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特集 CEO2024 ファッション編

【ジンズHD 田中仁CEO】米アップルの元幹部も採用、グローバルブランド化に布石

PROFILE: 田中仁/ジンズホールディングス代表取締役CEO

田中仁/ジンズホールディングス代表取締役CEO
PROFILE: (たなか・ひとし)1963年群馬県生まれ。88年有限会社ジェイアイエヌ(現ジンズホールディングス)を設立し、2001年アイウエア事業「JINS」を開始。13年東証一部(現東証プライム)に上場。14年に群馬県の地域活性化支援のため一般財団法人田中仁財団を設立し、代表理事に就任。起業家支援プロジェクト「群馬イノベーションアワード」「群馬イノベーションスクール」を開始。現在は前橋市中心街の活性化にも携わる PHOTO:YUTA FUCHIKAMI

アイウエア大手のジンズホールディングスは、コロナ禍の収束に伴い業績は上向きつつある中で、「意志あるクリエイティブな仕事によって事業を創り上げること」を軸にした「第二創業」を掲げる。昨年6月には米アップルの幹部を招き入れ、グローバル化に向けた基盤作りにも着々と手を打つ。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

本格的なグローバル展開を前に
「地域共生&クリエイティブ」で第二創業へ

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年8月期の純利益は前期比2.3倍の17億円。業績は回復してきた。23年を振り返ると?

田中仁CEO(以下、田中):今期から、第二創業を掲げている。かつてはジンズもアイウエア業界のチャレンジャーであり、「セットプライス」などの新機軸を生み出してきたが、そうしたビジネスモデルも今では新規性を失いつつある。ビジネスモデルを刷新し、グローバル展開を加速させるためにも、創業時の挑戦者たるスピリットを取り戻したい。

WWD:なぜ今、第二創業なのか。

田中:第二創業の意味は、単なる改良改善とも、社会の変革を促すイノベーションとも違う。では何か?私は「意志あるクリエイティブな仕事によって事業を創り上げること」だと考えている。毎日の仕事をルーティンな単純作業としていては進歩がない。誰もが、挑戦者として仕事のやり方をアップデートすること。これは店頭のスタッフも、本部や管理部門であっても同じで、日本、海外も問わず、だ。まさに全社員が取り組むべき課題になる。目的は、組織の力で大きく成長する企業へと生まれ変わること。本部主導、あるいはトップダウンのようなやり方では、創業期のような非連続な成長は難しい。目標は時価総額1兆円を掲げている。現在は大体1000億〜1200億円の間なので約10倍、「圧倒的な何か」を作り上げないと達成はできない。

WWD:6月には、米アップルで18年にわたりクリエイティブ・ディレクターを務めたポール・ニクソン氏をグローバル・チーフ・クリエイティブ・オフィサーとして迎えた。その役割と狙いは?

田中:これは、「『ジンズ』をグローバルなブランドにすること」に尽きる。先ほどの「第二創業」とも連動しているが、成長の大きな鍵はグローバル化の加速。そのために組織も考え方も、根本から大きく変えていく。ニクソン氏は「新しいカスタマージャーニー」「プロダクト」「コミュニケーション」という3つを管掌する。

WWD:24年8月期の海外出店は16とやや控えめな印象だが。

田中:現時点でも売り上げのことだけを考えれば、積極的な出店施策が取れないわけではない。実際に世界で最も売れているのは米国の店舗で、もちろん広大な米国には出店の余地もある。ただその前に、真のグローバル化のために米国の多様性に対応できるような組織や制度、ビジネスモデルといった基盤作りを、ニクソン氏とともに1〜2年をかけて行う。しっかりとした基盤を作り、本質的な強みを磨き上げれば1〜2年の遅れなどすぐに巻き返せる。

WWD:国内は?

田中:24年8月期は17店舗を出店する計画だが、それでも出店余地はかなりある。アイウエアは、例えばアパレルと比べても、ターゲットがエイジレスで、実際に「ジンズ」の店舗もロードサイドから都心のファッションビル、駅ナカ、繁華街の路面店など、多種多様なフォーマットがそろっている。今は「店舗の価値をどれだけ高められるか」「魅力ある店舗をどう作れるか」を軸に、出店していく。

WWD:14年に地元の群馬県前橋市に財団を設立し、地域の起業家育成など地方創生にも深く関わってきた。

田中:取り組み始めた当初はここまで深く長く関わることになるとは考えていなかった。今でも毎週末には前橋に行って、さまざまなプロジェクトに関わっている。経営にも、ものすごく大きな影響を受けている。行政は、いわば市民全員が企業経営で言うところの「ステークホルダー」で、企業のようにトップが指示を出せば動く、ということはない。誰もが当事者であり、もし施策を実行しようと思えば参加型の意志形成や多くの利害調整も必要になる。当初はそれに戸惑ったり、苦労もしたが、同時に経営に対する考え方は大きく変わった。振り返ってみれば、以前のジンズと私自身もトップダウン型で、実際この数年の停滞は、私の権限委譲が足りなかったためだと反省している。第二創業を掲げたのも、そうした組織や風土を変えたいという思いがある。

WWD:著書の「振り切る勇気」で「起業したことで、物事と真剣に向き合うことやフルスイングすることの大切さを学んだ」と述べている。最後に若者たちへのメッセージを。

田中:私から言えるのは、「自分らしい人生を生きよう」ということ。私自身は小さい頃から飽きっぽくて勉強も得意ではなかった。けれどもそんな私でも「商い」だけは、飽きずにやれてきた。仕事に限らず、スポーツでも音楽でも得意なことや好きなことを全力で、一生懸命に取り組むことは、本当に大事だと思う。第二創業でも「一人ひとりがクリエイティブに働くこと」を掲げているが、これからはどんな立場や職種・業種でも、クリエイターであるべきだ。そうすることで、その人自身や所属する企業・組織も爆発的に成長できる。少なくともジンズは、そう考えている。

会社概要

ジンズホールディングス
JINS HOLDINGS

1988年ジェイアイエヌ(現ジンズホールディングス)設立。2001年、福岡・天神に1号店をオープン。06年、大証ヘラクレスに上場。10年、海外1号店を中国・瀋陽にオープン。13年、東証一部(現東証プライム)市場に上場。17年、社名をジンズに変更。国内473店舗、海外240店舗を展開(23年8月末時点)。従業員数は3486人(23年8月末時点)

問い合わせ先
ジンズカスタマーサポートセンター
0120-588-418