そして「ウブロ」のCEOはこれまで通りリカルド・グアダルーペ(Ricardo Guadalupe)が続投。「ゼニス」のCEOにはリシュモンで「パネライ(PANERAI)」に在籍していたブノワ・ド・クレール(Benoit de Clerck)が新たに就任。そしてフレデリックCEOの後任となる「タグ・ホイヤー」のCEOには、「ゼニス」を大きく成長させたジュリアン・トルナーレ(Julien Tornare)が就任する。フレデリックCEOは、時計業界で百戦錬磨の彼らに支えられつつも率いる立場となった。「ウブロ」は1980年創業と比較的新しいが、かつて今回のフレデリックCEOと同じポジションでLVMHの時計ビジネスを発展させたカリスマ経営者ジャン‐クロード・ビバー(Jean Claude Biver)の手でスポーツウオッチを中心に、時計愛好家も注目する複雑時計までを自社で開発・製造するに至った機械式時計ブランドだ。そして「ゼニス」は1865年創業、「タグ・ホイヤー」は1860年創業と、どちらもクロノグラフを中心に150年以上の歴史を持っている。
これは意外ではなく、予定通りの人事だと筆者は考えている。時計業界では昨春「フレデリックがタグ・ホイヤーのCEOからブルガリ(BVLGARI)のCEOにスライドする」という噂が流れていた。だが彼は7月、大手経済メディアのインタビューでこの噂をやんわりと否定している。筆者はその頃から、この人事を予測していた。
「タグ・ホイヤー」の手法を
「ウブロ」「ゼニス」にも?
5人の子息の中でもただひとり、父親と同じエコール・ポリテクニーク卒業というもっとも輝かしい学歴を持ち、テニスもピアノもトップクラスの腕前を持つ29歳のフレデリックCEOの、ここ3年間の「タグ・ホイヤー」CEOとしての実績は申し分ない。複雑になっていたコレクションを整理するなど、コスト削減を推進。「ポルシェ」とのコラボレーションを仕掛け、スマートウオッチなどデジタル技術を活用した製品開発やキャンペーンを展開。新型コロナ禍がもたらした期待以上の好景気もあるが、2023年の売上高は前年比約10%増、史上最高の10億ユーロ(約1560億円)を達成している。この手腕を3ブランド全体でも発揮して、しばらくはこの立場で活躍するのではないか?目下のミッションは、この時計専業ブランドをできるだけ発展させ、コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)やスウォッチ グループ(SWATCH GROUP0)に迫る存在にすることだろう。
「ブルガリ」や「ティファニー」含む
将来は、時計・宝飾部門のトップに?
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