毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年2月5日号からの抜粋です)
大塚:2024-25年秋冬メンズは、ファッション・ウイークにおけるセレブリティー報道の過熱ぶりについて、メディアのスタンスが疑問視されたシーズンでした。「数字欲しさにセレブばかり追いかけていて、服について全く報じていない」という批判や、クリエイションVSセレブリティーの対立構造で語ったりする論も出ました。今シーズンもわれわれはセレブリティーを追いかけましたが、コレクションやデザイナーの思いもきちんと報じている自信がありますし、より多くの人にファッションに興味を持ってもらうきっかけにもなると感じました。エリさんはどう考えていますか?
アンテナを張るのは記者として大事
井上:もちろん媒体によってスタンスはいろいろだと思いますが、現地で取材している身としては、セレブリティーについて語らないことの方が不自然というか。それぐらい重要な位置を占めていると思います。そのセレブリティーを起用することで、どういう層にリーチできるのか、どんな効果があるのかにアンテナを張るのは、世界の市場を読むために記者として大事だと考えます。
大塚:僕は最初、セレブリティー追っかけ取材が本当に嫌だったけれど、だんだん割り切れるようになってきました。特にラウールさん(Snow Man)の存在は大きいですね。服がカッコよく着こなせて、ブランドについての理解もあり、語学も堪能。何よりも「ファッションが好き!」というのが伝わってきて、なおかつファンの質と熱量がすごく高い。彼のコメントを掲載しても、そこだけ抜き出してSNSに掲載するような人がいなくて、「無料で登録できるから会員になって記事を読んで!」みたいな拡散をしてくれるんです。しかも記事をしっかり全部読んでくれて、それが数字にも表れます。彼は、ちょっと別格ですね。実際に追っかけ取材をして、SNSなどの反応を細かくチェックしたからこそ分かりました。
井上:セレブを起用してブランドのイメージや認知度を上げるというのは、かつてユベール・ド・ジバンシィなどがやっていたように、古典的なやり方です。そして、その時代を象徴するセレブリティーがクリエイターを刺激して、その時代らしい何か新しいものが生まれたりします。ですから波はありますが、こうしたセレブリティーとの関係性はなくならないと思います。