道のお店が顧客や社内でも「イエローハウス」と呼ばれて愛されていたから、「日本にイエローハウスを残さなくちゃ」と思ったのがきっかけね。みんなからよく「イエローが好きなんですか?」と聞かれるのだけど、実は一番好きな色というわけではないのよ(笑)。

WWD:新店で特に気に入っているところは?

マラン:もう、すでに建物だけで素晴らしいじゃない。まるで道に太陽の光が差したように見えるわ。あとは、遠くからでも見つけやすいところ。知人に素敵なレストランを教えてもらったから探していたんだけど、遠くからでもこのイエローが目立っていてうれしかったわ。

WWD:建物や内観は、日本人アーティストの曽根裕との協業だ。コラボレーションしたのはなぜ?

マラン:本国フランスのカルチャーをただ持ってくることはしたくなかったの。日本の店なのだから、日本人とコラボレーションすることで文化をミックスしたかった。それに、曽根さんの作品には人の温もりを感じて、私が考えるアートやカルチャーに対するビジョンと共通する部分があったのよ。例えば、クラフト感とかね。それでいて先進的でもあるから、とても気に入ったわ。

初年度売り上げの8割は日本

WWD:日本法人を立ち上げた目的は?

マラン:会社が大きく成長していく中で、私たちが考えるブランドのスピリットやエッセンスを、他社と共有するよりも自分たちで表現する方がいいと考えたから。それに、日本上陸から約20年も経つと市場への理解もかなり深まったし、他国と同様に自分たちで運営する道を選んだの。

WWD:日本はあなたにとってどのような国?

マラン:とても大切で、特別な国ね。私がブランドを始めた頃、最初に買い付けてくれたのが日本のお客さんだったの。初年度は、売り上げの80%が日本だったはずよ。日本の人たちが私のクリエイションを信じてくれたことにすごく感謝しているし、日本のマーケットがあったからこそいいスタートが切れたわ。

WWD:「イザベル マラン」は常にポジティブでパワフルなブランドという印象だ。そのエネルギーを保つ秘訣は?

マラン:私たちは人に喜びを与えたり、カルチャーや美しさを共有したりすることを大切にしているの。エネルギーをたくさんの人に分け与えることが、結果的に私自身のクリエイションにつながるから。だから真面目に発信するというよりも、そういうイメージにつながるんじゃないかしら。私は30年間ファッションの仕事のスタンスは全く変わっていないし、風が吹いてもピクリとも動かない石のように頑固な性格なのよ。

WWD:もうすぐブランド30周年を迎える。50周年に向けて、どのようなブランド、デザイナーでありたい?

マラン:まず、これだけ長くブランドを続けてきた自分を誇らしく思う。でも私にとって数字は大きな意味がないから、周年のような記念日は好きじゃないのよ。パーティーは恒例行事でよく開いているけれど、自分の誕生日ですら20代以降は何もやっていないぐらい。だから50周年に向けて、と聞かれると、そんなに長く続けたいのかは自分でもまだ分からないわね。デザイナーはとても消耗する仕事で、デザインすることはものすごくエネルギーを使うの。でも今は素晴らしいアイデアを持った若者が社内にたくさんいるから、私のレガシーを引き継いでもらえるように教育に力を入れているわ。

WWD:30年間で最も大切にし続けてきたことは?

マラン:Honesty(誠実さ)。

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