2024-25年秋冬ロンドン・コレクションは前シーズンに続き、「バーバリー(BURBERRY)」などの大手、「ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)」や「シモーン ロシャ(SIMONE ROCHA)」「アーデム(ERDEM)」などの中堅が頑張った。一方、久しぶりに“フル参戦”すると、大手と一部中堅以外のクリエイションが“内向き”になっていることに気づく。ビクトリアンテイストなドレスへの傾倒、洋服よりむしろコンセプトを発信するアプローチは“ロンドンらしさ”だが、円安でインポートブランドが高額になるばかりの今、それだけでは難しい。(この記事は「WWDJAPAN」2024年3月18日号からの抜粋です)
ロンドンのブランドは、大別すると2種だ。1つは、起源をたどればビクトリア王朝などにたどり着くのだろう、レースやチュールを多用したドレスを中核とするブランド。「シモーン ロシャ」や「アーデム」も、元来の十八番はドレスだ。そしてもう1つは、クリエイションで社会に反旗を翻したり、顕在化しつつある歪みに疑問を呈したりするブランド。それは、かつてはパンクとなって世界を席巻。今若手は、もっぱらジェンダーやサステナビリティに向き合っている。
いずれも、価値ある“ロンドンらしさ”だ。ただ、この2つだけが唯一の武器では、地元の熱狂は得られるかもしれないが、世界中の人々に共感してもらうのは難しい。例えばドレスに傾倒し続けるブランドのコレクションは日本人にとって、オケージョンが想像しづらい上に円安も相まって、かつてより遠く離れてしまったように思えてしまう。社会課題に向き合うブランドも、ショーはアバンギャルドで楽しいが、洋服のクオリティーには難がある。価格を考えると、購入時の選択肢にはならないだろう。
実際“フル参戦”すると、ロンドン・ファッション・ウイーク自体がインディーズイベントのようなムードを帯びており、日本人にはアウェイ感が否めない。誰に見てもらうか?はブランドの自由だが、販路がない上に可能性も低いから、日本のメディアや小売店には招待状を送らないブランドも増えている。このままで良いのだろうか?
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