仏パリ発ジュエラー「ショーメ(CHAUMET)」は11月、東京都内でハイジュエリーの発表会を開催した。「ショーメのハイジュエリーと、若き匠の作品の対話」と題された同イベントでは、陶芸家の奈良祐希、染色家の吉岡更紗、サウンドアーティストの細井美裕の3人の作品とハイジュエリーを対比させて紹介。「ショーメ」の卓越したクラフツマンシップと日本の美を新しい解釈で表現する若い作家の作品との対話を試みた。同イベントのために来日したジャンマルク・マンスヴェルト(Jean Marc Mansvelt)ショーメ最高責任者(CEO)に話を聞いた。
WWD:今回2回目の「ショーメ」のハイジュエリーと日本の職人技の展示だが?
ジャンマルク・マンスヴェルト=ショーメCEO(以下、マンスヴェルト):ジュエリーとアートの対話の取り組みは何年も前から構想を立てていた。前回2021年には、コロナ禍で来日できなかったが、今回は展示を楽しみに来日した。
WWD:新作ハイジュエリーの見どころは?
マンスヴェルト:“ジャルダン ド ショーメ”だ。「ショーメ」にとって自然はとても大切。約250年にわたり、植物をテーマにジュエリーを省察してきた。過去のテーマを違った視点でハイジュエリーに昇華している。小麦の穂やチューリップ、アイリス、シダなど多くの植物を現代的に解釈。木の幹の内側なども表現している。
WWD:ハイジュエリーを日本の職人技と対比させた理由と目的は?
マンスヴェルト:新しい視点でハイジュエリーを見てほしいから。ジュエリーだけの紹介というよりは、視点を広げて、ジュエリーに使用されている最高の石と工芸の技を対比させて軽やかに見せている。例えば、ハイジュエリーと陶芸には、素材を掌握してものをつくるという点、バランス、動き、など共通点がある。また、ジュエリーの輝きと音を対比させることで、違った次元でジュエリーを見ることができる。視点を広げてジュエリーを見ると、より豊かな発見がある。枠から出して他の分野と語らうことで、物事に奥行きが出る。
若い層にもリーチしながら、より高級なブランドに
WWD:日本で、CSR・文化事業ディレクターというポジションを新設したが?
マンスヴェルト:日本人の考え方をより理解することが重要だと考えるから。今年、フランスで、文化的プロジェクトに携わる女性を支援するアワードをスタートした。日本でもこのアワードを創設し、女性の文化的活動をサポートしていきたい。
WWD:コロナを経て現在の商況は?
マンスヴェルト:コロナという大変な時期を経てジュエリーは今まで以上に大切なものになった。ジュエリーは、いろいろな時代を生き延びてきたもの。その大切さがわかった。ジュエリーは世代から世代へ継承されるものであり、人と人とのつながりを表すものだ。古くなるものではなく、永遠に残るもの。それがジュエリーだ。アイコンの“ジョゼフィーヌ”“リアン”“ビーマイラブ”どれも好調だ。シューズやバッグの代わりにジュエリーを身につける人が増えていて、手に届きやすい価格帯が伸びている。ハイジュエリーは、絵や彫刻のように投資の意味があるので需要が高い。ビジネスはとても好調で、在庫が足りなくなることもあるほど。でも、たまにはいいと思う。なぜなら、待つ喜びがあるから。やっと手に入れたという価値を感じてもらえるはずだ。
WWD:今年ギンザ シックスに3つ目の店舗をオープンした理由と目的は?
マンスヴェルト:ギンザ シックスの客層は、ファッション好きな若い人が多い。そういう層に「ショーメ」を知ってもらいたい。年齢を重ねた人々には「ショーメ」は、歴史が長く品格があり、避けて通れないブランドとして知られている。より若い世代にも「ショーメ」を知ってもらい、着けてもらいたい。だから、入りやすいギンザ シックスに出店した。三越銀座店内の店舗は、百貨店の顧客が来店するし、本店は歴史的に重要な店舗で、日本人も外国人旅行客も来店する。週末には、多くの来店があるので、短距離に3店舗構えることで、ちゃんとおもてなしできるようにしている。よりセレクティブな出店をすることで、ジュエリーが中心の、より高級なメゾンであり続けたい。