「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は11月30日、香港でファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)によるメンズの2024年プレ・フォール・コレクションを発表した。
ランウエイショーに先立ってファレルは、「(デビュー・コレクションとなった)2024年春夏とは、何もかもが違う。変わらないのは、ダンディー」と語った。振り返ればパリで発表した23-24年秋冬コレクションは、前任のヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)をリスペクトしつつも、スーツを中心とするセットアップのスタイル提案にシフト。シルエットは、オーバーサイズからストレートに。素材は、ストリートライクな化繊からシルクやウールなど艶やかに。足元は、スニーカーからローファーに。そしてアクセサリーは、チェーンからパールへと、「ルイ・ヴィトン」のスタイルはあらゆる面において洗練の度合いを増し、ファレルが言う「ダンディー」なムードを垣間見せた。
続く24年プレフォール・コレクションは、そんなダンディーなムードがさらに強くなったと言えるだろう。
曲線的なウエストのジャケットと
フレアパンツでダンディーなエレガント
ファーストルックは、「LV」のロゴがうっすらと見える、純白のダブルのセットアップ。ピークドラペルのジャケットは若干ゆったりとしたシルエットながらウエスト周りは大きくくびれ、パンツはセンタープリーツをかけたフレア。白いシャツにブラックタイでタイドアップして、ブラックベレーと南京錠をあしらったローファーを合わせた。抱えたのは、パステルカラーのダミエ柄をのせた“キーポル”だ。カジュアルなデニム素材を使ったセットアップも、曲線的なウエストのジャケットとフレアパンツでエレガント。そのスタイルは、ヴァージル由来のクリエイティビティが未だ顕著だった23-24年秋冬コレクションに身を包んだゲストのそれとは一線を画し、新時代の到来を再び印象付けた。
ランウエイショーの舞台に香港を選んだことについて、ファレルは「世界的な金融の街はここ数年艱難辛苦を味わい、今まさに復活の時を迎えている。パチンコで言えば、ボールをギリギリまで手元に引き寄せ、今まさに勢いよく飛び出そうとしている瞬間のような状況だから」と話した。そして、そんな世界的な金融マンが香港からハワイへ向かう旅を思い描いたという。その言葉通り、ダブルのスーツにトランクや大きな“キーポル”を抱えた男性は時折、セーラーカラーのシャツに身を包んだり、航海士のような帽子を被ったり、巻き貝を描いたエンブレム付きのネイビーニットを着こなしたりとマリンスタイルを交差。色とりどりのカラーストーンをつなげたネックレスやローファーのレザーをくり抜いたようなグルカシューズ、スリムなボディバッグ、マリンストライプのセットアップなどは、長い航海を終えてハワイに到着するのが待ちきれない男性のドキドキやワクワクを感じさせる。
ハワイに到着した男性の
少年っぽい遊び心が大爆発
そしてハワイに到着すると、男性の喜びは一気に爆発。金融マンらしいスーツを脱ぎ去り、束の間のバカンスを謳歌するかのように極彩色のトロピカルスタイルに着替えたようだ。パンツはフレアから、スパンコールのハイビスカスが咲き乱れるショーツに。レザーとオーストリッチを組み合わせたボンバーズにも花々が咲き、スエードで作ったアロハシャツやレザーのTシャツには、同じ色のレザーで作ったハイビスカスをアップリケする。終盤は、極彩色で描いたハワイの夕焼けを乗せたセットアップや、シャツにTシャツ、ショートパンツの3ピース。“キーポル”もトロピカル仕様だ。
この終盤のスタイルが象徴する、遊び心にあふれた“少年っぽさ”は徹頭徹尾、ダンディズムとうまく融合し、スタイルを現代的でリアリティのあるものに押し上げた。ベレーや厚底のコンバットブーツ、相変わらず少し弛ませて履くソックス、ネックレスとコーディネートしたピアス、サングラス、そしてミニバッグなどは、引き続きポップで高揚感に溢れている。
ヴィクトリアン・ハーバーを臨む会場には、波が繰り返し押し寄せるデジタルサイネージを配し、砂を敷き詰めてハワイアンなムードを高めた。そしてフィナーレには、ドローンが隊列を組んで、船を描き、「ルイ・ヴィトン」のモノグラムに変わって、最後は「LV」のイニシャルを組み込んだ「LoVers」という言葉を空から発信する。童心を忘れない男性のストーリーとサプライズにあふれた演出で、セカンドシーズンも見るものの心を掴んだファレル・ウィリアムス。名プロデューサーの才能をいかんなく発揮した。