「フェンディ(FENDI)」はミラノ・ファッション・ウイーク期間中の1月13日(現地時間)、2024-25年秋冬コレクションを発表した。会場はおなじみのミラノのオフィス内にあるスペースだが、今季は演出をイタリア人アーティストのニコ・ヴァセラーリ(Nico Vascellari)が手掛けており、上から見ると引き延ばされたFFロゴ状になったスチールベンチを用意。エレクトロ楽曲が刻むビートに乗り、狭く幾何学的なランウエイをモデルが颯爽と歩くスピード感のあるショーを披露した。
一つのルックの中にタウン&カントリーが融合
今季の軸となるのは、街と田園という異なる世界の融合。シルヴィア・フェンディ(Silvia Venturini Fendi)=メンズ&アクセサリー アーティスティック・ディレクターが「タウン&カントリールック」と説明するように、1つのルックの中に2つの要素が混ざり合う。例えば、ファーストルックは上質なレザーで仕立てたオーバーサイズのフィッシャーマンズジャケット。足元は厚手のハイキングソックスと筒の太いウェリントンブーツで牧歌的なムードを強調する。一方、そこにハイゲージのニットポロとセーター、プリーツスカートのようにも見えるリラックスフィットのひざ下丈のショーツを合わせることで、都会的ムードを織り交ぜる。
特筆すべきは、充実したアウターのラインアップだ。カントリーのイメージにつながるオイルドジャケットやローデンコートをはじめ、ボンバージャケット、短めの丈で仕上げたブルゾン、チェスターコート、ピーコート、ダブルフェースのステンカラーコートなどがそろう。シルエットは全体的にゆったり。ブランケットウールやシアリング、シャギーといった温かみのある素材の質感や、秋冬らしい深みのある色合い中心のカラーパレットが心地よさを感じさせる。また、襟にはバッグに見られる“セレリア”のハンドステッチを施したレザーやコーディロイ風に仕上げたスエードを使うなど、ディテールにも「フェンディ」らしい職人技を生かしている。
インナーはクリーンなジャストサイズのニットが中心で、プレーンなハイゲージのポロやカーディガン、タンクトップのレイヤードから、リブ編みのラップカーディガン、「FF」ロゴを編み込んだ光沢のあるケーブルニットポロ、少し起毛感のあるタンクトップまで。一方、パンツはゆったりめ。前述のプリーツデザインを筆頭に股上が極端に長いショートパンツや、タックの代わりにサイドにプリーツを寄せたり、極端に畝の太いコーディロイを用いたりしたフルレングスパンツでユルさを加える。そして、終盤は次第に都会的なテーラリングの要素が強まり、きらめくラメを加えたスタイルで街と田舎を行き交うショーを締め括った。
“枕”のようなバッグやポータブルスピーカーも登場
“ピーカブー”や“バゲット”といったアイコンバッグの再解釈もさることながら、アクセサリーで目を引いたのは、ボストンバッグのサイドにあるボタンを外すと、まるで枕やクッションのように平らになる“シエスタ”バッグ。旅行時に洗面道具を入れるために使うウォッシュバッグ(ストラップ付きのポーチ)も、レザーやシアリングでアレンジして外出時に気軽に持てるミニバッグとして提案する。パリ発のオーディオブランド「デビアレ(DEVIALET)」との協業によるFFモノグラムがあしらわれたポータブルスピーカーや、インジェクションソールでプラットフォームに仕上げたデッキシューズなども登場した。
また、フィレンツェ郊外の「フェンディ ファクトリー」で行った先シーズンのショーでは隈研吾とのコラボレーションを披露したが、今季も建築家との協業は継続。マッド アーキテクツ(MAD ARCHITECTS)の創設者である中国人建築家のマ・ヤンソン(馬岩松)との対話をもとに、彼の建築に見られるような曲線的なスタイルをデザインに取り入れて未来的なエッジを効かせたバッグ“ピーカブー アイシーユー”とスリッポンスニーカーを制作した。