マッシュスタイルラボは11月30日、米国の教育番組「セサミストリート」の世界で唯一のオフィシャルストア「セサミストリートマーケット」の1号店を池袋のサンシャインシティにオープンする。同番組を制作する米国の非営利団体セサミワークショップとのパートナーシップのもとで運営する。
28日、オープンに先駆けて報道陣向けの内覧会が開かれた。330平方メートルの店内は、物販、カフェ、ワークショップの3コーナーで構成。30代以上であれば、朝はNHKの「セサミ」を見て育ったという人も多いはず。32歳で事実“セサミ育ち”の記者を含め、そんな人たちにはきっとたまらない「セサミ」の世界観が詰まった店内をレポートする。
ぬいぐるみはさすがの再現度
注目はキャラモチーフのセーター
店の右半分は物販エリア。米ニューヨークに実在するセサミストリートの街並みをイメージした内装に、「エルモ」「クッキーモンスター」「ビッグバード」といったおなじみのキャラクターのアパレル、雑貨など約200点が並ぶ。「ジェラート ピケ」でぬいぐるみを作っているマッシュだから、ぬいぐるみはまるで動き出しそうな再現度とクオリティー。小学生のころの朝、寝ぼけ眼で朝食を食べながら番組を見ていた、あの日の記憶が蘇ってくる。
マッシュのお家芸であるアパレルも推したい。記者が特に気に入ったのはキャラクターモチーフのジャカードセーター(7400円)。ミドルゲージの適度に目の詰まったニットが上品で、味わいのあるキャラクター柄が抜け感を出している。左袖の2本のラインもおしゃれなアクセント。本人に直接聞いたわけではないが、近藤広幸社長もお気に入りらしい。オープンの目玉になりそうなのは「ジェラート ピケ」とのコラボ商品。ビジュアルは渡辺直美をニューヨークで撮り下ろした。
ドーナツは本格派の味わい
「3強」よりもニッチキャラを食せ!?
店内を歩いていると、何やらいい匂いが漂ってきた。中央のカウンターには、名物のドーナツが並んでいる。キャラクターをモチーフにした全5種(各520円)を試食した。赤い“エルモ”はラズベリー味、黄色の“ビッグバード”はパッションフルーツ&マンゴー味、青い“クッキーモンスター”は、なぜかプレーンなシュガー味だ。
この「3強」に比べると影に隠れた存在だが、 “オスカー”と “アビー”のドーナツもある。“アビー”は「妖精の国出身の自信家でクリエイティブな女の子」(公式ホームページより)といい、正直幼いころの記憶にない。オスカーにいたっては、ゴミバケツから顔を出してこっちを見ている謎キャラ(失礼)である。でも“アビー”は2種のチョコが奥深い味わいで、“オスカー”は抹茶味がほろ苦くてクセになる。正直、この2つが一番おいしかった。
ドーナツ自体は超スイートだが、甘酸っぱかったり、ほろ苦かったりするトッピングのおかげで、最後まで飽きずに食べられる。ボリュームもたっぷりで、女性なら1個でお腹いっぱいになる人もいそう。鮮やかな色出しは、人工着色料によるものではなくフルーツ由来といい、子どもに食べさせるのにも安心だ。
話題性は未知数も
「学びのある場を育てる」
「セサミストリートマーケット」が1号店を出したサンシャインシティは、超高層ビル「サンシャイン60」を核とした複合施設。値ごろなアパレルやホビーショップがそろう専門店街、ホテルや水族館などのテーマパークまで備えた、池袋の象徴だ。ターミナル駅のJR池袋駅からは徒歩約10分とやや距離があるが、休日はベビーカーを引いた客やカップルでにぎわう。「セサミ」の1号店の出店地に選んだのは、こうした家族連れや若年層を取り込む狙いがある。
では実際、「セサミ」への関心度はどうか。番組がNHKで放送していたのが、5年間の休止を挟んで1972年から2003年まで。放送が終了して20年が経過した今、10〜20代の若者や子どもたちからの認知度は、そこまで高くないだろう。「ジェラート ピケ」と「ポケモンスリープ」のコラボのような、SNSでの爆発的な話題性やヒットが生み出せるかは未知数だ。
ただマッシュの視座は単なる“キャラクターショップ”を作るにとどまらない。ワークショップエリアでは来年から順次、「子どもだけでなく、老若男女が楽しめて新しい学びや発見があるイベント」(巻島彬子プロデューサー)の実施を計画する。「セサミ」には、さまざまな人種や病気を抱えている設定のキャラがいて、多様な個性を尊重し共生するという考えが根底にある。巻島プロデューサーは「楽しんで終わりではなく、『セサミ』の核となる多様性やインクルージョンといった考え方を伝える場をじっくり作っていきたい」と話す。