韓国の大手EC企業クーパン(COUPANG)は12月18日、高級ECのファーフェッチ(FARFETCH)の買収を発表した。ファーフェッチは、15日の段階で経営破綻の瀬戸際にあることが明らかとなっていた。取引の一環として、クーパンは米投資会社グリーンノークス・キャピタル・パートナーズ(GREENOAKS CAPITAL PARTNERS)と提携し、ファーフェッチに対して5億ドル(約710億円)の資金援助を実施する。なお、ファーフェッチのジョゼ・ネヴェス(Jose Neves)創業者は残留するものの、ほかの取締役は全員辞任した。
ファーフェッチは8月、「カルティエ(CARTIER)」「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)」「クロエ(CHLOE)」などを擁するコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)が擁するラグジュアリーEC大手のユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP以下、YNAP)の株式の47.5%を取得することに合意した。この取引には、ファーフェッチの企業向けECプラットフォームであるファーフェッチ・プラットフォーム・ソリューション(Farfetch Platform Solutions)をリシュモンとYNAPが導入する契約なども含まれている。10月には欧州委員会(European Commission)からの承認も得たが、今回の買収を受け、リシュモンは「合意を破棄する」との声明を発表した。また、リシュモンが保有する、ファーフェッチが20年11月に発行した3億ドル(約426億円)相当の転換社債については、「状況を踏まえると償還されないと考えるのが妥当だろう」としている。
クーパンの登場により、ファーフェッチは事業継続が可能となったが、同社の傘下ブランドの今後について現時点では明らかになっていない。それには、英セレクトショップ、ブラウンズ(BROWNS)のほか、故ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」などを擁するニューガーズグループ(NEW GUARDS GROUP)、スニーカーのリセールサイト「スタジアム・グッズ(STADIUM GOODS)」などが含まれている。
クーパンは韓国発のeコマース企業で、“韓国のアマゾン”と呼ばれている。米シアトルに本社を置き、米国、韓国、アジア各地にオフィスを構えている。従業員数は約6万3000人。2023年1〜9月期の売上高は前年同期比16.8%増の178億ドル(約2兆5276億円)で、純損益は1億9400万ドル(約275億円)の赤字から黒字化し、3億2700万ドル(約464億円)だった。ニューヨーク証券取引所に上場しており、ティッカーは「CPNG」。創業者のボム・キム(Bom Kim)最高経営責任者(CEO)は、会社の議決権の76%を握っている。ファーフェッチとの取引が公表された後、株価は5.1%下落して16.15ドル(約2293円)となり、同社の時価総額は289億ドル(約4兆1038億円)となった。
同社決算資料によると、「クーパン」のアクティブユーザーは2000万人。韓国語サイトで、家電や生活雑貨、消費財、衣類、食品などを扱っている。