PROFILE: 豊山YAMU陽子/マッシュビューティーラボ社長
マッシュビューティーラボは「コスメキッチン」「ビープル」を柱に日本のナチュラル&オーガニック市場を長年リードしてきた。2023年4月にマネジメント層の人事を刷新。数々のファッションブランドを育てあげてきた豊山YAMU陽子氏が社長に就任。推進力のある新組織体制のもと、次なるステージへと向かう。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)
「心地いいイノベーション」を推進し、話題性と消費者に届ける幸せを最大化
WWDJAPAN(以下、WWD):社長就任から半年以上が経過した。
豊山YAMU陽子社長(以下、豊山):当社は人の24時間を豊かにし、笑顔を届ける「ウェルネスデザイン」をグループスローガンに掲げており、大きな役割を果たすビューティ事業を担うことに身の引き締まる思いだ。その中でナチュラル・オーガニックビューティ業界の方々は、われわれと深くつながりながら、そのプレッシャーを取り払ってくれて感謝している。
WWD:就任時に感じた課題への取り組みは?
豊山:今、クリーンビューティなどさまざまな言葉が飛び交っているが、枠にとらわれない新しいオーガニックビューティを私たちが提案しなければと感じている。古来のオーガニックの素晴らしさを伝えるのも使命だが、その一方で、時代の流れと共にオーガニックの伝え方にも多様性が必要になっている。ファッション分野出身の私には、それを具現化することが期待されていると日々痛感している。私は「心地いいイノベーション」を得意としてきた。オーガニックという変わらない価値を届けつつ、話題性を作りお客さまに届ける幸せを最大化させたい。
WWD:2023年の業績を振り返っての感想は?
豊山:22年8月期の売上高は164億円(エコストアジャパンを含む。以下同)で、23年は172億円。24年は185億円を目標とする。その中で、「ビープル」が前年比10%増と順調に推移している。食品やサプリメントなどインナービューティを主力とする事業だが、コロナ禍を経験したことでインナーケアに対する人々の意識が高まった結果だと思う。また、インバウンドのお客さまがメイド・イン・ジャパンの食品を大量買いされるケースも目立つ。22年2月、屋号からコスメキッチンの名を外したが、「ビープル」はどんな店なのかお客さまにしっかり浸透した。サプリメントだとハードルが高いお客さまでも、ちょっとしたドリンクやお菓子などからインナーケアをスタートできる。そんなコミュニケーションができるのが「ビープル」の面白さ。最近は、出店依頼も多くいただいている。また、24年は世界有数のトラフィックを誇るターミナル駅構内へ「ビープル」の新業態を出店予定だ。東京には今、世界中から観光客が戻り、ビーガンなど多種多様な人も多い。そこでは、その人たちが気軽に買い物できる場所を提供するという新たなミッションを与えてもらった。
WWD:22年にブランド事業部を立ち上げ、プライベートブランドの見直しを図ったが、23年の売り上げ状況は?
豊山:「セルヴォーク(CELVOKE)」「トーン(TO/ONE)」は横ばいで、「スナイデル ビューティ(SNIDEL BEAUTY)」が前年比39%増と成長した。店舗限定商品が大きな話題となり、即日完売のニュースが何度も届いた。店舗限定は大変だが、お客さまからもデベロッパーからも期待は大きく、最近は海外からのオファーも増えている。そのようなステージに至ったことがうれしいし、苦労のかいがある。
WWD:23年7月、「トリロジー(TRILOGY)」との総販売代理店契約も話題になった。
豊山:契約後リローンチした際は、「肌を輝かせる、赤のオーガニック」というコンセプトを打ち出し、関わる全員でそのベクトルに向かうコミュニケーションを実現したことが功を奏した。主力商品である“ローズヒップオイル”は価格を少し下げたこともあるが、リローンチ後の9〜11月の売り上げは前年比354%増に。現在、マッシュグループ全体で、ブランドの理念に共感・リスペクトし、その歴史を重んじながら世に発信していくライセンス事業に力を注いでおり、「トリロジー」もその一つ。われわれは未来につながるウェルネスビューティを育てるのがミッションだと思っている。
WWD:デジタルとリアル店舗のバランスと施策は?
豊山:グループ全体で23年8月期のEC比率は33%。24年デジタルは最も注力したいポイントの一つだ。デジタルコミュニケーションは大きな課題で、優秀なスタッフをアサインして、変革するプロジェクトを昨年キックオフした。接客の熱量が届けづらいデジタルでは、起爆剤として価格商戦に手を伸ばしがちだ。それでは本来私たちが伝えたいことが伝わらないと気付き、売上高を上げると同時に、今後は目的を明確にしたPR訴求に切り替えていく。ウェルネスをキーワードに、ファッションとビューティをつなげた訴求をデジタルで挑戦したい。
WWD:24年のアクションは?
豊山:2月に「エッフェオーガニック(F ORGANICS)」をリニューアルするので、まずはそれを成功させたい。素晴らしいオーガニックスキンケアを作っていると自負しているので、現在シリーズで約9億5000万円の売り上げを25億円規模に成長させるため、多様性を備えたブランドに進化させる。また、20周年を迎える「コスメキッチン」はすでに確固たるイメージがあると思うが、新たなライフスタイルを発信する新生コスメキッチンとして、さまざまなチャレンジを行っていく。2月にリニューアルする「エッフェオーガニック」を皮切りに、新しい形のウェルネスビューティを提案する。
会社概要
マッシュビューティーラボ
MASH BEAUTY LAB
マッシュグループの傘下として2010年に設立。ナチュラル&オーガニックコスメのセレクトショップ「コスメキッチン」や「メイクアップキッチン(MAKEUP KITCHEN)」、コスメに加え食品やインナーケアアイテムをそろえる「ビープル」を運営する。「セルヴォーク」「トーン」「スナイデル ビューティ」などプラベートブランドも充実し、22年に発表した「ミティア オーガニック(MITEA ORGANIC)」ではファミリーマートと協業。「ミートゥデイ(ME TODAY)」「トリロジー」などと独占販売契約を締結している