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人気ブランド「epine」が突然のブランド休止宣言、渦中の創業者2人に直撃インタビュー

PROFILE: 山本彩也架epine official代表取締役CEO兼「エピヌ」デザイナー(右)/ 鈴木舞epine official取締役COO兼「エピヌ」アートディレクター

山本彩也架epine official代表取締役CEO兼「エピヌ」デザイナー(右)/ 鈴木舞epine official取締役COO兼「エピヌ」アートディレクター
PROFILE: 2015年11月21日に、原宿のヴィンテージショップのバイヤーだった山本CEOと、同店のバイトだった鈴木COOの2人が東京・国立で個人事業として創業。インスタの公式アカウント(@epineofficial)の最初の投稿は15年11月24日。18年12月25日に法人化。資本金は300万円。19年2月に表参道に路面店、21年2月に新宿ルミネ、23年3月に渋谷109に店舗をオープン。インスタのアカウントのフォロワー数は17.2万

インスタグラム発の人気ブランド「エピヌ(epine)」が10月12日夜、2人の創業者である山本彩也架(@ayayaka1019)と鈴木舞(@ym14me)のインスタグラムアカウントで突如、1年後の2024年11月21日にブランドを休止すると発表した。同ブランドを運営するepine officialの直近の22年11月期の年商は約10億円。18年12月に法人化以来、売上高はずっと右肩上がりで成長し、23年11月期も過去最高の売り上げが達成確実という人気絶頂のタイミングでの、突然の休止宣言。「epine」に何があったのか。創業者2人に直撃した。

創業以来、二人三脚で決断&作業

「エピヌ」の創業は、2015年11月21日。代表取締役CEOの山本デザイナーと取締役COOの鈴木ディレクターの2人で立ち上げた。「立ち上げたといっても個人事業で私が100万円、鈴木が20万円を出し合ってインスタを利用したECショップをスタートしました」と山本CEO。山本CEOはヴィンテージショップでのバイヤー経験こそあったものの、取り立てて業界にコネがあったわけでもなく、鈴木COOはまだ大学生だった。家賃を節約するために山本CEOは大学生の鈴木の家に転がり込み、当初は売り上げの大半のお金を買い付けにつぎ込んで販売するという、まさに自転車創業だった。「最初の1カ月の売り上げは30万円で、初年度は800万円でした。立ち上げから最初の1年半の給料は5万円、2〜3年目まで10万円でした。私は幸いにも仕送りで家賃を賄っていてお金がかからかったので(笑)、最低限の生活費以外は売り上げの大半を買い付けにほとんど回していました」と鈴木COO。

当初はヴィンテージを買い付けたり、韓国からテイストに合う服を仕入れたりしていたが、あるとき韓国で100枚ほどの発注をした際に「それなら縫製工場で作ったほうがいい」と言われ、オリジナルアイテムの販売をスタート。最大のヒット商品であるトートバッグはシリーズ累計で20万個に達している。ただ、製造委託先は現在も2〜3社で、メーンは最初に生産を委託したOEM企業だ。売上の増加に伴い、19年2月に表参道ヒルズの裏手の一角に路面店をオープンするため、18年12月25日に法人化。21年2月には念願だったルミネ新宿にショップをオープンした。

同社は年商が10億円に達した今でも借り入れすらなく、無借金経営だ。全て2人で決め、業務の多くも実際に2人が手を動かす。山本CEOは「立ち上げて以来、写真1枚だって人任せにせず2人でやってきました。小さなことから大きなことまで、2人で全て決めてきた」と語る。業務は山本CEOがデザインのディレクション、インスタグラムの運用、オンラインショップの運営、スタイリング、鈴木COOがヘアメイク、アートディレクション、デザインディレクション、経理や物流などの間接部門の運営・管理、PRを担当。今でもルックブックなどの「エピヌ」のビジュアル全般を撮影から編集、インスタグラムのアップまで山本CEOが作業している。

実は2人は今でも一緒に住む。「いわゆるパートナーという関係ではありません。立ち上げからそうだったというのもありますが、2人一緒にいることが一番効率がいいというか、『エピヌ』は全部2人で決めるので一緒にいるのが一番いいんです。ちなみに私は家事全般が苦手なので、マイに全部やってもらってます」。新宿にオフィスはあるものの基本的には物流やプレスなどの間接部門で、2人の住む家がアトリエ兼住居兼オフィスのようなもの。2人のインスタグラムにはリサーチや撮影を兼ねた旅行先の投稿も多いが、「撮影こそ一眼レフカメラを使いますが、それ以外の業務の大半はスマホで完結しています」(山本CEO)。まさに2人がいる場所こそがオフィスなのだ。

ブランド休止は3年前のルミネ出店がきっかけ

ブランドの休止について考え始めたのは、21年2月のルミネ出店がきっかけだった。「ルミネに出店したあたりから、ブランド休止について考え始めました。ルミネへの出店は、立ち上げ当初に考えていた夢のひとつでした。それ以外でも夢がどんどん叶って行って、燃え尽き症候群のようになった。とはいえ、支持してくださるお客さま、支えてくれるショップスタッフなどの社員たちや仕入先がいる限り、そんなことは言ってられない。ありがたいことに売り上げはずっと右肩上がりで、常に『今が一番忙しい』という感じ。いまこの時点でもそうです」と山本CEO。

今年3月には渋谷109に出店したが、鈴木COOは「ブランド休止を考えていたし、新宿と渋谷という距離の近さ、もう手が回らないといった理由で当初はずっと断っていたんです。ただ、何度も足を運んでいただき、いろいろな話をする中で、すっと2人の中で腹落ちするような瞬間があって」。45坪と路面店も含めても最大のスペースだが、「渋谷109ならではのコラボレーションなどのおかげで新規顧客も広がった。いわゆる新宿店とのカニバリもなく、そのおかげもあって23年11月期は過去最高の売上になりそうです」(鈴木COO)。

では、なぜ休止なのか。「『エピヌ』のことは本当に全てを2人で決断してきました。小さなことから大きなことまで、決断、決断、決断の毎日でした。1つのデザインだって『あやまい』が判断しなければ絶対に『エピヌ』ではない。それがこの8年間いつの時期の規模感であっても、心底『エピヌ』にとっては当たり前のことだと思ってやってきました』と山本CEOはインスタグラムの投稿で明かしている。そうして悩みに悩んだ末に出した結論が、一旦の「ブランド休止」だった。「もちろん他のやり方があることは分かっていますし、実際、実はこれまでたくさんの買収の話もいただきました。信じられないような金額の話もありました。でも、それも2人の中でどうしてもしっくりこなかった。『エピヌ』というブランドが残ったとしても、街中で自分たちだったらやらないような色やデザインの『エピヌ』を見ることは受け入れられなかった。それにやるんだったら、最後の1日まで燃え尽きたい。それに生まれ変わってもマイと一緒に『エピヌ』をやりたいし、ファンの皆さんに愛されてきたエピヌをできるだけ、そのままの形で残しておく。だから1年前に公表した上での休止。これが私たちの結論でした。これしかないと思ったんです」。

今後は?

来月11月17日の名古屋パルコ店のオープンを皮切りに、来年1月に広島パルコ(1月2〜8日)、2月に伊勢丹新宿本店、3月に静岡パルコ(3月20〜26日)、4月に札幌パルコ(4月12〜18日)&福岡パルコ(4月26日〜5月6日)、5月に阪急うめだ本店と、全国での怒涛のポップアップショップをオープンし、全国を巡回する。年内には宝島社からムック本も出版予定だ。「他にもたくさんのコラボレーションも予定しています。鈴木COOは「この1年はまさにフィナーレ。いわば第一幕の最終章です。最後の1日まで全力でファンの皆様に感謝の気持を伝えたい」。

休止後の予定は「正直言って、まだ何も決めていません。というか考えられないです。ただ、ブランド開始から8年、24時間365日のすべての時間をエピヌに注ぎ込んできました。ずっと2人の世界でやってきたので、写真のこと、デザインのこと、経営のこと、すべてをもっとパワーアップさせたい。そのためにもアパレル業界の人脈ももっと広げたいですし、勉強もしたいと思っています」と山本CEO。鈴木COOは「アヤ(山本CEO)は本当に1日も仕事を休んだことがないんですよ。私もアートをきちんと勉強したり、クリエイティブ全般をもっと突き詰めたい。料理が好きなので料理の勉強もしてみたいし、大好きな韓国のために韓国語を勉強したりもしたいです。あ、それに恋もしたいですね(笑)」。「変わらないのは、マイと一緒だということ。2人が結婚して子どもができてそれぞれの家庭ができても一緒に住みたいね、って話してます」(山本CEO)。「家事は私がやっているんで、服が散らかってるとかくだらないことで喧嘩もしますよ。でもずっと一緒にやってきた。だからこれからライフステージが変わっても、生まれ変わってもずっと一緒です」(鈴木COO)。

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