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ロレアル、23年12月通期は増収増益 中国の政策変更など響き営業利益の伸び鈍化

ロレアル

ロレアル(L’OREAL)の2023年12月期決算は売上高が前期比11.0%増の411億8000万ユーロ(約6兆5888億円)、営業利益が同9.2%増の81億4330万ユーロ(約1兆3029億円)、純利益は同7.1%増の64億8660万ユーロ(約1兆378億円)だった。大衆向け化粧品を扱うコンシュマープロダクツ事業本部と皮膚医学に基づく化粧品を扱うダーマトロジカル ビューティ(旧・アクティブコスメティックス)事業本部の成長が顕著だったほか、リュクス事業本部の売上高が同カテゴリーで競うエスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)を抜き世界トップとなった。

事業部別で見ると、リュクス事業本部の売上高は同4.5%増の149億2400万ユーロ(約2兆3878億円)で、トラベルリテールにおける代購(代理購買、ソーシャルバイヤー)に関する政策変更と中国本土の市場軟化の影響を受けた北アジアを除き、各国で2ケタ成長を達成した。補完的なブランドポートフォリオへの継続的な投資と、米国におけるアマゾン(AMAZON)への展開などに見られる積極的なオムニチャネル戦略、中国での抖音(Douyin、ドウイン)への早期対応が奏功した。フレグランスは世界的にヒットした「イヴ・サンローラン(YVES SAINT LAURENT)」の“リブレ”や“マイセルフ”、「ヴァレンティノ ビューティ(VALENTINO BEAUTY)」の“ボーン イン ローマ”、「プラダ(PRADA)」の“パラドックス”などがけん引し引き続き好調に推移。スキンケアは「ヘレナ ルビンスタイン(HELENA RUBINSTEIN)」が売上高10億ユーロ(約1600億円)の大台を突破したほか、「タカミ(TAKAMI)」が成長に貢献した。8月30日に買収が完了した「イソップ(AESOP)」も好調なスタートを切った。

コンシューマープロダクツ事業本部は同12.6%増の151億7270万ユーロ(約2兆4276億円)と過去30年で最高の伸びを記録した。デモクラタイジング(民主化、一般化)とプレミアム化を同時に推進する戦略を継続し、主要4ブランドで2ケタ成長を達成。主な成長要因となった欧州と新興市場、特にメキシコ、ブラジル、インドが顕著な伸びを示した。「ロレアル パリ(L’OREAL PARIS)」は売上高70億ユーロ(約1兆1200億円)の大台を超えた。メイクアップでは、「メイベリン ニューヨーク(MAYBELLINE NEW YORK)」の“ザ ファルシーズ シュール エクステンション マスカラ”のほか「ロレアル パリ」「ニックス プロフェッショナル メイクアップ(NYX PROFESSIONAL MAKEUP)」のリップなど新商品がけん引。スキンケアは「ロレアル パリ」のブライトニング新商品が成功した。

臨床皮膚医学の知見に基づく化粧品を扱うダーマトロジカル ビューティ事業本部は、同28.4%増の64億3200万ユーロ(約1兆291億円)と大きく伸長し6年連続の2ケタ成長を達成した。売上高は3年で2倍以上となった。同事業本部が擁するブランドで最も成長率が高い「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE POSAY)」は、紫外線ケアにおける画期的なイノベーションを備えたモイスチャライジングクリーム“アンテリオリス UVmune400”と、肌ダメージをケアする“シカプラスト”がけん引した。「セラヴィ(CERAVE)」や「ヴィシー(VICHY)」も力強い成長を維持した。

サロン向けヘアケア商材を展開するプロフェッショナルプロダクツ事業本部は、同7.6%増の46億5390万ユーロ(約7446億円)で、同事業本部にとって第2位の市場である中国本土と第5位のインドがけん引した。ブランドでは「ケラスターゼ(KERASTASE)」の最高峰ライン“クロノロジスト”や頭皮と毛髪の2方向へのアプローチを訴求する“ジェネシス”が好調で、「ロレアル プロフェッショナル(L'OREAL PROFESSIONNEL)」は 金属ストレスに着目したライン“メタルデトックス”などの画期的なイノベーションが成長を支えた。

地域別で見ると、ヨーロッパが同16.0%増の130億780万ユーロ(約2兆812億円)、北米が同11.8%増の111億4720万ユーロ(約1兆7835億円)、北アジアが同0.9%減の106億6290万ユーロ(約1兆7060億円)、SAPMENA-SSA(南アジア太平洋・中東・北アフリカ・サブサハラアフリカ)が同23.2%増の34億4770万ユーロ(約5516億円)、ラテンアメリカが同24.4%増の29億1690万ユーロ(約4667億円)だった。ヨーロッパは西欧と中央ヨロッパの全ての国で業績を伸ばし、2年連続でグループ最大の成長ドライバーとなった。特に、コンシューマープロダクツ事業がけん引。引き続きドラッグストアやeコマースの強化を図った。北米はリュクス事業とダーマとロジカル ビューティ事業が全体の成長に貢献した。北アジアは中国の代購に関する規則変更によるトラベルリテール事業へのシワ寄せが響いた。SAPMENA-SSAはオーストラリア、ニュージーランド、インドが20%増以上の成長を示し、ラテンアメリカはブラジルとメキシコが30%増を超えて伸長した。

ニコラ・イエロニムス(Nicolas Hieronimus)最高経営責任者(CEO)は、「地政学的緊張やインフレ圧力、中国のビューティ市場の停滞といった厳しい環境の中、2023年は21年を除いた過去20年以上で最高の成長率を達成した。これは多極化モデルの成功を証明するものだ。われわれはこれまで以上に未来に目を向けている。ビューティテックがロレアルのリーダーシップをさらに強化するだろう。ビューティテックによりこれまで以上にインパクトがあり持続可能な商品とサービスを提供できる」と述べた。

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