ファッション

ノルウェー発ジュエリー「トムウッド」創業者に聞くブランド誕生秘話と成功のワケ

ノルウェー発ジュエリー「トムウッド(TOM WOOD)」の旗艦店が11月25日、東京・青山にオープンした。2フロア約320㎡のノルウェー国外初の同店は、所どころに和の要素を盛り込んだミニマルなデザイン。2階はアパートメントと呼ばれる招待制のスペースになっており、イベントなどを開催する予定だ。オープニングのために来日した「トムウッド」のクリエイティブ・デザイナー兼創業者のモナ・ヤンセンとモーテン・イサクセン最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。

ブランドは私のアルターエゴ

WWD:ブランド名の「トムウッド」はどこから?

モナ・ヤンセン「トムウッド」クリエイティブ・デザイナー兼創業者(以下、ヤンセン):ブランドは、私のアルターエゴ、作家に例えるとペンネーム的なものだ。トムは世界中で知られている男性の名前の代表格。ウッドは、ノルウェーの自然の中の木から取った。私自身はあまり表に出たくないし、匿名性を持たせることでユニセックスなブランドとして余白を持たせたかった。女性誌の編集者に「アメリカのブランドだと思った」と驚かれたことがある。

WWD:ジュエリーブランドを立ち上げようと思ったきっかけは?

ヤンセン:それは偶然だった。モーテンが私にプロポーズしたときに、指輪を探していたのだけど、伝統的な結婚指輪はほしくなかった。モーテンが持っていたシグネットリングのサイズを変えて、日付を刻印したのが始まり。私にとって初めて大切に気にかけたジュエリーだった。それがブランドの始まりだ。成功するとは思わなかったけど、独立することは、自分自身へのチャレンジでもあり、喜びでもあった。旅に出る余裕が出て、市場を見て回るうちに、「トムウッド」のようなブランドがないことに気付いた。

モーテン・イサクセン=トムウッドCEO(以下、イサクセン):私は約15年間クリエイティブエージェンシーで他のブランドのブランディングを手掛けていた。モナが独立した直後に私も加わり、「トムウッド」はファミリービジネスになった。以前は、クライアント頼りの仕事だったが、ブランドを持ってからは、目的を持って活動ができる。当時、市場にフェミニンなジュエリーはたくさんあったが、ユニセックスなジュエリーはなかった。シグネットリングは、市場の流れとは全く反対のもの。だが、バイヤーたちがシグネットリングにすぐ反応したのは驚きだった。

ジェンダーレスジュエリーのパイオニア

WWD:ブランド哲学は?

イサクセン:インターナショナルなジュエリーブランドとして業界で責任を持つこと。シンプルだが完璧でタイムレスなデザインで、代々受け継がれるジュエリー。派手じゃなくシンプルなので、年代問わずさまざまな人が着けることができる。

ヤンセン:ジェンダーレスであること。性別を全く考えなかったから成功した。ジェンダーレスなジュエリーのパイオニアだったといえる。シグネットリングは男性だけのものではない。

WWD:デザインのインスピレーション源は?

ヤンセン:建築や彫刻、自然などから。長く着けられるジュエリーをつくることができるのはとても満足いくこと。また、エシカルかつ持続可能性な方法で生産することが大切だと思う。それにより環境負荷を減らせるから。ジュエリーに使用するシルバーやゴールドは、ほぼ100%リサイクルされたものだ。

イサクセン:われわれは、企業活動を通して、真剣に環境やダイバーシティー、平等などの問題に取り組んでいる。会社には多くの女性のディレクターがいるし、自社だけでなく取引先の工場でも、国籍、文化、宗教、性別の平等性を重視している。2年前から二酸化炭素排出量を測り削減に務めているし、サプライチェーンも開示してトレーサブルにしている。それは、われわれの責任であり、業界の人々をインスパイアしていきたいと思う。

成長よりも選ばれるブランドに

WWD:現在何カ国、何店舗で販売しているか?日本国内では?

ヤンセン:50~60カ国、約300店舗で販売している。日本国内では、90店舗程度。

WWD:日本における戦略は?

ヤンセン:ビジネス拡大は重要ではない。たくさんブランドがあるから、正しい方法で重要なブランドとして選ばれる存在になりたい。旗艦店ができたので、ブランドの世界観を体感してもらえるはず。

WWD:今後、どのようにブランドを成長させたいか?

イサクセン:今まで通り、「トムウッド」らしく活動していく。実験を恐れることなく、思慮深く、私たちがすべきことにフォーカスしていく。成長はいいことだが、堅実に高品質なものをつくり続けることで、興味を持ってもらえるブランドにしたい。

ヤンセン:「トムウッド」がどのようになるのか次の10年も楽しみ。素晴らしい10年にしたい。

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