ファッション

「アンディサイデッド」「セヴシグ」は夢を見る アボリジニの伝統に平和への祈りを込めて

長野剛識デザイナーによるメンズブランド「セヴシグ(SEVESKIG)」とウィメンズブランド「アンディサイデッド((UN)DECIDED)」は、2024-25年秋冬コレクションの合同ショーをガーデン 新木場ファクトリーで開催した。

コレクションテーマは、“We still want to dream(僕らはそれでも夢を見たい)”。オーストラリアのアボリジニの神話に根ざす概念“ドリーミング(THE DREAMING)”をもとに、“眠りの中で見る夢”と“人が未来に向けて抱く夢”という2つの夢を掛け合わせた。長野デザイナーは2シーズン前から熊本県幣立神宮(へいたてじんぐう)に伝わる「人類の祖神は赤人、白人、黄人、青人、黒人の5色に分けられる」という五色人思想に着想を得た服作りを行なってきた。23-24年秋冬コレクションはネイティブアメリカンのホピ族である「赤人」を、24年春夏は北欧スラブ民族の「白人」を題材にし、今回はアボリジニを指す「青人」を選んだ。

軽やか&きらめく素材で希望を表現

長野デザイナーは過去2回のショーを、「『アンディサイデッド』が『セヴシグ』に寄りすぎていた」と振り返り、今回は2ブランドの差別化を試みた。今回はショーの前半に「アンディサイデッド」を、後半に「セヴシグ」を登場させ、ルックを明確に分けて披露した。

ピアノの音色が響く優しいムードの中、ベロア地のトップスとミリタリーパンツをまとった女性モデルがスポットライトを浴びてゆっくりと現れ、「アンディサイデッド」のショーが幕を切る。「希望を表現したかった」と長野デザイナーが話すように、全身ダークトーンにもかかわらず、生地に織り込んだラメが歩くたびにきらめいて軽やかな印象を与える。その後も透け感のあるシフォン素材を用いたアイテムや、袖をたわませてふんわりとしたシルエットをつくるルックなどが続く。メローフリルを裾に施したトップスや、セロファンが反射したように7色の輝きを見せるプリーツスカートも、幻想的なムードを後押しした。また、夢の中の非現実感をアーム部分に過剰にあしらったボタンや、身頃からファスナーが垂れ下がるライダースジャケットなどで表現した。

夢と現実の境目が“溶ける”服

「悪夢をイメージした」という後半の「セヴシグ」プレゼンテーションでは、ロックバンド「10-FEET」のTAKUMAが手掛けた不穏かつアップテンポな曲調に変わる。ニットアーティストの森竹未来とコラボし、ダメージ部分からハンドニットを覗かせたデニムジャケットやスエット、裾と端のほつれたチェック柄パンツやシャツで、夢と現実の境界線を曖昧に表現した。プリントを二重にし、視覚がぼやけたように見せるベトナムジャケットや、京都の機屋に依頼したという特殊な織りで、着用者からは無地に、他人からは柄に見えるセットアップの視覚的な仕掛けも、ゲストを“夢”に引き込んだ。

「アボリジニ」やその伝統的概念「ドリーミング」から由来するデザインも見どころだった。オーストラリア発祥のムートンコートや、「キッズラブゲイト(KIDS LOVE GATE)」コラボのグリーンのサボでアボリジニの誕生地に思いを馳せる。「DREANMING」の反転文字を記したチェック柄ハットや、「ドリーミング」概念の重要要素である輪廻転生を意図した「TIME THAT NEVER ENDS」の文字を胸元に刺しゅうしたニットで、アボリジニの哲学を融合させる。終盤に登場したブラックのプリントTについては、「アボリジニの神話に伝わる7色の蛇を生成AIに描かせたらこうなった。オーストラリアだから『AC/DC』っぽさも加えた」と長野デザイナーは笑う。

計43ルックを披露し終えて迎えるフィナーレは、再び爽やかなムードに。希望溢れる未来を祝福するかのようにシャボン玉が会場を舞い、ベッドシーツを模した真っ白な天幕が、風に吹かれてダイナミックに揺れ動く。先述の幣立神宮は、毎年8月に世界の平和を祈る「五色神祭」を開く。不安定な世界情勢の中でも、デザイナーの「僕らはそれでも夢を見たい」と平和を渇望する思いが込められていた。

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