毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2024年2月19日号からの抜粋です)
横山:特集のきっかけは、昨年末に「WWDJAPAN」を教材に使っている専門学校の先生方から、「就活に役立つコンテンツをもっと増やしてほしい」という声をもらったことでした。
本橋:アパレル企業を取材していても、人手不足の話はよく聞きます。特に地方は深刻。若い人材の獲得競争が激しいです。 横山:コロナ前から新卒向けの求人倍率は高かったですが、それがコロナ禍の収束でさらにブースト。今は完全な売り手市場で、採りたくても人が来ない。ナビサイトや説明会などでとにかく人を集めてエントリーさせて、そこからふるい落としていく、というようなかつてのやり方とは大きく様変わりしていました。
採用導線が多数ある企業は強い
本橋:待っていて希望者が集まる時代ではないので、企業側もアグレッシブですよね。「マウジー(MOUSSY)」や「スライ(SLY)」を展開するバロックジャパンリミテッドは、ブランドプロデューサーとして成功している社員への憧れもあり、30人の販売員採用枠に300人応募があるほど人気ですが、実はリファラル(社員紹介)採用も活発なんですよね。顧客でセンスがいい人には、「一緒に働きませんか」と店頭のスタッフが一本釣りをすることもあるそう。そうしていい人材をフックアップした人にはインセンティブがある。バロックらしい仕組みだと感心しました。
横山:バロックのスター販売員を取材すると、「お店の人に誘われて」という人も多い。ちゃんと仕組みになっているんですね。アダストリアも店舗やSNSをうまく採用への導線につなげています。SNSで採用についてDMを送ってきた人に親身にアドバイスしたり、面接用に服を買いに来た人に全身コーデをしてあげたり、人事部から「こうしてほしい」はなくて、現場が自主的にやっていて、そこがまた学生には魅力なんですよね。
本橋:採用の導線もオムニチャネルの時代ですね。
横山:とはいえ優秀な人材でも、会社のカルチャーと合わなければ、うまく活躍できないです。採用担当者はどちらかというと学生側に立っていて、面接で素の姿を見せてほしいと、寄り添うように接しています。彼らの多くが「私たちは学生の敵ではない。むしろ味方です」と語っていたのが印象的でした。企業と学生が相互に理解を深め、相性を見極めることが大事なのだと思います。