「シャネル(CHANEL)」は2月9日、アメリカ初となるウオッチ&ファインジュエリーの専門店をニューヨーク5番街730番地にオープンした。2フロアある売り場面積は約306㎡。ファイン&ハイジュエリー、ウオッチ、オートオルロジュリー(複雑機構)を備えた高級時計などのコレクションを中心に取り扱う。
店舗設計を手掛けたのは、ニューヨークを拠点とする著名な建築家のピーター・マリノ(Peter Marino)。一昨年改装オープンした仏パリ・ヴァンドーム広場のファインジュエリー本店と東京・銀座並木通りに構えたウオッチ&ファインジュエリーの旗艦店も担当した。今回の5番街店は、ヴァンドーム広場の店舗にインスピレーションを得た。
ゴールドと黒を基調にした超ラグジュアリーな空間
オートクチュールのアトリエで初めて鏡張りの壁をつくったというガブリエル・シャネル(Gabrielle Chanel)へオマージュするように、壁や吹き抜け、階段など、空間を構築する要素はパリのアトリエやアパルトマンからアイデアを取り入れている。印象的な屋外のファサードは溝のある黒御影石を使用し、鋳造ブロンズのスクリーンを設置。店内も外観と同じゴールドと黒を基調にしており、インテリアも統一するよう厳選されている。エントランスで目を引くのは、黒と金の漆の羽目板と、江戸時代に日本で作られた木製の蓮のブーケ。また、シャネルが擁する金細工を専門とするアトリエ、ゴッサンス(Goossens)によるロッククリスタルを用いたシャンデリア“ドリームキャッチャー”やダイヤモンドでつくられたガブリエルの肖像画「Chanel, Pictures of Diamonds」(2004年)などが、来店客を迎える。
大階段の手すりには、24金で縁取られたゴッサンス特注のロッククリスタルをデザイン。2階には、中国唐代の陶製ラクダやジャック・デュボア(Jacques Dubois)によるルイ15世のデスクなどが置かれ、フランスの職人技が感じられる、現代と古代のアートを融合した独特の空間が広がる。
ラッキーナンバー“5”をデザインした限定ハイジュリー
オープン記念の限定デザインとして、パトリス・ルゲロー(Patrice Leguereau)=ファインジュエリー クリエイション スタジオ ディレクターが手掛けた“エターナル シャネル No5”を販売する。変形可能なネックレスとイヤリングで、いずれもホワイトゴールドとダイヤモンドで象った「5」と、パリのヴァンドーム広場や「No5」のボトルストッパーのシルエットを想起させるエメラルドカットのダイヤモンドをあしらった。ネックレスとイヤリングのエメラルドカットのダイヤモンドは、取り外してリングとして身に着けることもできる。さらに同店限定のサービスとして、メゾンを象徴するキルティングをモチーフにしたジュエリー“ココ クラッシュ(COCO CRUSH)”のリングに職人が手彫りするエングレービングを提供する。
メゾンの歴史とサヴォアフェールを象徴する名品を展示
メゾンのウオッチ&ファインジュエリーの新たなステージの拠点として、同店では数々のラグジュアリーなアーカイブを展示する。オープニングを飾るのは、2021年の名香「シャネル No5」の誕生100周年を記念し制作された、ハイジュエリー“コレクション No5”のネックレス“55.55”。パリから特別に運んだという。今後、メゾンの歴史とサヴォアフェールを象徴するアイコンとして、さまざまなアーカイブアイテムを展示する予定だ。
フレデリック・グランジェ(Frederic Grangie)=シャネル パリ 時計・宝飾部門社長によると、米国にウオッチ&ファインジュエリー専門店をオープンすることについては長期にわたり計画していたが、今回ボザール様式の華やかな装飾が施された歴史あるクラウンビルの一等地に空きが出たことを知り、「ここでなければ」と出店を決意した。さらに、メゾンのアイコンナンバーであり、マドモワゼルのラッキーナンバーとしても知られる“5”の番地にも運命を感じたという。「シャネル」のウオッチとファインジュエリーは業績も良く、今後アメリカでのビジネスを倍増させる狙いだ。