2024-25年秋冬のニューヨーク・ファッション・ウイーク(以下、NYFW)では「トム ブラウン(THOM BROWNE)」が1年ぶりに、「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」が約1年半ぶりに公式スケジュールにカムバックし、ベテランとしての存在感を発揮した。「トム ブラウン」はNYFWの中では圧倒的に大規模な劇場型のショーを行い、壮大な世界観とともにブランドのメッセージを発信。ヨーロッパのコレクションに比べ商業的な要素が強いと思われがちなNYFWにクリエイションのパワーがあることを証明した。ピーター・ドゥ(Peter Do)による「ヘルムート ラング(HELMUT LANG)」は、ブランドのDNAとドゥが得意とするテーラリング技術を掛け合わせ、2シーズン目で大きな一歩を踏み出した。また、「トミー ヒルフィガー」や「コーチ(COACH)」「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」などのベテラン勢はニューヨークへのオマージュをテーマにコレクションを発表し、多様な人種や文化が入り交じる街の活気や、ダイバーシティーといった特徴をクリエイションに込めた。混とんとした時代の中でデザイナーたちが度々口にしていたのは「快適さ」や「保護」「希望」だ。災害や紛争が絶えない世の中でファッションに希望を見いだすべく、心地よいと思える服やタイムレスに着られる服、サステナブルなアプローチによって生まれ変わる服の新しい価値などを提唱した。(この記事は「WWDJAPAN」2024年3月11日号からの抜粋です。
「トム ブラウン(THOM BROWNE)」
「大鴉」の朗読劇で魅せた
ダークなファンタジー
雪が積もる寒々しい会場で「トム ブラウン」が見せたのは、エドガー・アラン・ポー(Edgar Allan Poe)の代表作の1つ、物語詩「大鴉」を着想源とした壮大な物語だ。ファーストルックのカラス役のモデルに始まり、カラスをほうふつとさせる白と黒を基調に。バラやカラス柄がキーモチーフだ。ペイントを施したり、袖にリボンを編み込んだりしたツイードジャケットもコレクションを印象付けた。得意のテーラードを脱構築した複雑なアイテムの中には、ウエアラブルなものも存在する。雪の上を歩く演出に合わせるように、バッグやシューズはPVCで覆ったアイコニックなものばかりが登場した。ショーの最中は女優のキャリー・クーン(Carrie Coon)が「大鴉」を朗読し、フィナーレは鬼気迫る声で「NEVERMORE…(二度とない)」と叫ぶ声が会場に響き渡った。
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