ダニエル・リー(Daniel Lee)による2度目の秋冬シーズンとなる「バーバリー(BURBERRY)」の2024-25年秋冬コレクションは、引き続き英国の伝統に立脚。とはいえ“英国らしさ”の解釈は、1年前のデビューコレクションに比べると日本人にも共感しやすく、果敢に挑んだ多様なプロポーション提案もポジティブに映る。1年前に比べると十分な準備期間があったせいか、アーカイブそのものではなく遺産にまつわるストーリーにインスピレーション源を求めてじっくりリサーチ、作り手とのコミュニケーションも進化している印象を抱かせた。
ショーの終了後、ダニエルはバックステージで「WWDJAPAN」の質問に対し、「トレンチコートやフィールドジャケット自体の魅力はもちろん、こうしたアイテムがなぜ長年英国人、そして世界の人々を魅了するのか?を想像することに時間を割いた。その理由を知り、現代の色、柄、そして素材に変換できたら、トレンチコートは、これまで以上に現代の生活にふさわしく、手放せないものになるだろう」と語った。
なぜ、トレンチは人々を魅了するのか?それはユニホームでありながら、英国ならず日本でも、老若男女が自分らしく楽しめる普遍性に他ならないだろう。だからこそダニエルは、「誰もが楽しめる」という汎用性を多種多様なコートと、そのスタイリングで表現した。
例えばコートは、トレンチコートがスリムでハイウエストなら、フライトジャケットはオーバーサイズのAラインという具合だ。トレンチコートはほとんどが細身ながら、ブラックのギャバジンから、市井の人の日常着に着想を得た落ち着いたトーンのチェック、モールスキン、ウオッシュド加工でシュリンクさせたレザーから、そのパッチワークまでバリエーションに富んでいる。デザインもコンケープドショルダーでレザーのパネルを貼り付けた力強いものから、大きなエポーレットとガンパッチにスタッズを打ち込んだタイプ、ファスナーを走らせることでペプラムを描いたフェミニンなものまで。ファスナーは今季のキーディテールで、フレアのパンツからコンパクトなMA-1の袖まで、中央に大胆に走らせることでスリットとしている。
新しいアウターのフライトジャケットは、トレンチコートと対極を成す大きなシルエットで、内側にはバーバリーチェックのボアをたっぷりあしらった。起毛したピンストライプのセットアップの上に羽織ったり、ベルベットやシルクのドレスをコーディネートしたりの自由奔放なスタイルが楽しい。コンパクトなMA-1は、ハイウエストで床まで伸びるプリーツやラップスカートなどと合わせた。
夜のイングリッシュガーデンの着想を得た1年前は、正直、バラが咲き白鳥が泳ぐ公園や庭園がピンとくる人以外、共感するのが難しかった。庭園なのに夜を想像し、ノワール(漆黒)の世界を描いたからなおさらだった。だからこそ今回は、人に着想し、ユニバーサルな人間の志向を表現することで共感性を高めた。バッグやシューズは巨大で日常使いし難いし、アウターの色やプロポーションは決して取り入れやすいわけではないが、今回のストーリー、そして多様性に共感する人は多いだろう。
ランウエイにはリアム・ギャラガー(Liam Gallagher)の息子であるレノン・ギャラガー(Lennon Gallagher)やファッションデザイナー、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)の娘のマヤ・ウィグラム(Maya Wigram)がモデルとして登場。他にもナオミ・キャンベル(Naomi Campbell)やリリー・コール(Lily Cole)、リリー・ドナルドソン(Lily Donaldson)、アギネス・ディーン(Agyness Deyn)、カレン・エルソン(Karen Elson)といった、イギリスを代表する歴代のスーパーモデルが現れ、エイミー・ワインハウス(Amy Winehouse)の音楽をBGMとした。人種も、年齢もさまざまな世界で活躍するイギリス人で作ったファッションショーは、英国生まれながらユニバーサルなトレンチコートの魅力を発信する。