ファッション

リピーターが6〜7割のジュエリー「ロロ」デザイナーに聞く”より良いものを届ける”ビジネス 

菅原 美裕(すがわら・みひろ) /「ロロ」「イチイチイチナナ」ディレクター兼デザイナー プロフィール

和歌山県生まれ。都内彫金学校で彫金を学ぶ。ヒコみづのジュエリーCADコース卒業。アパレル商社勤務後、2016年「ロロ」を立ち上げる。ジュエリーを身につけることで得られる自信や勇気、安心感や安らぎをコンセプトにデザインは独学で行う。D2Cアパレルブランド「イナフ」のディレクションも手掛ける

ジュエリーブランド「ロロ(LORO)」の東京・青山店が11月、改装オープンした。同ブランドは2016年、菅原美裕が設立。“朝起きてすぐ、身につけたくなるジュエリー”をコンセプトに、有機的なフォームと安心感のある着け心地のメード・イン・ジャパンのジュエリーを提供している。19年には、ブライダル中心のライン「イチイチイチナナ(1117)」をスタートし、20年には青山に旗艦店を出店。卸はせず、直営店やポップアップ、ECで販売を続け、知る人ぞ知るジュエリーブランドに成長した。店舗のリニューアルは、空間デザイナーの二俣公一が担当。菅原の美意識を反映したミニマルなギャラリーのような空間になっている。彼女に、クリエイションやビジネスについて聞いた。

着け心地や肌なじみにこだわりギリギリまで調整

菅原は、「自分でいいと思うものを届けたいと思いブランドを立ち上げた」と語る。アパレル商社で働いていたときに、「ウソをつかずに働きたい」という思いがあり、それが独立のきっかけになった。「母がジュエリー好きで、自分がつけたいと思うものを自分でつくろうと、彫金を学んだ」。しなやかな曲線やなめらかな輝きのジュエリーは、感覚的にデザインすることが多い。彫金を学んだということもあり、ストレスのない着け心地や肌馴染みにもこだわる。「デッサンをして、原型を微調整する。自分でサンプルを解体して組み立てることもある。数ミリの違いが不快感につながることもあるので、0.01ミリにこだわる。ファッション性と着け心地がバランスよくおさまるようギリギリまで調整する」。

安心感を与える「ロロ」と背中を押す「1117」

菅原は森や海に囲まれた和歌山県で育った。彼女のクリエイションには、幼少期の体験や情景が反映されている。「竹藪や霜のおりた土などから着想を得ることが多い。ファッション性がありながらも、故郷につながるような安心感を大切にしている」。ベストセラーは、リングの内側の丸玉がポイントのダブルフィンガーで着用する“シェイプ リング”。「自分から丸玉が見えるとどこか安心する」と菅原。滑らかで彫刻のような造形美を持つリングは、思わず触ってみたくなる。売り上げの約半分を占める「ロロ」のアイコンだ。

コロナ禍には、新たに「1117」をスタートした。「ロロ」はシルバー中心だが、「1117」は、プラチナや18金などを使用したブライダル中心の受注ライン。菅原は、「ブランド名は、エンジェルナンバーからで、“背中を押してあげたい”という気持ちを込めている」と話す。「ブライダルラインをつくったのは、ジュエリーブランドを続けていこうという決意でもあり、自分の背中を押す意味もあった」。

ジュエリーは、“お守り”や“ラッキーチャーム”といった意味を持たせたものが多いが、菅原のクリエイションには、彼女自身の内面から湧き出た“安心感”や“勇気”が反映されている。しかも、ストレスフリーな着け心地。だから、コンセプトが“朝起きてすぐ、着けたくなるジュエリー”なのだろう。有機的なフォームといい、質感といい、“触ってみたい”と思わせる安らぎを感じるジュエリーだ。

できる範囲で欲しい人に届くジュエリー

「つくれる数しかつくらない。なぜなら、それ以上つくったときのクオリティーに疑問があるから。たくさんつくって売るよりは、よりいいものを届けたい」。仕上がったジュエリーは日々、スタッフがSNSで発信し、徐々にブランドの認知を広げてきた。月2回ECで新作を発売するが、即完売することがほとんどだ。ジュエリーの制作は分業で、長年経験を積んだベテランの職人一人一人に依頼している。「着けたら分かる」というのが、菅原のクリエイションの特徴だ。「磨きを徹底的にして、何度も検品を行う。本来、SNS向きのジュエリーではない」。彼女の着け心地と品質へのこだわりは相当なものだ。「長く着けて欲しい」という気持ちがあるため、いつ購入したものでも修理する。全体の6〜7割がリピーターで毎月リングを購入する人もいれば、コレクションする顧客もいる。“一度着けると手放せない”ジュエリーとして着実にファンを増やしている。「欲しい人に届けることが大切。できる範囲で、少しずつビジネスを広げていきたい」。

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