2024-25年秋冬パリ・ファッション・ウイークの現地リポートを担当するのは、コレクション取材20年超のベテラン向千鶴・編集統括兼サステナビリティ・ディレクターと、ドイツ在住でヨーロッパのファッション事情にも詳しい藪野淳・欧州通信員。朝から晩までパリの街を駆け巡り、新作解説からユニークな演出、セレブに沸く現場の臨場感までを総力でリポートします。今回は、「アンダーカバー」や「ザ・ロウ」「クレージュ」などをお届け!
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2月28日 9:30「ベンジャマン ベンモヤル」
招待状と一緒に小さな機織り機が届けてくれた若手ブランドの「ベンジャマン ベンモヤル(BENJAMIN BENMOYAL)」は今回、初のランウエイショーを開きました。会場には、機織り機でカラフルな生地を織っている職人さん。そのクラフツマンシップを称えるためのコレクションを見せました。
もともとビデオテープやカセットテープを織り込んだ生地からブランドを始めたベンジャマン。その見どころは、やはりユニークな素材使いです。今季は伝統的な絨毯が解けてフリンジになったようなチェスターコートからスタート。自身のルーツであるモロッコの工芸品からヒントを得ているというおなじみのカラフルなストライプ地やファンシーツイード、水彩画のようなジャガード、シグネチャーのカセットテープを織る技術を生かしたパイソン柄の生地までが、ランウエイを彩ります。
最後に見せた巨大なフープドレスはコスチューム的。初めてのショーでつい意気込みすぎちゃった感がありましたが、そのほかはスーツにボンバージャケット、トレンチコート、ストレートパンツ、Tシャツ風トップスといったスタンダードなアイテムがベースであり、シルエットはシンプル。その方が、生地の面白さや特別感が伝わります。
10:30「クレージュ」
「クレージュ(COURREGES)」のニコラス・デ・フェリーチェ(Nicolas Di Felice)が探求したのは、「争いに満ちた世界でのつながりと触れ合い」。それを「セクシャル・ヒーリング」と言う彼は、1月に発表した2024-25年秋冬メンズとウィメンズのプレ・フォール・コレクションにも見られた官能性をミニマルかつシャープなアシンメトリーシルエットの上で表現しました。
スカーフを巻き付けたシルエットから着想したという立襟のトレンチコートや、縦のラインを強調したスリムなドレスをまとうモデルたちは、ファスナーやボタンで作る袖の内側のスリットから片腕を出し、股のすぐ上にあるポケットに手を突っ込みながらウオーキング。そんなジェスチャーはキワドく、意味深です。そして、前だけに四角い生地のパネルをあしらったシアーなセカンドスキントップスに、後ろでリボンを結んで留める目隠し風のサングラス。脱ぎかけの服のように長袖の片方を首に巻きつけたTシャツや、片方の肩紐がずり落ちてブラがあらわになったようなレイヤードドレスなど、いずれもセンシュアルなイメージを醸し出します。
会場に流れるのは、呼吸する音のサンプリングと重低音をミックスしたオリジナルトラック。ところどころに女性の声で「take it slow」や「listen my heartbeat」といった言葉が差し込まれ、中盤からは空間の中央がまるで呼吸するかのように盛り上がったり平らになったり。その演出も、肉体的な親密さの表現のようです。
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