ダニエル・ブラッシュによる「ポピー」。スチールという工業的な素材を用いて、ポピーの柔らかい花びらのニュアンスを表現。ダイヤモンドが散りばめられている PHOTO:MASAYA YOSHIMURA
「ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS) 」が支援するジュエリーと宝飾芸術の学校「レコール」は1月19日〜4月15日まで、東京・六本木の21_21デザインサイト(21_21 DESIGN SIGHT)のギャラリー3で「ダニエル・ブラッシュ展−モネをめぐる金工芸(DANIEL BRUSH THINKING ABOUT MONET」を開催する。“素材の詩人”と呼ばれるブラッシュは、画家、彫刻家以外に、金属加工職人、哲学者、エンジニアというさまざまな顔を持つアメリカ人アーティストだ。「ヴァン クリーフ&アーペル」はブラッシュと協業した背景があり、「レコール」は2017年に仏パリで翌年にニューヨーク、昨年香港でブラッシュへオマージュを寄せた展覧会を開催。それに続くのが同展で、日本でブラッシュの展覧会が開催されるのは初めてだ。
ゴールドのオブジェ。バタフライはマグネットでつける位置を変えられるPHOTO:MASAYA YOSHIMURA
連作の「モネについて考える」から。緻密に彫る角度や深さを変えることで光と色彩を表現 PHOTO:MASAYA YOSHIMURA
「モネについて考える」から。一つ一つの作品が、見る角度や光線で変化するPHOTO:MASAYA YOSHIMURA
「モネについて考える」から。ブラッシュは、スチールという素材を見るものの環境によって変化する芸術作品として昇華 PHOTO:MASAYA YOSHIMURA
「モネについて考える」から。光という表現を通してさまざまな表情を描き出した作品には、ブラッシュの魂が宿っている PHOTO:MASAYA YOSHIMURA
エキシビションでは、ジュエリーから絵画、オブジェまで、芸術のカテゴリーを超えたさまざまな作品を紹介している。見どころは、連作の「モネについて考える」だ。ブラッシュは、モネの光を取り入れた色相に強い関心を抱いていが、モネが描いたジヴェルニーを訪れたとき目にした自然光の荘厳さを絵画には見出せなかった。彼は偶然に、光にかざされたモネの作品のカラーポジフィルムを通して“光”という表現方法に出合う。光線をさまざまな色として人の目に映る波長に分割する回折格子の化学原理にインスピレーションを受けたブラッシュが手彫りで制作した一連の彫刻作品だ。スチールに、光を分割する角度でいくつもの線を綿密に彫ることで生まれる光を通して、絵の具などの色素では表現できない温かみのある色彩を表現している。見る角度や光によって変化する作品は、ブラッシュの光と色への愛着を表現していると同時に、能や浮世絵など日本の文化や芸術に関心を持っていた彼と日本との深い関係も表れている。ブラッシュが独特の手法で引き出した光と色彩。彼が表現した“光”と“色彩”のマリアージュは必見だ。
■「ダニエル・ブラッシュ展 モネをめぐる金工芸」
会期:2024年1月19日~4月15日
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3 東京都港区赤坂9-7-6
開館時間:10:00〜19:00
休館日:1月30日、2月13日、3月11日
入場無料(予約不要)