「ナスク(NASK)」はこのほど、ファッション性に特化したマスク“ナスク”(1870円)を公式ECサイトで発売した。ブラック、グレー、蛍光グリーン、蛍光ピンクのエッジィなカラーを展開し、じゃばらで顔を覆うようなインパクトあるデザイン。ウォッシャブル仕様で、ファッションラバーにワードローブとしてアクセサリー使いしてもらうことを狙う。
マスク部分のじゃばら構造は、着用者のおしゃれを邪魔しない機能を備えるという。「コンプライアントメカニズム」として特許取得済みであり、広げると立体的になり表面積が増えるため、着用時にマスクと唇が触れず、メイクが落ちづらいだけでなく、小さく折りたたんでバッグや洋服のポケットに仕舞うことも可能だ。
一般的なマスクにある耳ひもを取り払い、着脱のしやすさも追求している。使用方法は、マスク部分の左右のハンドルで、両頬を軽く挟む。メガネをかけたり、帽子を被ったりしていても、それらを取り外さずにマスクを使用できる。
開発者はウクライナからの避難民
実は、「ナスク」を運営するのは、ロシア・ウクライナ戦争で日本に避難したニキータ・ショロム(Nikita Sholom)=イハヴィール社長だ。ウクライナ北部のチェルニーヒウ出身で、英ケンブリッジ大学で材料工学を専攻したのち、19年に米カリフォルニア大学ロサンゼルス校に移った。20年に新型コロナウイルスの感染拡大により、帰国を余儀なくされ、現地のマスク需要に応えるため、医療用マスクを開発・製造するようになる。22年にロシア・ウクライナ戦争が勃発してからは、大学時代の友人を頼って日本に避難。母国のためにできることを模索した結果、「日本人にはマスクを日常的に身に着ける習慣がある」と、元々行なっていたマスク開発に商機を見いだした。
コロナ禍がひと段落したタイミングだったことを踏まえ、ファッション性に特化したマスクを日本で販売し、売上金の一部をウクライナに寄付しようと決意する。しかし、難民ビザで入国したニキータ社長は、経営管理ビザへ切り替える必要があった。ビザ変更のためには会社を設立していることが条件となるが、会社設立のためには銀行口座を持たなければならない。元々日本でビジネス実績を持たなかったニキータ社長は、そもそも口座を開設できる金融機関にたどり着くまでに時間がかかった。「日本は食料や住まいなどの支援は手厚いものの、難民が自立した生活を送るためのハードルは低くないと感じた」と振り返る。
さまざまな企業の協力を得てマスク発売が実現した。ナイロン生地の生産やマスクのじゃばら織りは国内工場が、マーケティングは国内のブランディング会社やPR会社が請け負っている。「マスクが飽和状態の日本市場で目立つため、あえて奇抜な色を選んだ」と話すが、今後はファッション性に特化した商品のみならず、ベーシックカラーのアイテムも展開する計画だ。