TSIのウィメンズ業態「ローズバッド(ROSEBUD)」が黒字体質へ抜本改善を進めている。買い付け商品主体だったMDを段階的に方針転換し、2024年春夏シーズンはオリジナル商品の比率が6割に達した。適時・適量生産による在庫圧縮も進め、利益面は良化傾向だ。ここ数年の低迷から「再出発する準備が整った」(ROSEBUD事業部の津崎幸大氏)。1993年に渋谷明治通りに1号店を開き、ウィメンズ専業セレクトショップのパイオニア的な存在として認知されてきた「ローズバッド」。30年を経て過渡期を迎える中、浮上へ道筋をつけられるか。
ローズバッドの売りはかつての渋谷本店(19年に閉店)に代表されるように、個性的な買い付け商品が店内を彩る「いい意味でのカオス感」だった。2011年のTSIグループ(当時は東京スタイル)の傘下入り後も、数あるウィメンズ業態の中で異色の存在を貫いた。
だが業界全体でセレクトショップ業態の集客力が落ちる中、仕入れ主体のビジネスだけでは構造的に利益を生み出せなくなる。傘下入り当初は「ナノ・ユニバース」と並んでグループ内の稼ぎ頭だったが、その後は苦境が続き、グループ内の売上高トップ10からも姿を消す。19年には渋谷本店を閉店、さらにコロナ禍による店舗休業を強いられ、これがカンフル剤になる。
デジタル領域のノウハウを注入
ウィメンズセレクトショップの先駆けというプライドに縛られず、“買い付け”にとらわれない抜本改善に着手した。「トレンドが多様化し変化が加速する中で、自社企画の商品でお客さまのニーズにキャッチアップしていくことが必要」。オリジナルブランド「ローズバッド」は、買い付け商品との親和性を第一とする考え方を転換し、ブランド単体で世界観を見せられるようにした。24年春夏は“MOVEMENT”をテーマに、陸上スポーツをキー要素としたブロケット・コア(スポーティー×フェミニン)スタイルを新提案。展示会では、一部をラメ混の生地にしたサイドラインのトラックパンツ(1万1990円)が顧客から好評を博した。
TSIグループの組織改変に伴い、D2Cブランドの「エトレトウキョウ」や「ジルスチュアート」と並んで、デジタルをブランドの推進力とする「デジタルジェネレーション領域」に事業ドメインを移管した。これらのブランドとノウハウを共有しながら、ウェブでの先行予約やSNSトレンドを商品企画や需要予測に生かし、余剰在庫や値引き販売を減らしている。
実店舗は22年2月末時点の21店舗から、現時点で14店舗に整理した。1店1店の磨き込みに力を入れている。買い付けアイテムの総量はぐっと減らしているものの、変わらず「ローズバッド」における大事な要素と捉える。1点もののリメイク古着など、「リアルならではの新しい出会い」を意識した仕入れを行う。「ミチ」「クレオルム」「マグバイシー」といったハウスブランドとのミックスコーディネートによるVMDも強化し、面白みを作り出す。25年2月期は“攻め”の投資として、「デジタルマーケティングだけでなく、ブランドビジュアルの駅前広告などリアルでもタッチポイントを増やし、新規獲得につなげていきたい」とする。
グループ全体の試金石に
この数年、TSIグループ全体をけん引してきた「パーリーゲイツ」などのゴルフブランドやストリートブランドが失速している。新たな成長エンジンを作り出すためには、デジタルの力でブランドのポテンシャルを引き出すことも重要だ。グループ内では決して大きくない規模の「ローズバッド」だが、デジタルを梃子にした一連の改革はグループ内にとっても重要な試金石になる。
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