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特集 CEO2024 ビューティ編

【エキップ 赤堀真之社長】ブランドの“I am”を明確にグローバル戦略を加速

PROFILE: 赤堀真之/エキップ社長

赤堀真之/エキップ社長
PROFILE: (あかほり・まさゆき) 90年に鐘紡に入社。カネボウ化粧品にて支店長を経て、2006年7月からエキップ取締役、経営企画部・国際部の部長を務める。10年10月からカネボウ化粧品 新規事業開発部 国際部 アジア営業GP部長、19年1月から花王 化粧品事業部門 事業企画・流通企画部長、トラベルリテール部長を経て、23年1月から現職 PHOTO : SHUNICHI ODA

花王グループがグローバル展開を強化する「G11」に選定する「RMK」「スック(SUQQU)」「アスレティア(ATHLETIA)」の3ブランドを擁するエキップは、国内外での成長が期待される。2023年に赤堀真之社長が新たに就任し、組織体制や海外戦略をより強固なものにアップデートしながら、創業30周年に向けてさらなる発展を目指す。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

全方位で「夢を実現する」

WWDJAPAN(以下、WWD):社長就任後、どのような組織作りを行っている?

赤堀真之社長(以下、赤堀):エキップはカネボウ化粧品のアウトオブ戦略の一貫として「RMK」や「スック」をそれぞれ成長させてきた。そのためライバルといった感覚が強く、コミュニケーションが希薄だった。しかし前任の前澤洋介・現花王化粧品事業部門長兼カネボウ化粧品社長の舵取りによって、ここ数年で社内の融合が進み、雰囲気が大きく変わったように思う。就任後、オフィスの社員と面談をしたところ、「働きやすい会社」「社員が優しく思いやりのある良い人ばかりの会社」というコメントが非常に多かった。社名の由来である「仲間」に恥じないよう、前任者が培った風土を継承し発展させていく。

WWD:その中で23年の成果は。

赤堀:3ブランドともに市場の平均を上回る伸長ができた。国内市場は、消費が停滞していた約3年を経て、23年は大きな盛り上がりを見せた。インバウンドも拡大し、特にメイクカテゴリーが売り上げを大きくけん引した。対して、海外市場は処理水の問題の影響が大きく、下期は中国の越境ECや韓国のトラベルリテール市場で苦戦したが、そのような情勢の中でもタイや香港では、新商品をフックに好調に推移した。

WWD:各ブランドの業績は?

赤堀:「RMK」はブランドの強みであるベースメイクが好調で、2年連続、大型新商品を投入したファンデーションについては23年は前年比1.5倍に迫る勢いで伸長した。21年に就任したクリエイティブディレクターYUKIのもと、彼のクリエイティビティーを前面に押し出したカラーメイクも段階的に刷新しているところで、世界観をさらに強く発信していく。「スック」は20周年のアニバーサリーイヤーで、メイクレッスンやブランド理解を深める体験コンテンツなどの施策と新商品を多数盛り込んだ1年だった。初めて受注生産での限定商品を販売したところ、想定を超える結果で着地し、顧客からも大きな反響があった。ブランドの集大成ともいえる“ザ ファンデーション”も大きな山の一つとなった。「アスレティア」は、「アクティブなライフスタイルを応援する」という価値観をしっかりと打ち出すことができ、“癒やし”一辺倒の時代から、ブランドが目指す「よく動き、よく休む」というアクティブとリラックスの循環を重視する考えがバランスよく受け入れられるようになってきた。右肩上がりの成長線を描けているが、まだ伸びしろがある。

WWD:グローバル視点で見たときの各ブランドの強みや課題はどんなところか。

赤堀:国内に確固たる基盤があること。インバウンドが増える中で、国内で存在感のあるブランドは、訪日客を介して海外にも伝播していくだろう。国内の良いロケーションで存在感のあるビジネスを展開することが、アドバンテージにもなる。その上で、日本市場以上にグローバル市場では「突き抜けたもの」しか勝てなくなってきている。ブランドとしてのアイデンティティー、「I am」をきちんと伝えていかないと、媒介した人のイメージに左右されてしまう。ブランドメッセージを整理しながら発信することが必要だろう。売り上げのためだけでなく、ブランドとお客さまを主語にどんなメッセージを発信するのかを大切にしていきたい。

WWD:ローカルマーケットではどのように認知を取るのか。エリアに優先順位はあるか。

赤堀:タイ、台湾、さらに越境ECを足がかりに中国といった東アジアを中心に、東南アジア、欧州を含めてグローバル展開を進めていく。「日本」と「海外」という考え方ではなく、一つの市場の中に、日本や各国のマーケットがあるという視点にマインドセットしてビジネスを考える必要がある。日本のブランドを海外でどう再現するかではなく、まずは日本での存在感を高めて、世界観を伝達し、インバウンドのお客さまから中華圏のお客さまへと広げていきたい。

WWD:24年に注力することは?

赤堀:30年を見据えて策定された花王グループの中期経営計画「K27」の通過点としての24年は、さらにグローバル化を推進する。クリエイティブと品質に磨きをかけることはもとより、ブランドのアイデンティティーとプロダクトのUSP(強み)を海外市場のお客さまに分かりやすくコミュニケーションするノウハウを確立したい。1月には事業部制へと組織体制を変えて、意思決定のスピードアップと社員の参画を促す。また、来店頻度にこだわったKPIの策定も行う予定で、単に来店・購入を促進する施策ではなく、デジタルの活用や、双方向でのコミュニケーションによるエンゲージメントの育成が重要になる。26年11月の創立30周年に向けてリアル店舗とデジタルを融合した施策を強化し、お客さまの真のニーズに寄り添う体験を創出し、真のグローバルブランドへの成長を目指す。

会社概要

エキップ
E'QUIPE

1996年11月にカネボウ化粧品の100%子会社として設立、化粧品製造販売を行う。97年に「RMK」、2003年に「スック」をデビューさせ、その認知・存在感は国内にとどまらず海外でも高まっている。ベースメイク、メイクアップに定評のある2ブランドに加え、20年には17年ぶりの新ブランド「アスレティア」を発表し、アクティブでしなやかな毎日を後押しする

問い合わせ先
エキップ
info@eqp.co.jp

TEXT:NATSUMI YONEYAMA