三越伊勢丹トランジットは、表参道ヒルズにイタリアンダイニング「スピカ(SPICA)」をこのほどオープンした。メニューは、ミシュランガイド東京2024「セレクテッドレストラン」に選出された東京・白金台のカウンター8席のみのフレンチレストラン「サーパス(CIRPAS)」で腕を振う吉田能シェフが監修した。
敏腕フレンチシェフが手掛けるイタリアン
吉田シェフは「George ジョージ」の名でユーチューブチャンネルを持ち、登録者数は100万人を超える。同チャンネルではフランス料理で培った技術をもとに、ジャンルにとらわれず家庭でも簡単に再現できる料理から、プロ目線の本格的な料理まで、幅広いコンテンツを配信する。
吉田シェフは今回イタリアンレストランを初めて監修し、動画で公開した料理をさらに進化させた一皿や、同店のために開発した料理を提供する。ワインのセレクトは、「サーパス」のソムリエであり、吉田シェフの右腕としても活躍する古内将道が担う。
吉田シェフが白金台で運営するレストラン「サーパス」はわずか8席で予約がなかなか取りづらい上、コースは2万7500円からと、決して敷居は低くない。対して「スピカ」は134席を用意して間口を広げ、ディナーコースでも5500円からと、手軽に本格コースが楽しめる。
ミントのジェノベーゼに舌鼓!
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オープンしたての「スピカ」で、実際に吉田シェフの料理を試食した。ディナーコース限定の前菜“雲丹と季節野菜のパンナコッタ”は、ニンジンのパンナコッタにコンソメのジュレと雲丹を贅沢に乗せた。ニンジンのやさしい甘さと、雲丹の磯の香り・塩気が絶妙なバランスだった。続く“七種野菜の虹のテリーヌ”(アラカルト限定)は、2種のパプリカ、2種のズッキーニ、トマト、ナス、キャベツを、それぞれの野菜に合った方法で調理し、虹をかたどって組み立てた目にも美しい一皿。素材の味を存分に生かしながら、バジルとフロマージュブランのソースが味にキレを演出していた。
パスタは4種から選択でき、この日いただいたのは“普通には戻れないミントのジェノベーゼ”。吉田シェフが自身のユーチューブチャンネルでも紹介する料理だ。ミントと聞いた時は正直、「オーソドックスなバジルの方がおいしいのでは?」と思ったが、実際に食べてみるとミントのクセは一切なく、上品にまとめられており舌鼓を打った。香りづけに加えたレモンも相まって爽やかな余韻に浸りつつ、ジェノベーゼにミントを採用するという独創的な発想に思いをはせた。
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メーンは、“シェフが辿り着いた圧巻の仔羊ハンバーグ”をシェアした。スパイスや牛脂を練り込んだラムの挽肉を豚肉の網脂で包み、重厚感のある旨みとコクが閉じ込められていた。スペシャリテとして登場したのは、吉田シェフ自身も特に気に入っているという“〆の濃厚ビスクリゾット”(ディナーコース限定、追加700円)。カニの味わいを堪能できるよう、塩は使わずチーズも最小限で仕上げた。吉田シェフは、「記憶に残るような一皿になったと思う」と自信の表情を浮かべた。デザートは、フランスで修行していた頃によく通っていたイタリア料理店の味を思い出しながら作ったというティラミス。エスプレッソの酸味や苦味の主張は抑えつつ、マスカルポーネの濃厚な味わいが際立っていた。
「『スピカ』くらいの席数と価格帯であれば、より多くのお客様に届けられるし、来てくださるお客様も肩肘張らずに自分の料理を楽しんでもらえると思った。一料理人としても、普段とはまた違ったアプローチができて刺激になった」と吉田シェフ。「家族でゆっくりコースを楽しんだり、友人とアラカルトをシェアして気軽にワインを楽しんだり、いろいろな使い方をしてほしい」と語った。