「シャネル(CHANEL)」は1月23日、グランパレ・エフェメールで2024年春夏オートクチュール・コレクションを発表した。今季の出発点は、メゾンコードの一つであるボタン。衣服はボタンによって開閉が容易になり、女性たちは動きを制限していたものから解放されて自由になった。そのため、動きやすく機能的な服を追求していたガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)にとってボタンは重要であり、ジュエリーのように華やかなボタンを好んだ。現在メゾンのクリエイションを率いるヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)は、そんな“解放のシンボル”でもあるボタンをダンスやバレエの世界に結び付け、可憐なコレクションを見せた。
100年続く「シャネル」とバレエの関係
かつてシャネルは、セルゲイ・ディアギレフ(Sergei Diaghilev)が主宰するバレエ団バレエ・リュスに資金援助や衣装のデザイン提供を行なっており、バレエとのつながりは深い。そして、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)とヴィアールもバレエ衣装を手掛けるという伝統を継承してきた。今回ヴィアールが試みたのは、「体と衣服が持つ力と優雅さを、チュールやフリル、プリーツ、レースで構成された極めて軽やかで優美なコレクションに集約させること」。創業者が1924年の公演「青列車(Le Train Bleu)」のために初めて衣装を手掛けてから1世紀を迎えた節目の年に、あらためてバレエとの絆にフォーカスした。
会場は、天井に巨大なボタンのオブジェが飾られた円型のセット。壁のスクリーンにティザーとして制作されたショートフィルムが流れた後、作中でも主演を務めた「シャネル」のアンバサダーでバレエ経験もある俳優のマーガレット・クアリー(Margaret Qualley)が登場した。白のツイードジャケットにチュールのラッフルカラー、シアースカートを重ねたミニスカートというルックにバレエ衣装に通じる白いタイツを合わせ、あどけない笑みを浮かべながらランウエイを闊歩する姿は、まさに今季のムードを象徴する。
淡い色のシアー素材と装飾が生む軽やかさ
白やピンクをはじめとする水彩画のような淡い色合いを中心にした今季は、全モデルが白タイツを着用。透け感を生かしたレイヤードや装飾の軽やかさがポイントになる。例えば、ツイードコートの腰下にチュールを加えたり、スーツのスカートにシアー素材を重ね、その上に羽やパールビーズで植物のようなモチーフを描いたり。ベースにレオタードを身につけ、その上にスパンコールの立体的な花モチーフが印象的なブラトップとボリュームのあるチュールスカートを合わせたモデルもいれば、スパンコール刺しゅうや羽根細工がたっぷりとあしらわれたエアリーなチュールドレスをまとうモデルもいる。
セットアップはクロップド丈のジャケットとマイクロミニ丈のスカートやドレスを合わせた提案も多い。タイツやレオタードで素肌を大胆には見せずとも、そこから感じるのは女性たち自身の自由を尊重した体の賛美と動きやすさへの探求心。シャネルが提げた女性を制限から解き放つ“解放”の精神は、時代に合わせて形を変えながら今もしっかりと受け継がれている。