PROFILE: 稲冨幹也/エムスタイルホールディングス社長
ツバメの巣で世界中に驚きと幸せを生み出すことを企業理念としているエムスタイルホールディングスは、100%天然アナツバメの巣を活用した健康食品、コスメブランド「ビース(BI-SU)」を展開する。希少なツバメの巣の品質保持はもちろん、地球温暖化、熱帯雨林の減少、絶滅危惧種の増加、これら環境問題の解決や自然保護活動にも積極的に取り組んでいる。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)
循環だけでなく再生も考した
全人類のためのブランドを育成
WWDJAPAN(以下、WWD):2023年はどんな年だったか。
稲冨幹也社長(以下、稲冨):ブランドを続ける中で、ジャングルの危機を伝えられ天然アナツバメの巣に触れられる体験型店舗が欲しいという思いがあった。そこで、23年3月にブランド初の直営店をギンザ シックスにオープン。当初は1年間限定オープンの予定だったが反響も良く延長が決定。ブランドコンセプトを世界に向けて発信する場としての地位も確立し、ブランディングとしても非常に飛躍できた。24年中にはアジアの旗艦店として京都・祇園店がオープンする予定だ。また、私の半生が描かれたルポルタージュ「ツバメの巣で世界を変える 命がけのツバメの巣ハンター 稲冨幹也」が発売された。中高生からの反響も大きく、気候変動など地球環境の危機に対して大人が果たす責任の重さを改めて実感した。環境問題の重大さに対し改めて自分を律する年でもあった。
WWD:マレーシアでは「国の宝」として保護されているツバメの巣の研究はマレーシア元首相マハティール・ビン・モハマド氏も注目する。
稲冨:世界的にもツバメの巣に関する研究は珍しく、原産国のマレーシアでも行っていない。22年に来日したマハティール氏に企業理念を賛同いただけたことは、日本国内で「ビース」に興味を持ってもらえる大きな転機となった。当社は売り上げ確保は二の次で社会循環型のモデルを作りたいとブランドを展開するが、ジャングルの危機的状況などの訴えに耳を傾ける人も増えたように感じる。例えば毛皮やダイヤモンドなどを求めるほどに地球が壊れてしまうことを人々は望んでいない。しかしそれらをあたかもいいモノのように見せるブランドも多いのが現実だ。商品を買うほどに環境が良くなったり動物が助かったりするという循環が必要であり、それを日本から発信できる世界を作り上げたい。
WWD:循環型社会のために手掛けることは?
稲冨:循環するだけではなく再生も考慮したリジェネラティブを加速する鍵は米国・ハリウッドにある。すでに現地に会社を設立し準備を進めている。ハリウッドは色褪せない名作など数多の“憧れ”を創造する場であり、商品を売ると同時にブランドの哲学も伝わりやすい。ただし、唾液を原料とするツバメの巣はすぐには受け入れられないため、まずはペット用ツバメの巣ブランド「ミラネスト(MIRANEST)」から攻めていく。今年はラスベガスやドイツなどの展示会に出展予定で、「ミラネスト」からツバメの巣を広め、そこから「ビース」につなげるという戦略を立てている。
WWD:「人・動物・自然」が共存する世界を目指し、10年以上前から、リジェネラティブの考えを持ち環境保全活動を行っている。
稲冨:ツバメの巣は一度使った巣は二度と使わないという習性があるため、天然アナツバメの巣は何も傷つけないサステナブルな食材であると同時に、人々に健康や美をもたらす素晴らしい原料だ。しかし原産地であるボルネオ島は乱獲や密猟問題、ジャングルの森林を切り開いてパーム油の原料となるパームヤシを植樹するなど生態系が崩れている。ツバメの巣を守るには健康なツバメが必要で、そのためには健康な自然が必要。21年から商品を1品購入するごとにボルネオ島に苗1株分の金額を寄付する活動を行っており、「ビース」を使えば使うほど地球が良くなるという循環を作っている。全てのブランドが原価率や売り上げを追い求め、犠牲の上に成り立つ社会であってはいけない。
WWD:17年に設立したツバメの巣研究所では大学と共同研究を行い多くのエビデンスを取得していることも同社の特徴だ。
稲冨:天然アナツバメの巣および、それに含まれるシアル酸(N-アセチルノイラミン酸)に関する研究を行い、その潜在的な能力を引き出している。これまで九州大学、麻布大学、熊本大学とタッグを組み、免疫やエイジングケアなど10以上のエビデンスを取ってきた。直近では、ツバメの巣によるミトコンドリアの機能向上に関する特許出願に至った。これはツバメの巣を食べると長寿遺伝子が増強する可能性が判明したことからで、皮膚のエイジングケアや疲労回復のサポートなどが期待でき、今後はプロテインに加えるなど幅広い展開も可能になる。すでに米国での試作も進めており、今秋までには商品を発売したい。このミトコンドリアの機能向上を生かし、宇宙食の開発を宇宙航空研究開発機構(JAXA)とも話を進めている。これらが実現すれば、「ビース」は美と健康だけではなく全人類のためのブランドに進化するだろう。
WWD:24年を象徴する数字はあるか?
稲冨:私の干支である寅年の10年に創業し、11年に「ビース」を立ち上げ、23年で12年が経過した。日本でツバメの巣市場を12年かけて創造してきた。改めて原点回帰し、これからの12年の方向性を昨年12月末から70日間マレーシアに滞在して考えようと思う。業績については、23年の売上高は27億円で24年は35億円を最低ラインに伸ばしていく。
会社概要
エムスタイルホールディングス
M-STYLE HOLDINGS
2010年設立、本社は福岡県。自然環境に一切負担をかけないサステナブルな理念を掲げ、稲冨代表自らマレーシア・ボルネオ島で採取した100%天然アナツバメの巣のみを活用した健康食品や美容コスメ「ビース」の製造・販売を行う。14年、香港に支社エムスタイルアジアを設立。16年にはペット用栄養補助食品を提供するブランド「ミラネスト」も立ち上げた
エムスタイルホールディングス
0120-128-213