ビジネス
連載 小島健輔リポート

ファミマの「コンビニエンスウェア」はジンクスを超えるのか【小島健輔リポート】

有料会員限定記事

ファッション業界のご意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。ファミリーマートによる衣料品ブランド「コンビニエンスウェア」が話題だ。コンビニでの衣料品購入といえば、急な泊まりや雨で下着や靴下などの着替えを求める急場しのぎがほとんどと思われてきた。一方、「コンビニエンスウェア」は洋服店と同じような感覚での購入を促す。新しいニーズのポテンシャルを分析する。

ファミリーマートの「コンビニエンスウェア(CONVENIENCE WEAR)」が注目されているが、果たして「食品のそばで衣料品は売れない」というジンクスを超えられるのだろうか。GMS(総合量販店)衣料品の衰退が止まらない中、さらに客数の限られるコンビニエンスストアで衣料品の購買慣習は定着するのだろうか。

ファミマの「コンビニエンスウェア」とは

「コンビニエンスウェア」は2021年3月に立ち上げられて全国のファミマ約1万6500店に広がり、昨年11月30日には初のファッションショーも開催し、12月5日から麻布台ヒルズ店(タワープラザの4階)限定でアウター商品も販売している。「ファセッタズム(FACETASM)」の落合宏理デザイナーと取り組んだオシャレなイメージもともかく、ワンラック展開から始めて2.5ラック(売場の7%ほど)に拡大したのだから、コンビニの衣料品としては例外的な成功と言ってよいだろう。

旧セゾングループ発祥という縁もあってファミリーマートは19年まで(20年に伊藤忠商事がファミリーマートをTOBで完全子会社化)「無印良品」の衣料・雑貨も手掛けていたが、衣料品はソックスや下着などせいぜいワンラックに留まっていたし、ナチュラル&エシカルな「無印良品」とモダンな機能性の「コンビニエンスウェア」とは嗜好が大きく異なるから、ゼロからニーズを開拓したのと大差ない。

「毎日着たくなる遊び心あるデザインと機能を低価格で。定番品こそジェンダーレス。サステナビリティは標準装備。」とうたっているから、今時のライフスタイルとソーシャルマインドに向き合っており、下着類は旭化成の柔らかい環境対応機能素材「ペアクール」で吸放湿、吸水速乾、抗菌防臭機能を備えている。カラーは黒、白を基本にファミマカラーのグリーンとブルーやフルーツカラーがアクセントされており、くっきりさわやかな印象の高彩度トーン・イン・トーン配色は、カナダの「ジョーフレッシュ(JOE FRESH)」とも共通して「生鮮食品」とも違和感がない。

標準で2.5ラックを構成する品目のラインナップは「ソックス」が最多で子供用も1型あり、「タオル」はハンカチとフェイスタオル中心でバスタオルは1品目のみ。男女の「肌着」は「スキンタンクトップ」「キャミソール」「インナーT」「ボクサーパンツ」「トランクス」が各1型そろうが、女性用は黒とベージュ、男性用は黒と白、トランクスはサックスのみとソックスのようなカラー展開はなく、ジェンダーレスでもない。「Tシャツ」は白・黒、「スエット」「レインパーカ/ポンチョ」は黒のみと、アウターは品目も色も限られる。応急アイテムとしてコンビニニーズの高いレインパーカ/ポンチョはカラー展開があってもよかったのではないか。いずれも透明のビニールやセロファンのパックに入れてフック陳列されており、標準の「棚割り」を基本に各店舗がアレンジしてフェイシング管理していると思われる。

麻布台ヒルズ店ではデニムのジャケットやパンツ(紺とキャメル)、セーターやカーデガン(赤とキャメル)、フライトジャケット(黒)がハンガー陳列されていたが、これらは同店限定商品で、通常のファミリーマートで展開されるわけではない。コンビニには試着室もなく、物流やフェイシング管理を考えれば、今後もパッケージ商品に限られるのではないか。

「低価格」とうたってはいるが、各アイテムに付けられた価格は「ユニクロ」プライスであって「コンビニエンス」プライスという印象はない。ワンクラス上の「推し」グッズ価格も目立つ麻布台ヒルズ店限定アイテムは別としても、均一価格店や「バラエティストア」のプライスを期待した向きには肩透かしの感があるのではないか。

主力のソックスの税込429円(以下、全て税込、子供用は2足セットで858円)は「ユニクロ」プライスだし、タオルハンカチも600円/800円と実用品価格ではない。スキンタンクトップ/キャミソールは1200円、ショーツ720円、ボクサーパンツ990円、トランクス720円、Tシャツ1200円、スエットトレーナー2990円、スエットパーカ3990円、スエットパンツ2990円、レインポンチョ2189円、撥水パーカ4389円と、おおむね「ユニクロ」プライスで、「コンビニエンス」プライスとは言い難い。「コンビニでファッションを買う文化を作る」と構想しているから、応急対応のコンビニアイテムというより「ファミマ」推しのファングッズという性格もあるのかもしれない。高単価・高粗利益率の衣料品による客単価と粗利益率のかさ上げというカテゴリーミックスの思惑も見え隠れする。

この続きを読むには…
残り3346⽂字, 画像9枚
この記事は、有料会員限定記事です。
紙版を定期購読中の方も閲覧することができます。
定期購読についてはこちらからご確認ください。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2025年春夏ウィメンズリアルトレンド特集 もっと軽やかに、華やかに【WWDJAPAN BEAUTY付録:2024年下半期ベストコスメ発表】

百貨店、ファッションビルブランド、セレクトショップの2025年春夏の打ち出しが出そろった。ここ数年はベーシック回帰の流れが強かった国内リアルクローズ市場は、海外ランウエイを席巻した「ボーホー×ロマンチック」なムードに呼応し、今季は一気に華やかさを取り戻しそうな気配です。ただ、例年ますます厳しさを増す夏の暑さの中で、商品企画やMDの見直しも急務となっています。

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。