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社長の「体当たり動画」も追い風? オーダースーツSADA、過去最高業績ねらう

佐田展隆/オーダースーツSADA社長

PROFILE:(さだ・のぶたか)1974年生まれ。一橋大学経済学部を卒業後、東レに入社。2003年に父が経営する佐田に入社し、05年に社長。PRのため自社スーツをまとってスキージャンプを飛ぶ、富士山に登る、東京マラソンを走る等のチャレンジをユーチューブで配信。「カンブリア宮殿」(テレビ東京)等メディア出演多数。著書に「迷ったら茨の道を行け」(ダイヤモンド社) PHOTO:SHUHEI SHINE

オーダースーツSADAは、全国に47店舗を有する注文服大手だ。初回限定1万9800円という手頃な価格でフルオーダースーツを製造販売する。4代目の佐田展隆社長はこれまでバブル崩壊による消費低迷、東日本大震災による自社工場(宮城県)の被災、そしてコロナ禍によるスーツ離れ――数々の困難に直面してきたが、2024年7月期は過去最高の売上高を達成する見込みだ。ライトネイビーのスーツに赤ネクタイの姿で体当たりの企画に挑戦し、スーツの魅力を発信するユーチューバーとしての顔も持ち合わせる。

WWD:リモートワークが進んだコロナ禍を経て、ビジネスウエア市場は大きく変わった。直近のオーダースーツの商況は?

佐田展隆社長(以下、佐田):コロナ前の売り上げ水準に回復しており、今期(24年7月期)は過去最高の売り上げを更新する見通しだ。振り返るとコロナ禍は本当に大変だった。スーツ自体の需要が激減してしまったのだから。昨年も猛暑によって9月まで苦戦したものの、10月以降は復調した。以降、1月まで前年売り上げをクリアし続けている。

WWD:好調の要因は?

佐田:顧客の平均単価が上がった。現在の購買平均単価は4万円強。原料高にともない商品価格を上げたことも一因だが、“スーツは勝負の場で着るもの”という認識がコロナ以降に浸透した。ビジネススーツ市場自体は縮小している一方で、顧客が「スーツを何のために着るか」を見直したようだ。コロナ前はとりあえず仕事で必要だから何着か持っておく。それがTPOをわきまえ、大事な相手と会うときの勝負服、一張羅としての意味合いを強めた。せっかく購入するのであれば、サイズや着心地、デザインに納得いくフルオーダーの一着を持っていたいという声を聞くようになった。高価なインポート生地を選ぶ方も多い。

実際、オーダースーツへの関心が高まっている。グーグルの分析データによると「オーダースーツ」という検索キーワードがコロナ前の倍に増えているという。弊社公式ホームページの10月アクセス数が前年同期比4倍、11月も2.5倍に急伸した。こうしたことが追い風になっている。

初めてのフルオーダーの着心地に驚く

WWD:コロナ前後で顧客層も変化した?

佐田:顧客の平均年齢が10歳以上若返った。現在のボリュームは30代から40代。初めてオーダースーツを作りに来てくれるお客さまが多い。スーツをあつらえた経験があると言う方も、よくよく聞くと(既成の型紙から作る)パターンオーダースーツであることがほとんど。当社のように一人一人の体形を細かく採寸し、着心地も好みにも合わせるフルオーダーを経験している方は本当に少ない。そんなお客さまが出来上がったスーツに袖を通すと、一様に着心地やクオリティに驚く。そしてリピーターになってくれる。45%のお客さまが3年以内に再びSADAでスーツを作る。年に2回来店してくれるコアなファンもおり、こうしたロイヤルリピーターをどれだけ増やせるかが今後の鍵になりそうだ。

WWD:オーダースーツSADAの強みは?

佐田:自社工場(宮城県と中国・河北省)だ。細かいニーズに柔軟に対応できるほか、パターンオーダーとほぼ同価格でフルオーダースーツを作ることができる。流れとしては、個人に合わせたオリジナルパターンをおこし、好みのゆとり幅に調整しながら細かく補正。そのパターンに合わせ自社工場で縫い上げていく。

ヌード寸法(服ではなく着用者自身の寸法)に対して、どのくらいのゆとりが好まれるかを把握するのが重要だ。一口にスーツを着るホワイトカラーといっても仕事内容によって体の動きは異なる。デスクワークが多いのか、外回りが多いのか、車を運転することも多いのか。丁寧なヒアリングを重ね、仮縫いしたスーツを試着してもらいながら肩や背中などパーツごとに細かくゆとりを確認していく。ここを緻密に行うことで体形にジャストフィットし、着心地の良さに納得してもらっている。SADAのスーツはプロ野球やJリーグなど27のプロスポーツチームに公式スーツを提供(24年1月11日現在)している。アスリートの皆さんはフルオーダーでなければ体形に合うスーツが見つかない。契約数を通しても評価をもらえていると思う。

社長がスーツを着て過酷な山登りに挑戦

WWD:社長自身も自社スーツを着て、スポーツから山登りまで数多くのアクティビティにチャレンジしている様子をユーチューブで配信している。

佐田:富士山登頂からスキージャンプ、スキューバダイビング、トライアスロンまで本当にさまざまなことに挑戦してきた。きっかけは全部、社員からの無茶振り(笑)。ちなみに今日着ているスーツは海に潜ったとき、何回も着用していたものなので、クリーニングしても塩が落ちきれていない。こうした挑戦を通して、スーツにゆとりがあれば山登りでも何でも問題なく動けることを私自身も実感している。昨年のモンブラン(4807m、ヨーロッパアルプス最高峰)登頂の際は、あまりの強風でアンダーウエアやアウターが必須だったが、寒さ対策さえ万全にしていればスーツでも余裕で山に登れる。

毎月1回のペースで山に登り、ユーチューブで配信している。これまで登った数は、日本百名山でいえば35座。百名山を完登するまで絶対に続けると決めている。年に1回は海外の山にも登っている。もともと学生時代にノルディック複合の選手だったので、基礎体力には自信があるし追い込まれる方が好きなタチ。スーツが似合う体形をキープするためにも体脂肪率は11%を維持している。基本、夕食では炭水化物を食べない。

会社の公式チャンネルも開設していて、そちらではビジネスマナーやスーツの着こなしの動画が人気だ。私のチャンネルはあくまでも、笑いを交えてオーダースーツの敷居を下げたいという思いから。店頭スタッフによるとお客さまから社長動画について話題に上ることも非常に多いらしく、たいへんだけど続けてよかった。

WWD:会社として、社長個人として、今年に成し遂げたいことは?

佐田:会社としては、2024年7月期に過去最高の売上高40億円を達成し、コロナ脱却を証明する年にしたい。創業100周年を迎えたメモリアルイヤーに成し遂げる意義も大きい。個人としては、アフリカ大陸最高峰のキリマンジャロ(5895m)登頂だ。標高5000メートル以上の山に挑むのは初めて。頂上でキリマンジャロコーヒーを飲むと決めている。実は昨年末に左腕を骨折してしまい手術をしてリハビリ中だが、問題なくやり遂げられる自信はある。

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