外商ビジネスを強化している百貨店が今、こぞって注力しているのがアートだ。多くの百貨店にはアートを販売してきた歴史があるが、ダウントレンドだった時期もあった。ところが、コロナ禍で家の中の豊かさを求めるようになり、アートへの関心が高まった。現代アートブームの影響もあり、特に若年富裕層の間では、現代アートを所有することがステータスになりつつある。宝飾、時計など関心のあるものは所有済み、物質的充足感以上の何かを探している富裕層に刺さるのがアートなのだ。百貨店3社および、大丸松坂屋と同じくJ.フロントリテイリングの傘下であるパルコの動向についてリポートする。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月22日号からの抜粋です)
松屋銀座本店
アートは外商顧客との
コミュニケーションツール
松屋銀座本店(以下、松屋)の売り場面積は3万3000㎡と中規模で、文字通りの「百貨」店として商品をフルラインアップで紹介するのは難しい。外商では2019年ごろから、店頭で欠損している商品を補完するMDを模索していた。松屋 外商第二部 販売チャネル企画課 商品開発係の藤原浩二・商品開発専門担当課長 美術は、「現代アートへの注目が高まりつつあり、商材の一つとしてアートを取り上げるようになった」と話す。彼は長年、店頭でアートのMDを担当していたが、20年春に外商部へ異動。コロナ禍は閉店を余儀なくされ、苦戦しながらも外商が売り上げを支えた。「アートを切り口に外商顧客のライフスタイルや趣味嗜好などをより深く知ることができる。アート以外のビジネスにつながる入り口になる」。アートは、外商顧客との重要なコミュニケーションツールになっている。藤原課長は、「顧客情報に応じて、作品の資産性や希少性、作家の将来性や話題性などを把握して提案するのが大切」と強調。そのため、外商全員にアート作品のレクチャーを行ってレベルアップを図っている。
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