イタリア発の「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」が、旗艦店である表参道店で2023年冬の“モンターニャ・カプセルコレクション”とブランド初のフレグランスを発表した。同店を訪れた俳優の上戸彩と玉木宏は、本拠地ソロメオの自然をほうふつとさせるフレグランスの心地よい香りが漂う空間で、今回の企画のために最新ルックを着こなした。また、同店オープン後初の来日を果たしたルカ・リサンドローニ(Luca Lisandroni)最高経営責任者(CEO)が、ブランドの真髄や表参道店に込める思いを語った。
アイスホワイトに映える
モダンエレガンス
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表参道店は、同ブランドの本拠地であるイタリア・ウンブリア州ソロメオで培われた理想を反映し、「ブルネロ クチネリ」流のホスピタリティーを体現している。通称“カーサ・クチネリ(クチネリの家)”の旗艦店で上戸彩が“モンターニャ・コレクション”から着用したのは、ラグジュアリーなスノーリゾートでのドレスアップスタイルだ。ベージュのダズリングサテンのセットアップは、繊細なスパンコールを総刺しゅうし、上品で華やかなきらめきを演出。その上には、極小ボールチェーンのアイコンディテール“モニーレ”を効かせたピュアホワイトのギャバジンコートを羽織り、クリーンで奥行きのあるニュートラルカラースタイルを完成させた。
一方、23-24年秋冬コレクションからは、ジャズクラブの世界から着想を得た、イベント・ドレッシング風のスタイリングを披露。ドロップ(しずく)型の布地とスパンコールを何層にも重ねた、半袖のブラックのメッシュトップは、職人が一つ一つ手作業で装飾を施した立体的な輝きが魅力だ。スポーティーシックなきらめきをたたえたネット編みのニットポロをレイヤードし、ホリデームードのリラックス感と遊び心が共存する装いを堪能した。
冬の山で過ごす、
エフォートレスなデー&ナイト
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“冬のモンターニャ(山)”をテーマに、気取らないラグジュアリースタイルを提案するカプセルコレクション。玉木宏がまとったのは、ブランドの代名詞である極上カシミヤを用いたジャカードカーディガンだ。ニットの全面には、アンデス地方の伝統柄を幾何学的にアレンジしたモチーフを織り込んだ。コーヒーブラウンの暖かみのあるカラーは、スノーリゾートでのくつろぎのひとときに優しく映える。ホワイトのボタンダウンシャツとソリッドタイをVゾーンに合わせれば、シャレーでのカクテルタイムにもふさわしい。
さらにドレスアップシーンでは、23-24年秋冬コレクションからトラディショナルな“ワン アンド ハーフ”のフォーマルスーツに着替えてイメージチェンジ。シングルとダブルの中間にあたる“1.5ブレスト”仕立てのジャケットは、ボタンを留めても外しても美しく着こなせる。ネイビーとホワイトのワイドチョークストライプのサルトリアパターンを採用したデザインは、タイムレスかつエレガントな中に、大人の余裕を感じさせる。
初のフレグランスは
ソロメオの自然が着想源
ブランド初となるフレグランス“ブルネロ クチネリ プール ファム”と“ブルネロ クチネリ プール オム”の2種を、アジア圏での発売に先駆けて披露した。本拠地ソロメオの自然や文化にインスパイアされた香りは、ラグジュアリーパフュームの製造販売を行うユーロイタリアとのコラボレーションによるもの。調香師ダフネ・ブジェ(Daphne Bugey)が手掛けた女性用の“プール ファム”は、みずみずしいシンプルさを基調に、甘い栗やかんきつ類、ピンクペッパー、プレステージウッドなどのノートが特徴だ。
調香師オリヴィエ・クレスプ(Olivier Cresp)による男性用の“プール オム”は、村の風景を織りなす糸杉のエッセンスが、スパイシーなジュニパー、アンジェリカ、ブラックペッパー、クラリセージ、ジンジャーなどの洗練された成分と調和する。丁寧に作り上げたメード・イン・イタリーのフレグランスは、柔らかなカシミヤに包まれるようなエレガントな香りのベールをさりげなくまとわせてくれる。
“人間主義的資本主義”を貫き
唯一無二なブランドに
WWDJAPAN(以下、WWD):現職就任以降、初の来日になる。改めて、日本最大級の“カーサ・クチネリ”である表参道店はどのような店なのか?
ルカ・リサンドローニCEO(以下、リサンドローニ):各国の店舗デザインに関しては、画一的ではなく、それぞれの国の伝統や文化との調和を大切にしている。われわれが“カーサ・クチネリ”と呼ぶ店舗を通じて発信したいのは、日本語でいう“一期一会な体験”だ。良い商品を買っていただくことはもちろんだが、それ以上に店で心地よい時間を過ごしながら、「ブルネロ クチネリ」流のホスピタリティーを感じ、すてきな思い出を作ってもらいたい。屋外にソファーを配したテラスを設けたり、地下に広々とした学びのアートスペースを作ったりしたのも、そうした理由だ。
WWD:CEOとして、ブランドが提唱する人間性を重視した経営哲学“人間主義的資本主義”をどう解釈している?
リサンドローニ:私たちは1982年にソロメオ村の朽ち果てた古城を買い取って修復し、本社をこの地に移転した。村の古い工場を改築し、今や1000人近い雇用を実現している。村には職人のための学校も設立して、さらに劇場や図書館、公園なども作り、村の人々の文化的で豊かな暮らしの基盤を生み出してきた。「ブルネロ クチネリ」の経営哲学が唯一無二なのは、“資本主義”と“人間らしいサステナビリティ”の考え方が両立している点だ。
創業者ブルネロ・クチネリが尊敬している哲学者イマヌエル・カント(Immanuel Kant)の名言に、「汝自身または他人に対しても、人格を手段としてだけでなく尊い目的として尊重し行動せよ」という一説があり、その思想がブランドの基盤となっている。つまり、他人の置かれた環境を自分ごととして考え、対処すること。そして“人間の尊厳”を第一に掲げ、働く全ての人を幸福にするという考えだ。サステナビリティに関しては、自然環境保護などの狭い意味ではなく、創業当初からもっと広い定義で捉えている。人々を苦しめず、森羅万象を侵害せず、ネガティブな影響を最小限に抑え、倫理と尊厳を尊重しながら利益を生むこと——それこそが“人間主義的資本主義”だ。
WWD : 地域に基づいたビジネスの重要性が世界中で見直される中、創業当初から地域密着型の経営を貫く「ブルネロ クチネリ」にとって、ソロメオで培った価値観とは?
リサンドローニ:「ブルネロ クチネリ」は最上級のラグジュアリーブランドでありながら、人の手の温もりや包み込まれるような愛に溢れ、独自のポジションを築いているブランドだ。ソロメオを訪れれば、その独自性を実感してもらえると思う。中世の雰囲気を残すソロメオで培われたアイデンティティーは世代を超え、これからの未来もずっと変わらないと確信している。だからこそ何かプロジェクトを企画するときは、目先にとらわれず、100年、200年先までの長いビジョンを持つことを大切にしている。
WWD : ブランド初のフレグランスについて聞かせてほしい。
リサンドローニ:極上素材に触れたときの心地良い感覚を大事にするブランドなので、五感を豊かにするアイテムとしてフレグランスを作りたいと思っていた。ソロメオの自然や文化にインスパイアされた初の香水は、アグレッシブ過ぎず、さりげなく上品にまとえる香りが特徴だ。柔らかなカシミヤにそっと包み込まれる、そんなイメージをぜひ感じてほしい。
PHOTOS : IBUKI KOBAYASHI
STYLING : KEIKO SASAKI(AGENCE HIRATA)[for AYA UETO], KENTARO UENO(KEN OFFICE)[for HIROSHI TAMAKI]
HAIR & MAKEUP : YUKARI HAYASHI[for AYA UETO], YUKIYA WATABE(riLLa)[for HIROSHI TAMAKI]
TEXT : MAKIKO AWATA
ブルネロ クチネリ ジャパン
03-5276-8300